評論家が信用ならない事に気付いた40年前

 昭和の時代のスポーツファンは評論家と呼ばれる、元スター選手
達のコメントを判断基準にしていた。

 やはり現役時代に功成し遂げた人の言葉や理論こそ神聖なもので
素人である記者やファンが、異を唱えるのは不届き千万という感覚
だったのを覚えている。

 だから多くの競技を見る時は評論家達のコメントや記事が載った
スポーツ紙や雑誌を食い入るように読んでいたし、友人達などと話
す時も‘〇〇さんはこう言っていた’という形で話す事が多かったのだ。

 ところが今から40年ほど前にボクシングマガジンで連載されて
いたガゼット座談会を読んでいて、ものすごい違和感を持ったのを
覚えている。

 ガゼット座談会はボクシング記者上がりの評論家の大家・郡司信
夫氏が中心になった座談会で、ボクシング記者やジム関係者をはじ
め時には現役選手も出席していたのだから楽しみに読んでいたの
だがデトロイトで上原康恒がサムエル・セラノを6Rに逆転KOして
タイトルを奪取し凱旋した頃。

 ジム関係者のコメントで‘上原はセラノをKOしただけでなく心を
折った形だから再戦しても今度は楽勝だろうし、再戦を逃げるので
は’的
な感じだった。

 上原に敗れたセラノは2位にランクされ1位はWBA&WBC共にベネ
ズエラのイデフォンソ・ベツリミで、WBC王者ラファエル・リモン
への挑戦を画策し実際に挑戦したのでセラノとの再戦は1位の指名
試合として行われるのが確実だった。

 恐らく件のコメントをしたジムの関係者は上原にKO負けした事
で心理的にもトラウマになっただろうから、再戦すれば上原のプ
レッシャーの前にズルズルと後退を繰り返すと考えていたのだろ
う。

 個人的にはデトロイトで試合をするという事は自分をアメリカ
に売り込む必要があるので、単にポイントアウトして勝つよりも
ストップする事を目指していたからこそ右が当たって逆転KOでき
たと思っていた。

 再戦になると勝ちに徹したスタイルで臨まれると手数の少ない
上原は倒さないと勝てないという事になりがちで、厳しいものに
なるのではないかと思っていたのだ。

 もっとも当時の日本は各ラウンド毎に差を付けるラウンドマス
トシステムを無視して10ー10のイーブンラウンドばかりを付けて
いたのは‘ボクシングは倒してナンボ’という価値観からだろうし、
実際に郡司氏の採点も今のラウンドマストシステムなら真逆の採
点が多かっただろうと思ったりする。

 つまりセラノのような長身のアウトボクサーは撃ち合いを避け
ポイントをピックアップして行き判定勝ち狙いのスタイルなど、
座談会の出席者達にとってはありえない戦い方だったのではない
か?。

 だからこそ約半年前に行われたWBC:Jフライ級タイトルマッチ
で1位のイラリオ・サパタに、僅差の判定負けでタイトルを失った
中島成雄について‘再戦ではKO勝ちできる’的なコメントが座談会で
は見られていた。

 ところが中島ーサパタの再戦では中島は全くいい所なくストッ
プ負けを喫しており、座談会出席者の主張は見事に外れてしまう
のだから国内スタンダードに凝り固まっていたのではないだろう
かと思ってしまう。

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