ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

ベルリオーズ「ファウストの劫罰」

2010-07-24 16:28:29 | オペラ
7月15日東京文化会館で、ベルリオーズの劇的物語「ファウストの劫罰」を観た(二期会オペラ公演、演奏:東京フィル、指揮:ミシェル・プラッソン、演出・振付:大島早紀子)。

ベルリオーズと言えば「幻想交響曲」くらいしか知らないので、「ヤクでラリッて・・」⇒「近代」というイメージだったが、どうも違うらしい。彼はベートーヴェンとほぼ同時代の人で、ブラームスより前の人だという。したがって、近代ではなく(もちろん古典でもなく)ロマン派初期に属する由。

この作品は普通管弦楽曲としてオラトリオ形式で演奏されるらしいが、今回は歌手たちの演技とバレーダンサーたちの踊りとを加えて、オペラとして上演した。字幕付フランス語上演。

結果は、耳に快く目にもご馳走となった。ダンサーたちの鍛えられた体と訓練された動きの美しさ。
ストーリーはゲーテの原作「ファウスト」に沿って進むが、途中から違ってくる。台本は作曲者自身を含む3人のフランス人らしき男たち。

ファウストとマルグリートの最初の出会いは夜で、しかも彼女の寝室・・。ちょっと話が早い。だが愛の言葉を交わしていると、メフィストフェレスの企みで近所の人々がファウストに気づいて騒ぎ出す。

マルグリートは母親殺しの罪で牢に入れられる。
最後、天的な存在たちの問答(対話)(彼女は愛の故に・・)の後、彼女は許されて昇天する。

原作では、ファウストがメフィストと共に牢屋の前に現れて脱獄を勧めるのを、マルグリートは断って絶望のうちに死ぬが、許されて昇天する・・のだが。

しかも彼女は母親殺しで捕まるのではない。嬰児殺しなのだ。ファウストとの逢引の都度、彼女は母に睡眠薬を盛っていたが、或る時その量が多過ぎて母は死んでしまう。知らせを聞いて駆けつけた彼女の兄はファウストと決闘の末、殺される。その後赤ん坊が生まれるが、ファウストが逃亡したまま戻らぬことに絶望したマルグリートは赤ん坊を手にかける。半ば錯乱した彼女は嬰児殺しの罪で捕えられるのだ。
このように、原作はあまりにも激しく生々しく、なかなか心情的について行けないものがあるが、このオペラでは死ぬのが母親だけで、子殺しもないので受け入れ易い。

終幕、ファウストは姿を見せない。マルグリートは天使の歌声に包まれて昇天してゆく。天上から降り注ぐ白と青の紙吹雪と甘美なる許しの音楽とが相まって、涙なしには見られない舞台だ。
ただ、この辺に来ると、ダンサーたちの動きが目障りになってくる。ここでは残念ながら音楽の邪魔をしているとしか思えない。音楽自体が十分雄弁なのだから。
振付と演出が同じ人というのが問題。演出に他の人を呼ぶべきだった。

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