シャレにならない聞き間違い

　もう15年ほど前の話。12月の今頃の土曜日が朝から冷え
込みお客さんの出足が鈍くほとんどなかった。
　11:00過ぎても1人しか来てないので両親と「これだけ暇
だと大変だ」と話し合っていた。
　ところが11:40頃に懇意にしている社長さんの奥さんから
電話があって「今からウチの従業員が8人ばかり行きますの
でよろしくお願いします」と言うではないか！
　だいたい車で遅くとも10分ほどで着くので‘こりゃ大変
だ’と思っていたら皮肉な事に他のお客さんが来はじめたの
だ。8人来るという電話があった手前、待たせるのも悪いけ
どウチは予約制ではないので先に来たお客さんからする事に
していたのだ。
　ところが8人のお客さん達は待てど暮らせどやって来ない。
そういっている間に他のお客さんが切れずに来ていたので、
今さら来られてもどうしようもない。
　電話があって2時間後の13:40分頃、社長の奥さんからお詫
びの電話があった。「申し訳ありません、私の聞き違いでし
た。従業員から‘かみおきに行くので予約の電話お願いしま
す’と頼まれたので髪を切りに行くと聞き間違えたのです」
との事。
　‘かみおき’と‘かみをきり’にでは確かに聞き間違えは
考えられる。実際1年程前に子供を待たせてカットしていた
お客さんが子供から「お昼どうするの？」と聞かれて「かみ
おきに行く」と応えると「もう髪は切らんよ」と言い返され
大笑いした事があった。
　ただゾッとするのがもし予約制を取っていたら電話があった
以上他のお客さんを断らなければならなくなるわけで、今回の
ような勘違いは致命的だ。
　実際その日の夜に早朝野球の打ち上げの2次会でメンバー行
き付けのスナックに入ると誰もいないのだ。聞くところによると
‘看護婦10人以上の団体の予約があったので他のお客を断って
いたがすっぽかされた’との事。かき入れ時に酷い話である。
　ウチの場合はそういう意味ではラッキーだったし社長夫人から
断りの電話もあったので事なきを得たが一歩間違えるととんでも
ない事になるところだった。