22日(水).昨日の朝日朝刊に「バイオリニストの愛器,独で押収~堀米さんのガルネリ」という記事が載りました 記事を要約すると,
「ベルギー在住の世界的なバイオリニスト堀米ゆず子さん(54)が独フランクフルト空港の税関で,バイオリンの名器『ガルネリ』に密輸の疑いをかけられ押収されていたことがわかった 26日までに19万ユーロ(約1900万円)の輸入税の支払いを求められている堀米さんは『これまで何の問題もなかったのに』と困惑し,愛器の一刻も早い返還を訴えている 堀米さんは正当な所有などを証明する書類を提出し,返還を求めているが,交渉は難航しているという.堀米さんは旅行でガルネリを常に携帯していたが,これまでフランクフルトを含めて問題視されたことはまったくなかったという 税関は朝日新聞の取材に対し,『現在,手続きの途中でこの件については説明できない.ただ,一般に高価な品は必ず事前に税関に申告しなければならない』と答えた」
この記事を見て思ったのは,今まで許されていたことが,今回に限ってなぜ許されなかったのか,ということです 堀米さんの言う通り「こんなことではプロの音楽家はだれも演奏旅行ができなくなる」と思います 世界的に活躍している他の音楽家たちはどうなのでしょうか?税関の言っているように「事前に申告」しているのでしょうか.あるいは”顔パス”状態なのでしょうか.気になるところです.いずれにしても,1億円をくだらないと言われている「ガルネリ」が,これまでどおり輸入税が課せられることなく,一刻も早く堀米さんの手元に戻るよう祈るばかりです
閑話休題
堀米ゆず子さんは1980年,ベルギー・ブリュッセルのエリザベート王妃国際音楽コンクールの優勝者です 日本人の海外コンクール優勝の先駆け的な存在と言ってもよいかもしれません その堀米さんに一度だけお会いしたことがあります.
何月かは忘れましたが,1989年のことでした(後述のCDから判明).当時私はCBSソニー社の「クラシックCDクラブ」の会員でした.このクラブは年会費2000円で,新発売CDのダイジェストを8センチ・ミニCDに集録したものと,クラシックNEWSという会報を,年6回送ってくれる会員制のクラブでした
ある日,CBSソニーの人から自宅に電話があり,「実は,今度,堀米ゆず子さんを囲んで座談会を開くことになった.その内容を会報に掲載したい.ついては,ご出席願いたい」というものでした なぜ私が選ばれたのかは判りませんが,たぶん,そのクラブの募集と同時に応募したので会員番号が若かったからではないか,と推測します
指定された日に市ヶ谷のCBSソニー社に行くと,私を含めて5~6人の会員が集まってきました.男女半々,年齢は比較的若い人が多かったように記憶しています 会は堀米さんを囲んで,彼女にインタビューする形で進みました バッハについての質問に「バッハはすべての音楽の基本です.バッハを弾くときは背筋が伸びる思いがします」と答えていました.また,当時彼女はチェロのミーシャ・マイスキーと共演することが多く,彼女が親しみを込めて「ミーシャ」と呼んでいたのが印象的でした
司会から,それぞれの出席者からみた堀米さんの演奏について訊かれ,私は生意気にも「例えば,ハイフェッツなどは棚に飾っておきたくなるような近寄りがたい演奏だが,堀米さんの演奏はもっと身近に感じる」というようなことを言った覚えがあります この発言は,堀米さんにはあまり好意的に受け入れられなかったようです.彼女の顔の表情で判りました
座談会が終わって,司会者が「今日,ご出席いただいた皆さんに素晴らしいプレゼントがあります」と言って,堀米さんの最新録音CDをプレゼントしてくれました モーツアルトの「ヴァイオリン協奏曲第3番,第4番」で,シャンドール・ヴェーグ指揮カメラ―タ・ザルツブルク室内管弦楽団による演奏です もちろん,その場で彼女がサインをしてくれました.嬉しかったのですが,実は,彼女と話す機会があるということで,事前にそのCDを購入して聴いていたのです.もちろん,そのことは黙っていました.したがって手元に同じCDが2枚残りました いま,あらためてその演奏を聴いてみると,名匠ヴェーグのサポートのもと,自然体で伸び伸びとした音楽作りをしています
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