先日、書店をのぞいていたらある本が目につきました。この相談室の壁にもかけてある相田みつをさんの詩(書)に高名な精神科医でキリスト教徒でもある佐々木正美先生が文章を綴った本です。『自分の番を生きるということ』という書名にひかれて頁をめくってみました(結局、購入したのですが)。
相田みつをさんの詩(書)は、いつものとおり力強くそしてやさしくて暖かく描かれています。佐々木先生は、児童精神科医らしく、子どもの話、子育ての話を多く述べていて相談員として興味深く読みました。その一つをご紹介します。
「人を信じる力というのは、乳幼児期のできるだけ早い時期に身につけるほど大きく育ちます。その力を身につけるため必要なのは、周りの大人たちが無償の愛を注ぐこと、要するに”甘えさせてあげる”ことです。そう言うと、”甘やかす”ばかりではわがままな子どもになるのではと心配する声が聞こえてきますが、そんなことはありません。人は、乳幼児期に他者から愛されることで自分の存在を誇りに思うようになり、そして自分に自信を持てるようになった子どもは、人を信じて生きていくことができるようになります。」
正直な話、私も”甘やかすばかりでは?派”の一人でした。でも佐々木先生は「甘やかす」ではなく「甘えさせる」と述べています。そこは大きく違います。先生はこの本の中で子どもへの信頼を基本において話をしています。別の文章で先生は子どもが何か良くないことをしたときに、(感情にまかせて)「しかる」のではなく、「くり返し教え伝えて、そして待つこと」が大切と述べています。ここには「甘えさせる」こととも共通する子どもを信じるゆるぎない心があります。それは「甘やかす」こととは明らかに異なります。
現代はとても子育てが難しい時代です。核家族化と少子化が進む中、共働き世帯も増え、一方で、地域のつながりは弱くなっています。親は子どもと一緒にいる短い時間の中で一生懸命子どもを育てようとします。親の愛情は子どもにいっぱい降り注がれます。それが良い結果を生む場合もあれば、そうでない場合もあるように思います。
佐々木先生は「親は子どもの愛し方が下手になった」と述べています。離乳食をちゃんと食べてほしい、外では泣いたりさわいだりしないで欲しいなど、自分が望んでいるような子どもになって欲しいという親の感情は、私が子どものころに比べてより強くなっているように感じます。そしてそういう気持ちが極端に大きく膨らむと、ときには虐待にまでつながってしまうと言われています。
忙しい日常の中、ついつい子どもを「正しく育てる」ことに気持ちがとらわれ過ぎていませんか。子どもは一人ひとり成長の仕方が異なります。子どもを信頼して、その子の成長に合わせて育てることがとても大事だと思います。そして子どもにいっぱい「甘えさせてあげること」をしてみてはいかがでしょうか。