新型コロナ感染拡大の波がおさまりません。
重症化や死亡に至らないよう、自分とまわりの命を守るためには、「消毒」「マスク」「ワクチン」、そして「人とのディスタンス」。
会話をしないこと。一緒に食べないこと。歌わないこと。握手をしないこと・・・。
大切な家族や友人、仲間達に会うのを断念している人がどれだけいることでしょう。
人と人との間に距離や隔たりの壁を作り、一人ひとりを孤独に陥らせようとする恐ろしく悲しいウイルス。
長びくコロナ禍の中で、人と人とのつながりはぐらつき始め、消化不良のまま時間だけが過ぎ、
本来のあったはずの絆さえどんどん色あせていくように感じます。
【「孤独」とは何か考える】
ドイツの哲学者エイリッヒ・フロムは「人間の最も強い欲求は、孤独を克服することだ」と言っています。
誰にとっても「孤独」は大きな不安であり、生きていく上での普遍的なテーマであるといえます。
「孤独」を強いられている今だからこそ、私たちはその正体をとらえなおし、孤独と上手につきあって生きていく方法を
考えるべきではないでしょうか。
そもそも、孤独には、不安や恐怖、苦痛など、本当にマイナスの側面しかないのでしょうか。
もし、孤独をポジティブな意味づけにとらえ直し、受け入れることができるとしたら…。
恐ろしいものではなくなり、むしろメリットがあることを知ったら「孤独もそんなに悪くないな」と思えるかもしれません。
人の命には限りがあり、人間関係もその時その場所で次々とうつろうもので、
結局は「誰もが孤独な存在である」と考える人もいるでしょう。
しかし、人は孤独な存在だからこそ、多少煩わしいことがあっても、誰かがそばにいてくれるありがたさを
感じるものであるし、孤独を知っているからこそ、誰かの心に寄りそうことができると言えます。
以下は、ポジティブな意味づけの一例です。
孤独(ひとり)とは・・・人とのつながりを求める原動力/人の温かさに気づく経験/人に流されないで
自分らしさを持つこと/自由であること/支配されていないこと/邪魔されないこと/依存していないこと
/かけがえのない自分という存在を確認すること/自立し独立しているということ…
他にどんな側面があるでしょうか。
「孤独」について考えをめぐらすことは、自分の生き方やあり方を見つめ直すことでもあり、
そのことは、これまでの自分と人とのつながりに価値を見出し、
そのつながりをどうしていきたいのか、どんな新しいつながりを期待するのか、
自分の中にある望みや希望を明確にしていくことにつながっていくのではないでしょうか。
自分の中に、いつか会いたい人がいるのなら、元気かどうか心配してくれる人がいるのなら、
二度と会えなくても大切な存在がいるのなら、
人は決して孤独ではないのです。
参考文献:『愛するということ』エイリッヒ・フロム著、鈴木昌翻訳、紀伊国屋書店、2020