28日(木).昨日の日経朝刊のコラム「春秋」にジャン=ジャック・ルソーのことが書かれていました 今日6月28日,ルソーの生誕300年を迎えるということで、思想家として「社会契約説」で有名な彼が、音楽家としても知られていることを紹介しています
すでに多くの人が知っていることですが、ルソーは、現在日本でも広く歌われている「むすんでひらいて」の作曲者です。彼が作曲したオペラ「村の占い師」の中で歌われます 私はかなり前に新聞か何かで、日本におけるモーツアルトの権威者、海老沢敏氏が書かれているのを読みました 今なら音楽著作権がありますが,その当時はどうだったんでしょうか?無断で自分の音楽を使われたらジャン=ジャック・ルソーは何と言ったでしょうか?ジャスラック・ウソ―だったりして・・・・・・
閑話休題
昨夕,虎の門のJTアートホール”アフィニス”で「トリオ・ラ・プラ―ジュ」の演奏会を聴きました
これは「アフィニス・アンサンブル・セレクション」というオーケストラメンバーによる室内楽シリーズの一環として開かれる公演です 「ラ・プラ―ジュ」とは,フランス語で「渚」の意味で,3人の音色がそれぞれ波となって交わり合い,浜辺から大洋へと広がっていくように・・・との願いを込めたものだそうです
メンバーはクラリネットが東京交響楽団の近藤千花子,ヴァイオリンが東京都交響楽団員の田口美里,ピアノが第17回園田高弘ピアノコンクールで第1位入賞の渚智佳という面々です
演奏曲目は①ミヨー「スカラムーシュ」,②ベルク「アダージョ」,③R.シュトラウス「ばらの騎士」組曲,④ハチャトリアン「ヴァイオリン,クラリネットとピアノのための三重奏曲ト短調」,⑤ビゼー「カルメン」組曲よりの5曲です
会場は3分の2ほど埋まっています.自席は9列4番.左サイドの通路側です 照明が落ちてトリオのメンバーを待ちます.田口美里はグリーン,近藤千花子は淡いピンク,渚智佳はパープルのドレスで登場です 近藤千花子は髪の毛を後ろで束ねているので,チラシで見た時と顔の印象が違っていて,まるで別人かと思いました 束ねた方が演奏しやすいのかも知れませんが,個人的にはストレートの方が印象が良いと思います
1曲目の「スカラムーシュ」とは,イタリアのコメディア・デラルテに登場する道化師のこと.ミヨーの作品をこのトリオの編曲版で演奏しました.3つの曲から成りますが,1曲目はまるでペトルーシュカの世界.まさにサーカスの音楽といった感じです 3人は道化師のおどけた雰囲気を醸し出していました
2曲目のベルク「アダージョ」は,もとはピアノ,ヴァイオリンと13管楽器のための室内協奏曲のために作曲されたものを,10年後に第2楽章だけをトリオ版に編曲したものです 最初の音を聴いた時,無調のわけがわからない音楽か?と警戒したのですが,比較的聴きやすい曲で安心して聴きました
3曲目のR.シュトラウス「ばらの騎士」組曲は,このトリオによる編曲版で演奏しましたが,R.シュトラウス特有の諧謔的な精神に溢れるオペラの雰囲気をよく汲み取って編曲されており,演奏も個々の楽器が良く絡み合っていたと思います
休憩時間にホワイエで,前半の演奏で気が付いた点をプログラムにメモしていると,見知らぬ男女2人組から声をかけられました ICレコーダーを手にした若い男性が「主催者の”アフィニス財団”の者ですが,前半の演奏を聴いた感想を聞かせていただけませんか?」と訊くので「前半で演奏したミヨーもベルクも初めて聴く曲で新鮮だった このトリオのうち2人はオーケストラのメンバーなので,普段はあらかじめ決められた交響曲など,編成が大きな曲を演奏しているわけだが,今日の選曲はR,シュトラウスを含めて,自分たちが演奏したい曲を選んでいるので,演奏する喜びが聴く側に伝わってくる」と答えました.女性が「ばらの騎士はトリオによる編曲でしたが,いかがでしたか?」と訊くので「すごいですね」と答えました.「メモをとってらっしゃいましたね?」と訊くので「あとでブログに書きますので」と答えると,納得していました インタビューの目的は多分,演奏そのものが良かったかどうかを訊きたかった,つまり,再度彼女たちを呼ぶかどうかの判断基準の参考にしたかったのではないか,と思いますが,そういう回答ではなかったので,彼らにとって若干期待外れだったかもしれません みなさん,コンサートの休憩時間にメモをとっているとインタビューされますよ.気をつけましょうね
後半の1曲目,ハチャトゥリアン「ヴァイオリン,クラリネットとピアノのための三重奏曲ト短調」は,作曲者の故郷であるカフカス地方(グルジア,アルメニア,アゼルバイジャンなど)の民族音楽の影響が反映していると言われています 聴いていると西洋的というより,むしろ東洋的な”民謡”と言う方がふさわしい曲想です.トリオは民族色豊かに演奏を展開しました
最後のビゼー「カルメン」組曲は,後世の何人かの作曲家が編曲していますが,この日演奏したのは,このトリオが編曲した版でした この日の演奏曲目の中で最もヴァイオリン,クラリネットの楽器の特性を生かした編曲で,演奏もオペラの曲想をよく反映したもので好感が持てました
拍手に応えて,ヴァイオリンの田口美里が「トリオ・ラ・プラ―ジュは今年,結成10周年を迎えました.これからもよろしくお願いします」とあいさつし,アンコールにマスカー二の歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」から「間奏曲」を三重奏編曲版で演奏しました もとが良い曲はオーケストラで演奏しようが,三重奏で演奏しようが,その素晴らしさは変わりません どんなにみすぼらしい服装を着ていようが,美人は美人だ,というのに似ています
トリオは最後にR.シュトラウス「ばらの騎士」の「ワルツ」を大々的にアンコールして舞台を去りました 今回のような小編成による演奏会は,個々の楽器の特性を身近で聴きとることができ十分楽しむことが出来ます
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