受講中の「徒然草をよむⅡ~無常をこえる知恵~」。前期の「無常をこえる意思」と同様、講師の川上先生が用意される豊富な参考資料のおかげで毎回、兼好の生きた時代やその思考の深みに入り込んでいる。「第七十四段」(蟻のごとく集まりて)は、徒然草の核心部分で無常への心がまえを記しているという。そして解説で<「老い」への視線が丁寧さに欠ける>として紹介されたのが天野忠(1909~1993)の詩。新聞やテレビの「終活」に自然と目がいってしまう最近、この詩が描く心情はよく分かるなあ。それにしても、いろいろな作家や作品に出会う、もうひとつの楽しみがある講座だ。
「新年の声」(天野忠詩集より)
これでまあ
七十年生きてきたわけやけど
ほんまに
生きたちゅう正身のとこは
十年ぐらいなもんやろか
いやあ
とてもそんだけはないやろなあ
七年ぐらいなもんやろか
七年もないやろなあ
五年ぐらいとちがうか
五年の正身……
ふん
それも心細いなあ
ぎりぎりしぼって
正身のとこ
三年……
底の底の方で
正身が呻いた。
―そんなに削るな。