約1ヶ月前に1位のダビド・カルモナ相手に拳を痛めながら最終R
にはダウンまで奪い大差の判定勝ちで2度目の防衛に成功したWBO:
Sフライ級王者の井上尚哉にも課題が見つかった。
キャリア僅か10戦で2階級制覇しただけでなく2試合続けて指名
試合をクリアし最終ラウンドにはダウンまで取って大差の判定勝ちし
たにも拘らず‘苦戦'といわれるのだから凄い事ではあるものの、やは
りキャリアの浅さを露呈したという面では井上にとっては有意義な防
衛戦だったと思う。
井上最大の弱点は痛めやすい拳だが巷では‘拳の故障は強打者ゆえ
の宿命'と言う括りで仕方ないものとされているが、これは昭和の発想
で少しでも痛めないようにするやり方はあるはずだ。
強打者ゆえの宿命で片付けられていた代表格がカミソリパンチャー
といわれた海老原博幸だが強打という光に覆い隠されていたのがコン
ビネーションで、ボディブローを殆ど打たない典型的なヘッドハンタ
ーだったしガードの隙間に強打を捻じ込めるテクニックがあった事が
拳を更に悪化させる事になったのではないか。
対戦相手もボディを打たない事が分かれば的を絞りやすいので顔面
のみのガードになるのだが、そこに敢えてパンチを打ち込むと当然
ながらガードを叩く事になり拳を痛めやすくなるわけだ。
井上も初防衛戦ではガードの上からパンチをヒットさせてダウンを
奪っていたのだが、それができるゆえに拳を痛めるというリスクが
あるのも然り。
アメフトからK-1に転向したボブ・サップがデビュー戦でガードの
上から殴り付けて圧勝したものの拳を痛めて次の試合を棄権すると、
以降も同じような事を繰り返したようにガードの上から殴って倒せる
というのは正しく諸刃の刃になる。
将来アメリカでのビッグマッチを期待される井上だからこそ試合の
度に拳を痛めるような戦い方をするべきではないし、ガードの上から
殴って倒すというのは拳を痛めやすいからこそ封印するべきものでは
ないかと思うのだ。
戦い方が進化した現在‘拳を痛めるのは強打者の宿命’だけで片付
ける時代ではないのだから。