今年の夏の甲子園は履正社が星稜の奥川共伸を打ち込み5-3で
勝って初優勝を飾ったのだが、試合前の予想では春に履正社打線が
奥川に抑え込まれていた事や準決勝で7回までしか投げずに1日の
休養日があった事から星稜有利といわれていた。
実際に3回戦の智弁和歌山戦を再現するようなピッチングをされ
たら履正社打線は打てないだろうというのが、もっぱらの評判だっ
たのだが智弁和歌山戦の消耗によるダメージは想像以上に大きかっ
たという事だろう。
これを見て思い出したのは、76年夏にベスト4進出を果たした
長崎海星の酒井圭一。
豪腕投手として大会前から評判で甲子園に乗り込むと初戦で徳島
商相手に1点は取られたものの4安打3四球7三振を奪い、チーム
も8回に追い付き10回にサヨナラ勝ちして初戦を突破。
中5日で臨んだ2回戦では選抜ベスト8の福井相手に2安打9奪
三振で完封すると、連投となった3回戦は選抜優勝の崇徳を2安打
8奪三振で2試合連続完封し‘優勝が見えた’的な報道も。
ところが中1日で臨んだ準々決勝では東北から7三振を奪い3安
打に抑えたものの2失点し‘まさか’と思ったら、準決勝のPL学
園を延長11回5安打に抑えたが3-2で敗れて準決勝敗退となった
のだ。
当時は選抜優勝の崇徳を完封したのだから東北やPLに打たれる
わけがないと思っていたのだが、今にして思うと崇徳戦にピークが
来ていたという事になるのだろうか。
というのも福井戦の前日に3回戦で崇徳との対戦が決まり‘選抜
優勝の崇徳と戦える’といった高揚感があったのだろうが、崇徳戦
でのダメージが意外に大きく中1日では回復しきれずにパフォーマ
ンスを落としていったという事か。
そういえば高2の時のダルビッシュ有も最高のピッチングをした
のは3回戦の平安戦で服部大輔との壮絶な投げ合いになり延長11回
まで戦って1-0でサヨナラ勝ちしたのだが、日大三や明徳義塾に勝
っていた平安打線を2安打15奪三振という素晴らしい内容だった。
翌日の準々決勝はリリーフ登板し準決勝は休んで決勝の常総学院
戦では12安打4失点しているのだから、やはり3回戦の平安戦で
の熱投のダメージが残っていたのではと思う。
こうしてみると夏の大会でエースが強敵を相手に凄まじいピッチ
ングをするというのは相当なダメージを溜め込む事になるのだから、
チームの関係者は素晴らしいピッチングをすればするほど次からの
試合は調子を落としていくものと思った方がいいだろう。