令和2年11月16日(月)
柳家緑君落語 演目:茗荷宿
東海道53次の神奈川宿に「茗荷屋」という繁盛した料理家
が在ったが、当代の亭主は道楽者で身代を食い潰していた。
仕方なく宿場のはずれに小さな宿家を始めたが、客足らいが
悪く、家も荒れ放題、全く客が寄りつかない。
柳家緑君の茗荷宿
そんな或る晩、旅人がやって来た。 旅人は町飛脚(早い人
は京都~江戸の間を月に三往復するという)で、折しも雨が
降り始め、次の宿へ行くのは困難と、、、、辺りを見渡すと、
「旅籠・茗荷屋」とある。 此処で一晩明かす事にする。
戸を何度も叩き、やっと主が覗くが気のない返事、、、、
「一晩泊めて貰いて円で、、」何とか入れて貰い「風呂と飯
を願いてい、、」、「早速風呂を沸かします」「なんだ沸いて
ないの」「暫く客がなかったので、、」
飛脚は「これを預かって欲しい、中に百両入っている」、、
「ヒ、ヒ、百両ですか、、」暫くしてカミさんが「お風呂
沸きました」客が風呂に入ると「何だぬるいじゃねいか、、」
その間にカミさんへ「おーい、これに百両入ってるそうだ」
「アラ、私着物と帯買って貰おうかしら」「何言ってんだ、客
の金だよ」「百両もあるなら、5両や6両判りゃしないわよ、
何も悪い事する訳じゃない、、」「何言ってんだ、それより
おまんまの支度をしろよ、」「そんな事言ったって何もない
わ、お客なんて来なかったんだから、、」「そうだ、裏の畑に
茗荷が在ったな、それで何か拵えろよ、」
「お客さん湯加減はどうでしたか、」「ぬるくって仕方ねい、
それより、おまんまはどうしたい」「ハイ只今お持ちしました」
「茗荷の味噌汁で御座います」 「うーんこれもぬるいなー」
「続いて茗荷の漬物で御座います」「、そうか、此処は茗荷屋
だったなー、」「続いて焼き茗荷で御座います」「、、、」
「茗荷の刺身で御座います」「茗荷づくしだなー、、、、
お腹が減ったよ、おまんまをくれねー、、」「茗荷の炊き込み
ご飯で御座います」「予想はしてたよ、、茗荷の炊き込みご飯
然し普通はご飯の中に茗荷だけど、これは何処にご飯がある?」
「アーアッ、何だか頭がぼーっとしてきたよ」とお客が、、、、
「本当で御座いますか?」と主はしたり顔で、ほくそ笑む。
「じゃ、もう寝るよ、、」、、、、、、、、、、
明くる朝、「お早う御座います、お客様よくお休みになれまし
たか?」 お客が「お前んとこは、蒲団がねーのか?座布団2枚
ひっかぶって寝たよ」「生憎、夫婦二人分しか蒲団がなくて、」
「なら、こっちに回せよ!」 「朝ごはんの支度が出来ました」
「ウン?、、茗荷の味噌汁に茗荷の炊き込みか、オイこれは何
だ」「それは茗荷の開きで御座います」「焼茗荷を半分に切った
だけじゃないか、、茗荷づくしなら茗荷の天婦羅はないの?」
主は「面倒くさいので、、、」 「もういい、出かけるから、
アバヨ、」と飛脚は飛び出し、「お気をつけて、、」
「やったヨ、お前さん、忘れてったよ、、」夫婦はニンマリ、、
其処へ、飛脚が慌てて戻り、「オット、忘れ物をした俺の荷を
出してくんねー」、主は「何でしたっけ」客が「トボケルネー」
「ヒョットしてこれですか」 「そうだ、アバヨー」と飛び出す。
「お前さん、あれだけ茗荷食べたんだから、何かわすれてない?」
「アッ、、しまった、宿賃貰うの忘れた、、、」
お後が宜しい様で、、、、 次回は「四段目」(蔵丁稚)を
紹介します。
今日の1句
マスクして笑い転げる寄席噺 ヤギ爺