6月は、梅雨入りの時期です。どんよりした天気が続くため、何となく、体調がすぐれず、気持ちも滅入ったりする方も多いのではないでしょうか。そのため、「今一つ、やる気が起こらない」、「スランプ状態だ。」などと感じることもあるかと思います。
ところで、毎年、ノーベル文学賞候補にあがる小説家の村上春樹さんは、2年前に執筆した「職業としての小説家」の中で、「自分は、『小説が書けなくなる。』というスランプの時期を経験していない。」と記しています。
この一節だけを読むと、「さすが、『才能あふれる』ベストセラー作家」という印象を持たれると思います。ところが、村上さんいわく、「小説を書きたくないときや、『書きたい』という気持ちが湧いてこないときには全く書かず、『書きたい』と思ったときにだけ書くから、スランプがない。」と、その理由をあげているのです。
さらに、「『別に小説を書かなくたって、死ぬわけじゃない。』と開き直って(中略)、あえて言うまでもないことですが、僕にとっては、精神的に楽なことです。」とも記しています。つまり、「自分が『○○したい』と感じる気持ちが強くなってきたときに動き、その気持ちが弱いときには無理して動かない。」ということを意味しているといえます。
わたしたちの生活の中でも、「眠いけど、明日の予習をしないと。。。」、「体調が悪いけど、職場の飲み会に出ないと。。。」など、自分の気持ちや体調に相反して行動せざるを得ない場面も多いと思います。しかし、村上さんの言葉を借りると、「命に関わらないのであれば、『自分の気持ちや体調を優先する』こと」も1つの考え方です。
日々の生活の中で、置かれた環境や相手に合わせることも必要ですが、それと同時に、あなた自身の「心や身体をいたわること」も大切です。心と身体が元気になることで、次に行動するためのエネルギーへとつながっていくと思います。
(出典:村上春樹「職業としての小説家」新潮社(2015年9月発刊)第4回オリジナリティーについて pp79-106)