上原正三のリアリズム

 ゴジラシリーズ本多猪四郎監督と黒澤明監督は仲がよかったよう
だが、黒澤監督が本多演出に関して‘怪獣が暴れている時に自衛隊
員や警察官達が整然と避難誘導しているシーンは私なら撮らない’
と語っていた。

 リアリストの黒澤監督らしい話で実際にゴジラのような怪獣が暴
れていれば自衛官や警察官らも人間だから恐怖のあまり任務を放り
出して逃げるのが人間の正しい行動だろうが、本多監督は‘自衛官
や警察官達にはこうあって欲しい’という思いによる演出だったよ
うだ。

 それを考えると第1期ウルトラでは防衛チームと上部組織の長官
や参謀達の関係は良好で隊員達の間で目立った揉め事がないのに対
し、帰ってきたウルトラマンはMATの内部で隊員達の言い合いや長
官や参謀ら上層部との軋轢が描かれている。

 第1期のメインライターの金城哲夫はゴジラシリーズのメインラ
イターの関沢新一に師事しているのを考えると‘防衛組織にはこう
あって欲しい’という思いから、防衛チーム内も団結しており上層
部との軋轢もないという形になっていたのではないかと思う。

 ところが帰ってきたウルトラマンでは前半では主に郷と岸田が度
々対立する場面が見られるし、上層部からは解散をちらつかされる
シーンが出て来る。

 これはメインライターの上原正三がリアリストだったのと同じく
リアリストの橋本洋二プロデューサーの薫陶を受けていたという事
や、第1期との差別化を考慮したのと海外作品では謎の円盤UFOが
ストレーカー総司令官と上層部の対立が毎回のように見られていた
し名作ドラマのコンバットなどサンダース軍曹とヘンリー少尉の
対立が必ずといっていいぐらいあったわけでリアルを追及すると
こういうシーンは必ずある。

 大人向けを意識すると隊員同士や上層部との軋轢が描かれるのは
当然だが、メインターゲットの子供にしてみると第1期までのを見
ているので違和感があり過ぎて決して評判はよくなかったからか回
が進むにつれてこういったシーンは見られなくなっていた。

 

 

 

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