青少年なやみ相談室

相談室だより

出会えた人を大切に

2024年03月01日 09時00分00秒 | vol.181~190

 少しずつ雪解けが進み、木々の芽が膨らみ始める3月。岩手にも、もうすぐうららかな日々が訪れます。

 3月は卒業式や離任式、退職や転勤などによる別れの場面が特に多い月です。そして、来月4月は入学式や着任式、入社式など出会いの場面が多い月になります。そんなこの時季だからこそ、人との出会いと別れについて少しだけ想いを巡らせてみませんか。

 

 4月からこの3月までの1年間に、どんな出会いがありましたか。どんな別れがありましたか。

 学校での出会い、職場や仕事での出会い、趣味やお稽古[けいこ]ごとでの出会い、日常の中でのひょんなことによる出会いなど、さまざまな場面でさまざまな出会いがあったのではないでしょうか。また、出会いがあれば、さまざまな別れもあったはずです。

 

 「袖[そで]振り合うも多生の縁[たしょうのえん]」という慣用句を聞いたことがあるでしょうか。

 着物の袖と袖が触れあうような些細[ささい]な出来事も、前世や来世で何かしらの縁がある者同士だからこそ起こるという、仏教の思想に由来する言葉です。特別なときにしか着物を着たことがない方も多い現代では、日常生活の中で「袖振り合う」場面はほとんどないかもしれません。しかし「袖振り合う」ではなくても、出会えた相手は、何かしらのご縁がある相手に違いはないのです。

 

 また、別れにまつわる「会者定離[えしゃじょうり]」という言葉もあります。

「会者」とは、縁があり出会った者同士のことです。「定離」とは、いつか離れる日が来るさだめにあるという意味です。出会いがあったその瞬間に、いつかその人と離別するときが必ず来ることが自ず[おのず]と決まるのです。しかし、そのときがいつ来るのか誰にもわかりません。この春がそのときとなる人もいるでしょう。

 

 別れは寂しいものですが、ご縁があればいつかきっと再会することができるはずです。「ご縁」を信じて、再会するその日を待ってみませんか。

 

  出会えた人を大切に。

    そして、これから出会う人とのご縁を大切に。

 

 

 

 

参考文献

森章司(1994) 『国語のなかの仏教語辞典』 東京堂出版

山下民城(1993) 『暮らしに生きる仏教語辞典』 国書刊行会

安藤嘉則(2018)「遺教経について —涅槃会にちなんで—」Pp.3-5 『禅の友』曹洞宗宗務庁


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