「今年こそ3年ぶりに、思い切り夏を楽しもう!!と思っていたのも束の間、コロナ感染拡大の報道に、つい憂うつなため息が出てしまいます。加えて長引くウクライナ侵攻。目をそらすことのできない悲惨なニュースに触れる毎日に、私達の心が影響されないわけはありません。 世界中の誰もが、常に心の中に重苦しい不安をかかえて過ごしているのではないでしょうか。
2020年頃、コロナ禍で生まれた「ドゥーム・スクローリング」という言葉を聞いたことがありますか? 「ドゥーム・スクローリング」とは、「インターネットやSNS上で、ネガティブな暗い情報ばかりを収集し続けてしまう行為」のことです。 これは、悪いニュースを見ることは自分にとって良くないと分かっていても、中毒的になってしまい見るのをやめられなくなる状態であり、 うつや不安障害など精神に深刻な悪影響を与える可能性のある悪習慣のひとつとされています。
エマ・ヘップバーン博士によると、人には、よく分からないことに直面した時に、不安な気持ちの空白を埋めるために、過剰にネガティブな情報を集めてしまう性質があるそうです。人間の脳にとって退屈は「不快」で、刺激は「快」、特にネガティブな刺激はより強く働いて脳を警戒させ興奮させます。また、自分は被害を受けていないという罪悪感や正義感から「目を背けずにニュースを見続けなければいけない」といった強迫観念にとらわれてしまう場合もあります。人は、容易に「ドゥーム・スクローリング」の悪循環に陥りやすいと言えます。
もし、あなたが、常に感染者の数や戦争の被害状況を気にしてしまい。衝撃的なニュースの詳細が知りたくてすぐにネットを見てしまうようであれば、一度「自分は『悪いニュース依存症』かも?」と、自分を見つめ直してみてはいかがでしょうか。
「ドゥーム・スクローリング」の対処法
① いつでもすぐにニュースをチェックするのをやめましょう。チェックするのは、返信が必要な重要なメッセージにだけにします。信頼できるメディアにしぼり、1日の中でニュースをチェックする時間を決めて、それ以外は極力見ないようにしましょう。(特に夜中は見ないこと)
②スマホやタブレットに触れる時間を減らしましょう。ネットには、より刺激的で不安を煽るような憶測があふれており、手で触れるだけで自然と刺激的なニュースや映像が目に飛び込んできます。増やすべきは、自分の実生活におけるポジティブな行為に費やす時間、画面から遠ざかる時間です。
③ニュースを見た後には、必ずリラックスする時間を持つ。何か小さなことをしてみる。暗く悲惨なニュースに触れた後は、必ず気分転換をするようにします。また、「募金のための小銭を探す」「困難にある人に思いを馳せ無事を祈る」など、ささやかでもいいので自分のできる小さなことをひとつでもすると、心が落ち着くことがあります。
不安な時に少しでも多く情報を得たいという欲求は自然なものです。しかし、この不安な世界情勢の中にあって、過剰にニュースを見続けることは、私たちの心の健康を損ねる可能性があることを、心にとめておきたいものです。
【参考】*エマ・ヘップバーン(英)神経心理学を専門とする臨床心理士。著書『心の容量が増えるメンタルの取扱説明書』2021など
*「BBCニュース解説」2022/3/7 https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-60636313
*「こころの探検」2021/3/17 https://kokoronotanken.jp/doomscrolling-korewo-yamerubeki-riyuu/