私が理容師になったのは・・・・

 26年前の9月の第3月曜日に高校在学中に理容学校の通信制に入学した。
我が家は祖父の代から理容をやっている、私で3代目だ。
 私の名前は両親ではなく生まれた当時、我が家に出入りしていた
易者さんが「いい後継ぎになるように」と付けたらしい。
 子供の頃からお客さんや周りの人達から「大きくなったら床屋さんに
なるんやろう?」と必ず言われ結構うっとうしかった記憶がある。
「床屋が嫌なら勉強しろ」と母親からはよく言われたが肝心の勉強の方は
今一つ、好きな歴史を含めた社会科は得意だったが残りは全滅といった
ところだった。
 高校を受験する時も「公立を落ちたら床屋に弟子入りさせる、経済的に
苦しいので私立にはやらない」と両親や祖父母からも常々言われていたのだった。
 今ではそうないが昔は盆前と正月前は忙しかったので小4の頃から盆、
正月前はタオル洗いや下掃きなどの雑用を手伝いさせられていた。
普段はくつろいでいると「勉強しろ」とうるさく言われるのだがこういう時
ばかりは勉強しないでも文句を言われずに済んだし お客さん達からは
「ちゃんと手伝いをして感心だ」と誉められる。
しかも小遣いはアップするなどいいとこだらけで中学になると嬉々として
手伝っていた。
 中3の2学期の内申書に載る成績が最悪だったのでヒヤヒヤしながらも希望
した公立に入る。この頃になると下手ながら野球部でプレーしていたので将来は
歴史の教師になって野球部の監督になるのが 漠然とした目標になっていた。
ところがどうしても野球にうつつをぬかすので成績は公立大が厳しいレベル、
弱小校のレギュラーにもなれないのに推薦があるわけでもない。
 転機になったのは2年になったばかりの時に担任の進路相談で将来の目標を
聞かれ前記したように「歴史教師と野球部監督」と言うと担任のM先生は
日本史担当だった事もあり「歴史の教師は空き待ちが多い、教員免許を取っても
採用されないとどうしようもない。
それに教師というのはマニュアルがあって、お前の性格からすると
言われた事をきっちりやるより自分のペースで行ってしまう塾の先生型
だからかなりストレスが溜まるぞ」と言い、続けて「後継ぎする気はないか?」
と聞かれた。確かに子供の頃から後継ぎは嫌と本能的に考えていたが別に接客
自体は嫌いでもなかった、その旨を言うと「1からやるなら大変だが実家が
やっているならお前の性格からすると後を継いだ方がいいと俺は思うぞ。
野球部の面倒を見てやりたければ休みの日にでも顔を出せばいいし」と言われ
「そんなものか」と思ってしまい結局それから数日後に後を継ぐ事を決めた。
 母は祖父の娘で本来は小学校の教師になりたかったらしいが2人の弟が
理容より勉強の方が好きだったので婿を貰って後を継いだのだ。
だから口では「弟子入りさせる」などと言っていたが本来は、サラリーマンに
したかったようだ。
 そこで父の兄弟子が福岡でスタッフを使って営業しているという事、
それにその兄弟子は厳しいので有名だったので「弟子入りするには厳しい所が
いい」という事で弟子入りの話をもって行くとOKの 返事を貰った。師匠から
「理容学校に行く必要があるけど働きながらの勉強は大変なので高校在学中に
通信教育を受けるといい」というアドバイスで高2の9月に理容学校の通信制に
入学したのだ。
 面白いのが3年になって担任が変わったのだがこの担任のF先生は「何が何でも
進学」を勧めていたので友人H君など行きたくもない大学を受けて入学したものの
授業が面白くなく中退したらしい。
 もし2年の時の担任がF先生だったら後を継いだか分からない。
あの易者さんが言った「いい後継ぎ」かどうかは分からないが結局後を継ぐ事に
なったわけだ、困ったのがとりあえず理容学校に在籍もしていたので他の学校に
行っている連中から「高校を退学した」などというデマを流された事だ。
 現在実家に帰ってはや18年、景気は帰郷したときとは比べものにならない
ぐらい悪いが自分の好きな事をやれているので気持ち的には大変ながらも楽しく
仕事ができて充実している。これもM先生にアドバイスして貰ったおかげで感謝の
言葉もない。
 7月にウチの長男が嬉しい事に「お父さんの仕事カッコいい、僕も大きくなったら
床屋さんになる」と女房に言っていたらしい。
ただしあまり早くから憧れてもらうとかえって肝心な時に嫌だとなりかねないから
あまり期待はしてないが・・・・。
コメント ( 6 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
Unknown (まみ)
2006-09-11 09:40:44
大丈夫ですよ、楽しそうにすすんで仕事をする親の姿勢に子供は惹かれるものです。弟も幼稚園のときから、神主一直線でしたよ。

こーじさんは、お仕事に誇りも持っておられるので、長男君が、床屋さんにあこがれるのも無理はありません^^
 
 
 
書き込み御礼&レス (こーじ)
2006-09-11 23:10:32
 >まみ様

 三つ子の魂百までとは言いますが・・・

 最近長男は「大きくなったら弁当屋さんになる」と言い出しました、気が変わりやすいですからね。

 自営業は自らの仕事への誇りがなくなると終わりです。
 
 
 
Unknown (まっぴー)
2006-09-12 03:55:28
仕事を楽しむのは大切ですね。でも難しいことです。主人も夢を追いかけて目下修行中なのですが、おおいに参考になりました。でも好きなことをしている姿は生き生きとしていて、息子も主人をかっこいいと言っています。こーじさんの息子さんもそれはあこがれますよー。身近で見られていいですね。またいろいろなエピソード聞かせて欲しいと思います。ぜひとも!
 
 
 
書き込み御礼&レス (こーじ)
2006-09-12 06:45:38
 >まっぴー様

 確かに難しいですね、しっかり覚えるまでは。

ただ好きだからこそ頑張れるというのがありますから。

 息子達といつも一緒にいられて働いている姿を見せられるのは自営業のいいところではありますが・・・

 まぁしょうもないエピソードばかりですが宜しくお願いします。
 
 
 
同じですね (さっち)
2006-09-14 14:50:24
僕も床屋です?しかも元野球部?僕は二代目で8年修行に行き、実家に帰ってきて3年目です、なんかすごい気持ちが分かる?
 
 
 
書き込み御礼&レス (こーじ)
2006-09-14 20:56:59
 >さっち様

 初めまして、ようこそ。

 同じような境遇ですね(笑)

 同じ店ですか?それとも独立したいですか?

3年目ともなるとお客さんがつき始めて面白くなる頃ですからやりがいもあるでしょう、お互いに頑張りましょう。

 なおよかったら8月31日の「修行が終った日」も併せて読んでいただければ嬉しいです。

 これからも宜しくお願いします。
 
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