17日(木)。昨夕、トッパンホールで「トッパンホール・アンサンブルVo.8」コンサートを聴きました アンサンブルのメンバーはヴァイオリン=日下紗矢子、ヴィオラ=赤坂智子、チェロ=石坂団十郎(歌舞伎役者ではありません)、ピアノ=北村朋幹の5人です
プログラムは①シューマン「暁の歌」、②J.S.バッハ「ゴルトベルク変奏曲BWV988」(シコトヴェツキ編曲による弦楽三重奏版)、③シューマン「ピアノ四重奏曲変ホ長調」です
日下紗矢子は2000年の第47回パガニーニ国際ヴァイオリンコンクール第2位入賞をはじめ、数々のコンクールで入賞している実力者で、2008年からベルリン・コンッェルトハウス管弦楽団第1コンサートマスターを務めています 1か月前の音楽情報誌「ぶらあぼ」だったと思いますが、彼女が4月から読売日本交響楽団のコンサートマスターに内定したというニュースを読んだ時はました。読響がどう変わるのか興味深く楽しみです
赤坂智子はハンガリー・リスト音楽院卒業後、ヴァイオリンからヴィオラに転向、桐朋学園ディプロマコースに在学中からサイトウ・キネン・オーケストラなど数多く出演しているほか、ソリストとしても活躍している元気な女性です
石坂団十郎は1979年ドイツ生まれで、父親は日本人、母親はドイツ人ピアニストです 98年カサド国際コンクールをはじめ世界的なコンクールで立て続けに優勝したツワモノで、2011年から若くしてドレスデン音楽大学教授に就任して後進の指導に当たっています
北村朋幹は1991年生まれ、2005年の第3回東京音楽コンクールで第1位、2011年からベルリン芸術大学に在学中の将来が楽しみな逸材です
自席はM列3番で、やや後方の左サイド。会場はほぼ満席です 舞台上を見ると中央に集録マイクのスタンドが3本立てられています 照明が落ちて4人が登場します。後ろに北村、その前に、左から日下、石坂、赤坂という配置です。北村だけにスポットライトが当てられ、おもむろにシューマンの「暁の歌」がピアノ独奏で演奏されます シューマンはこの曲について「朝が近づいてくる時の感覚を音楽的に表現したものだが、情景描写というよりも心情の表現といった感じだ」と説明しています。そう言われればそんな感じの曲でした
演奏が終わるとスポットライトが消され、暗闇の中を北村が退場し、照明が点けられ残された3人が浮かび上がります 心憎い演出です。2曲目のバッハ「ゴルトベルク変奏曲BWV988」は、カイザーリンク伯爵に仕えていた弟子のゴルトベルクのために作曲したことに由来するネーミングですが、カナダのピアニスト、グレン・グールドのピアノによる2度にわたるCD録音であまりにも有名になりました 最初にアリアが提示され、それが30通りの変奏曲として展開し、最後にまたアリアで締めくくられるという50数分に及ぶ大曲です 通常はハープシコード独奏で演奏されますが、今回の演奏はシトコヴェツキという人が弦楽三重奏のために編曲した版で演奏されます
実によくアレンジされた三重奏曲で、ヴァイオリンとヴィオラの、ヴァイオリンとチェロの、あるいはヴィオラとチェロの丁々発止のやり取りが面白く聴けました 3人とも芸術性が高くないとこうはうまくいかないと思います それにしてもバッハは一つのアリアからよくもまあ30通りもの変奏曲が書けたものだと感心します バッハのこの曲は、聴いているうちに意識が内へ内へと向かっていきます
3曲目のシューマン「ピアノ四重奏曲変ホ長調」は多分初めて聴く曲です。穏やかな出だしの第1楽章、なぜそんなに急ぐのか?という第2楽章、シューマンはこんなに美しい音楽を書いていたのかという印象の第3楽章、快活で音楽がよく流れる第4楽章。とにかく4人とも自己を主張しているのにアンサンブルが見事に調和しているのには舌を巻きます。お互いの音を聴きあって演奏しているからでしょう
もちろんバッハも面白かったのですが、何と言ってもこの日の収穫は、シューマンの「ピアノ四重奏曲変ホ長調」の第3楽章「アンダンテ・カンタービレ」の素晴らしさに気づくことができたことです ”是非もう一度聴きたい”と思わせる名曲名演奏でした
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