ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

「イリアス」

2010-10-06 00:10:05 | 芝居
9月17日ル・テアトル銀座で、「イリアス」を観た(演出:栗山民也)。

この劇場はかつて「銀座セゾン劇場」という名前だった。それが今では・・「ル・テアトル銀座」だなんて、言語情報として何の意味もないではないか。訳せば「銀座劇場」。そりゃそうだけど、銀座にある劇場だから「銀座劇場」だなんて一体どういうセンスなのか?第一短縮できない。以前は「セゾンに行く」とか「セゾンで待ち合わせ」とか言えたのに。どう言えばいい?

さて、気を取り直して本題に入ろう。「イリアス」は紀元前8世紀に詩人ホメロスによって書かれた叙事詩。それをもとに木内宏昌という人がこの脚本を書いた由。

5人の女性(コロス)を使った斬新な舞台が美しい。スタイリッシュと言ってもいい位。彼女らの動きも効果的。
ただし、歌が入ると恥ずかしい。vocalise (母音唱法)ならまだしも、「人はなぜ戦うのか・・」などの歌詞で歌われると居たたまれない。

アガメムノン役が木場克己とは驚いた。相変わらず独特の癖の強いセリフ回し。ギリシャ軍の総大将はこんなに下品な男だったのか?
トロイの王子ヘクトル役の池内博之は語尾が消える。イントネイションも時々おかしい。
ギリシャの英雄アキレウス役の内野聖陽はたまに間違えていたが、さすがの貫禄。英雄役が似合う。
彼の親友パトロクロス役のチョウソンハは前半、いつもと違って声が高過ぎると思ったが、考えた上での役作りだったようだ。
ヘクトルの妻アンドロマケは青い衣を着て、端の方で機を織る。

トロイの鉄壁の城壁を表わす赤黒い背景(美術:伊藤雅子)。ラストで右側の黒っぽい大きな柱がゆっくりと半ば倒れかかるのが印象的。

「イリアス」とは「トロイの詩」の意だそうだ。
「イリアスはヘクトルの葬儀で終わるけれど、そのあと起こったことも少しだけ付け加えよう」とコロスが語り出す。「オデュッセウスの悪辣な策略」である例の木馬の事件と、それによって10年もの長きにわたって続いた戦争の終結、トロイの滅亡・・・。
この物語を貫いているのは、神々の慰みものにされる我々人間という視点・捉え方だ。

同じくトロイ戦争を描いた「トロイアの女たち」を文学座で観たばかりなので、ギリシャ軍トロイ軍の一人一人の性格や関係や運命が、だいぶ身近なものになった気がする。

コメント
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