昭和に放送していた『まんが日本昔ばなし』に不可解で忘れられない話があった。長年経って、ふと、その謎が解けたように思ったので書いておこう。
詳細はあいまいだが。
ある村に織物が上手で評判のおばあさんがいた。
あるとき何かのお告げで、おばあさんに不思議な糸巻きがもたらされた。
その糸巻きからは上等な糸がいくらでも出てくる。いくら織物を織ってもなくならない。
しかしひとつだけ守らなくてはならないことがある。
それは、決してその糸巻きのことを疑問に思わないこと。
糸巻きのおかげで、おばあさんの織物はますます評判となり、大口の注文がくることになった。
糸がなくならない糸巻きのおかげですいすい仕事がはかどる。
しかしそこでふとおばあさんは疑問に思ってしまったのだ。
「ほんとに不思議な糸巻きだこと。どうして糸がなくならないんだろう」
とたんに、糸は切れてしまってそれっきり出てこなくなってしまった。
注文に間に合わせるために、おばあさんは糸をつむぐところからやらなくてはならなくなってしまった。無理がたたっておばあさんは死んでしまうのだった。
おばあさんは何も悪いことをしていないのに、なぜこんな結末になるのか、まったくわけが分からなかった。
しかし最近になってようやく、疑問に思うこと=悪いこと と庶民に刷り込ませるための話だったんだなと思い至った。
お上のやり方に疑問を持つとひどい目に合うということの暗喩だったんだな、と。
この歳になるまで、このお話のことをわけがわからないと思っていられたことが不思議で、でもありがたいことだったんだなと思った。
疑問を持つことは大切と言われていたものだった。
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