生まれ育った牧場の母牛に会いに行くところ始まる小さな物語。まもなく食べられてしまうボクは最後にひと目だけの思いで列車に乗る。流れゆく車窓の景色とともに思い出すのは優しかった母のこと、広々とした牧場で過ごした楽しい日々、そして食牛としての自分のうんめい(運命)をも。牧場に着いてからのシーンの数々は想像を超えて何とも言えない。文章が無く、絵だけで発せられる言葉を想像するクライマックスの数ページ。それぞれに価値がある生命(いのち)の大切さ、そのことを静かに訴える絵本。流し読みすればわずか2・3分で読みきってしまうが、その何倍もかけて深読みし、本を閉じても考えさせられた。巻末の作者紹介にあるメッセージにも共感、子どもだけでなく多くの大人にも読んでほしいと思う。
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