人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

信念の弁護士・安田好弘~記者クラブ試写会で「死刑弁護人」を観る

2012年06月06日 06時57分40秒 | 日記

6日(水).昨日の日経朝刊文化欄にミリオンコンサート代表の小尾旭氏による「高度成長とタクト共振」という見出しのエッセイが載りました

筆者は作曲家の故・山本直純のデビュー時からマネジャーを務めた人です。山本直純といえば「大きいことはいいことだ」のCMソング、映画「男はつらいよ」のテーマ音楽の作曲者、音楽番組「オーケストラがやってきた」の司会者として活躍したマルチタレントです

小尾氏は山本直純の行動原理を裏付けるエピソードを次のように語っています

「(山本直純は)仲の良かった指揮者の小澤征爾さんに、こんなことを言っていた。”小澤は世界を目指せ!オレは日本で音楽を大衆化する”」

そんな山本直純が他界して18日で10年が経ちます 時代は山本が活躍した高度経済成長期を背景とする「おおきいことはいいことだ」の世界から、「スモール・イズ・ビューティフル」の世界へと移り変わり、現在では世界同時不況の時代を迎えています。そんな暗い世相に生きていて、かつて「オーケストラがやってきた」でイギリスの「ホフナング音楽祭」でやっていたような”冗談音楽”を紹介して笑顔を見せていた髭の男を懐かしく思い出します こんな時代であるからこそ,たまには”冗談音楽”を聴いて笑い飛ばしたいと思います 山本直純カムバック

  

  閑話休題  

 

3日前の6月3日,1995年3月の地下鉄サリン事件に関与したとして17年間にわたり特別手配されてきたオウム真理教元信徒の菊地直子容疑者が逮捕されました この事件の首謀者・麻原彰晃をはじめ誰も引き受け手がいない事件の弁護を担当する弁護士がいます

昨夕,10階ホールで記者クラブ主催の試写会「死刑弁護人」を観ました この映画は「オウム真理教事件」の麻原彰晃,「和歌山毒カレー事件」の林眞須美,「名古屋女子大生誘拐事件」の木村修治,「光市母子殺害事件」の元少年,「新宿西口バス放火事件」の丸山博文・・・・これらの死刑事件を担当する”嫌われ役”の弁護士・安田好弘氏の活動を追った東海テレビ放送制作によるドキュメンタリーです

弁護士・安田好弘(64歳)は「人殺しを弁護する人でなし」「極悪人の代理人」と世間からバッシングを受けながらも,誰も引き受け手がない死刑事件の弁護を引き受けます とくに1999年4月,山口県光市の母子殺害事件の犯人である18歳の少年を弁護したときには,メディアの報道が過熱し,弁護団は「鬼畜を弁護する鬼畜弁護士」と呼ばれ非難の標的になりました それでも彼は被告人の弁護を続けます

1998年7月,和歌山市園部の夏祭りで,カレーを食べた67人が腹痛や吐き気を訴え,4人が死亡.カレーから猛毒のヒ素が見つかり,鍋の見張り役をしていた林眞須美が容疑者として浮かび上がりました.安田は林に面会に行き,話を聞いて思います

「この事件が冤罪だなんて誰も思っていない.林はもともと詐欺を繰り返し,大金を稼いでいた人物だ.だからこそ金にシビアで,1銭の得にもならないこんな事件を林が起こすとは思えない」

その論理には納得させられます.しかし,2009年,最高裁で林被告の死刑が確定します.

安田は,生まれ育った環境が生む歪みを無視し,加害者を断罪することに終始することが事件の解決といえるのか,と疑問を呈し,次のように主張します

「事実を出して初めて本当の反省と贖罪が生まれる.どうしたら同じことを繰り返さずに済むのか,それには,まず真実を究明しなければならない

死刑弁護人の立場について安田は語ります.

「最高裁での弁護は死刑執行の直前まで終わりがない.正確に言えば葬式を出すところまでやらざるを得ない.今まで付き合ってきた人と,突然,はい,さよなら,なんてできない

彼は「死刑廃止論」の立場に立ちます.デモにも参加します.「もし家族を殺されても,死刑には反対でいられるのか」と問われると「それこそブレるわけがない」と断言します.そこには,どんな人間にも更生できるという確信があります 確かな信念と明晰な頭脳と抜きんでた行動力がなければ,彼のような「死刑弁護士」は務まらないでしょう.安田の根底に流れているのは暖かいニューマニズム精神です

映画の中で一番印象に残ったのは和歌山毒カレー事件の林眞須美被告が安田弁護士あてに書いた手紙です その内容ではなく,その筆跡です.ほれぼれするような”達筆”なのです こんなにしっかりした美しい字が書ける人が本当にカレーにヒ素を混入するなんてできるわけがない,とさえ思います

安田はこの事件は検察によるでっち上げだとして,2011年夏に新しい証拠を和歌山地方裁判所に提出しました 彼は語ります.

「この裁判は勝たなければ,弁護士として恥です.負けるわけにはいきません 林さんの命が掛かっていますから,いまのままでは足りない,もっともっとやらなければ

不屈の弁護士を描いたドキュメンタリー「死刑弁護人」(97分)は6月30日から東中野の「ポレポレ東中野」でロードショー公開されます

 

          

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