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アメリカ合衆国、同性婚容認へ2

2013-06-29 09:12:20 | 法・裁判

カリフォルニア州でも今世紀初めまで同性婚は出来ませんでした。これに対して、同性婚を認めないのはカリフォルニア州憲法に違反するという訴訟が提起されて、2008年、カリフォルニア州最高裁はこの主張を容れて同性婚を認めるべしという判決を下します。
前回の話は連邦憲法と連邦最高裁、今度は州憲法と州最高裁です。合衆国の州の原語はstate、これを州と訳すのは定訳ですが、stateの普通の訳は国です。国のほうが実態に近いと言えるかもしれません。
横道に逸れましたが、ここからがいかにもアメリカだなぁという展開になります。同性婚反対グループに残された道は州憲法の改正です。カリフォルニア州憲法は、州民の直接請求による憲法改正の発議を認めていたんですね。結婚は男女間に限る旨の改正規定が州民投票にかけられ、わずかの差でしたが可決されました。州最高裁の違憲判決は覆され、約半年間許されていた同性婚は再び禁止されました。
さあ同性愛者はもう諦めるしかない? そんなことはありません。州憲法がダメなら連邦憲法があります。彼らは同性婚禁止の州憲法改正が連邦憲法に違反するとして、提訴します。今度は、連邦法の解釈なので舞台はカリフォルニア州にある連邦裁判所です。
連邦地裁は原告の主張どおり同性婚禁止の州憲法改正は連邦憲法違反として同性婚を支持します(2010年)。ここでまたややこしい話(笑)。この訴訟が起きたときカリフォルニア州知事は例のシュワルツネッガー、以前同性婚に反対だったシュワちゃんですが当時は同性婚容認に転じていて、州政府はもうこの訴訟から下りたと言い出したのです。
州政府に代わって州憲法改正に問題はないと主張する被告となり裁判を続けたのは、2008年の州憲法改正を主導したグループですが、控訴審でも負けて連邦最高裁に来ていました。
連邦最高裁は、このグループには訴訟を継続する資格はないという理由で、控訴審は内容の判断をせずに上訴を却下すべきだった(つまり州政府が手を引いた時点でこの裁判は終わり)という門前払いの判決を下しました。同性婚反対グループにしてみれば主導した州憲法改正が否定されたのですから利害関係ありと言えそうなものですが、ロバーツ首席裁判官の法廷意見によれば、裁判は政治的な関心を満足させるためのものではなく、被告に法的な利害関係はないというのです。
たしかに州憲法改正が否定されても、被告は非常に不愉快で面白くないというだけで、それ以上不利益はないから(逆に同性愛者はその帰趨によって結婚できるか分かれます)、なるほどとも思いますが、なかなかの形式論理ですね。
なお、この結論も5対4の1票差でした。結婚防衛法の違憲判決はリベラル派4人+ケネディー裁判官 vs 保守派4人と予想どおりの分かれ方でしたが、こちらはリベラル派・保守派入り乱れての分裂で、結婚防衛法では少数派だった首席裁判官が法廷意見を、結婚防衛法で法廷意見のケネディー裁判官が反対意見を書いています。米紙の報道からは、この辺の裏事情は分かりません。
というわけで、連邦最高裁がこの事案をどう判断するかは示されずに終わりましたが、同性婚禁止の州憲法改正は連邦憲法違反という連邦地裁判決は変更されずに残ることになりました。これは実際上、同性婚に有利な判断と受け止められています。
カリフォルニア州知事はただちに同州で同性婚を認めると発表しました。米紙によれば、カリフォルニア州が加わったことで、全米のうち3分の1の人々が同性婚容認州にいるそうです。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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