昔 病院を別荘代わりにしていた人がいた

 今年の冬は寒い日が多いのだが、こうなると年配者の常連客の足が遠のくのは
仕方ないし下手すると気温の急激な変化に ついて行けずに亡くなる人も出てくる。


 数年前に亡くなった大正生まれの常連客の場合、雪が降り積もっているにも
拘らずアーケードに散歩に出かけ転倒して腰骨を骨折し寝たきりになってしまって
いたので本当に要注意だ。


 もっとも この常連客は気候が悪くなると いつも入院していた。

 というのも道を隔てた前が病院で奥さんを早く亡くしていたため1人住まいと
いう事で暑くなったり寒くなったりすると‘別荘に行ってくる’と言って入院して
いたのだ。


 病院は空調が効いているし体にいい食事も出るため当時80歳前後だった常連
客には好都合だったわけで、ついでに血液検査などを やってもらうのでプチ人間
ドックという訳で一石二鳥だった事になる。


 ちなみに この常連客は腰骨骨折した後に市外に住んでいる娘さん一家に引き
取られ近場の病院に入院してベッドで写った写真付きの年賀状が届いていたが、
亡くなった前後に‘別荘’と称していた前の病院も院長先生が亡くなって廃業して
しまった。


 暑い日や寒い日に その病院跡の前を通ると亡くなった常連客を思い出すの
だった。

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