遊民ヤギ爺

俳句と映画のゆうゆう散歩

柳家緑君独演会3

2020-11-17 16:45:13 | 日記

令和2年11月17日(火)

緑君落語 演目:四段目(蔵丁稚)

マクラ(落語の演目に入る前の余話)で、落語家達が

暮れになると行う「鹿芝居」(しかは噺のしか)を

噺達が集まり、素人芝居(歌舞伎)演ずるのが恒例で

それぞれが役者に扮し、白塗り、髷をつけて芝居する。

芝居の最中で、役者が大見得を切ると大向う(客席)

から、市川團十郎なら「ナリタヤー」と声がかかる。

緑君等も、それぞれ真似をして大見得を、、、、

そこへ緑君に「ヤナギヤー」それはそれは良い気分、

天にも昇る、、「来年は是非「ここ(大須)でも

やって見たい、に、万雷の拍手(とはいえ50人程)

柳家緑君

 

落語 : 四段目

「オイオイ、番頭さん、チョイトこっちへ来とくれ」、

定吉の姿が見えぬが何処へ行った」「今、チョイトお

使いへ」「何言ってるんだ、又芝居観に行ったんだろう、

今日という今日はみっちり小言を言ってやろう」

暫くして定吉が戻って来た。「只今戻りました」「戻り

ましたじゃないヨ、旦那様がカンカンだよ、直ぐに

旦那様の所へ行きなさい」「腹ペコなんで先にオマンマ

を」「だめだだめだ」と無理やり旦那様へ引き出され、、

「お前随分居なかったが何処へ行ってたんだい」「お使い

に」「何時に出たんだい」「朝8時頃」「今何時だい」

「4時過ぎて、、」「今まで何してたんだ」「加賀屋さん

で色々と」「加賀屋さんなら目と鼻の先だよ」「加賀屋

さんに頼まれ手伝いを」「加賀屋さんは先ほどまで此処に

居たんだ、またお芝居を観に行ったんだろう」「芝居なん

て大嫌いです。白粉をベタベタ塗って、、観てるだけで

鳥肌が立って、、」「あ、そうかい、そんなに嫌いなら

明日奉公人を残らず集めて芝居見物に出かけるがお前は

留守番だ。今度、忠臣蔵をやり、五段目山崎街道の場で

市川團十郎が猪の前肢、海老蔵が後ろ脚をやるそうだ」

「そんな役を成田屋(市川家)がやる訳ないよ、端役は

稲荷町という下っ端がやるんです」「どうして判るんだ」

「今観て来たばっかりだから」「やっぱり芝居を観て来

たんじゃないか、」と、旦那さんに蔵へ引きずり込まれた。

これに定吉は、芝居かかって「謀ぁーらぁーれたぁー、

謝ると思いしにー、還ってこの家の茶瓶にイー、謀ぁー

らぁーれーたぁー、、」空腹のまま、蔵に閉じ込まれ、

仕方なく、今観て来た忠臣蔵の「判官切腹の場」を一人

演じる定吉、

「御前、、」「由良助かぁー、」「ハハー、、」「待ち

かねたー、、」そして「アーアお腹減ったなー、でも

芝居してるとお腹減ったの忘れちまうよ、、そうだ、と

続けて、「力弥(ちから)、由良助は、、」「只今参上

つかまつります、、」「存上で対面せで、無念だと伝え

よ、いざご両所お見届けくだされ、」と、短刀を腹へ、、

其処へ様子を見に来た女中が、定吉が腹を切ると勘違い

して、慌てて旦那様へ報告しに走った。 旦那様は仰天

し、「いくら何でも奉公人の命を奪う訳にはいかないと

調理場から御櫃(おひつ)を抱えて蔵の中へ、、、、、

「御膳(御前)、、」「蔵之助(蔵の内)かぁ、、」

「ハハア、、」「待ちかねたぁ、」(と、オマンマに)

大仰に歌舞伎役者の様に、これにて四段目終了、、、

 

歌舞伎の忠臣蔵は、「仮名手本忠臣蔵」といい、

大石内蔵助は大星由良助といい、大石主悦は力弥、

松の廊下刃傷沙汰で敵役の吉良上野介は、高師直。

切腹を命ぜられる浅野内匠頭は塩治判官という。

仮名手本忠臣蔵の四段目では、切腹を命ぜられた

塩治判官が短刀を腹に突き立てた途端に、花道

から大星由良助がトントントントン、、と奔り

出て駆けつけるシーン、、名場面であり、大向う

から「成田や、」等と声が発せっられるが、

映画等では切腹の時に家老の大石はおろか、家臣

の誰一人として面談は叶わなかったとされている。

落語では、丁稚の芝居狂いに話を作り、客席を笑い

の渦に引き込む

お後が宜しいようで、、次回は「五貫裁き」を、

 

今日の1句(俳人の名句)

叱られて次の間へ出る寒さ哉    各務 支考