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震災だけでなく『涙にも国籍はあるのでしょうか』

2024年05月24日 | 読書

東日本大震災14年目の今年も3月11日を中心に震災関連の多くの新聞記事。だが見出しや写真を追うだけで深読みをすることはなかった。この本を読み、過去に報道された内容の繰り返しという先入観だったことを深く反省させられた。新聞に掲載された特集記事をベースに岩手県・宮城県の沿岸で亡くなった外国人の生き方や痕跡を追いかけた内容。きっかけは国が外国人犠牲者数を把握していないことから始まる。そこには、元データ作成の自治体と厚労省の集約方法、警察庁の集計の考え方の違い、住民登録・外国人登録の制度的問題などが横たわる。しかし「亡くなったという事実」と各登録データとの突合せや身辺者との聞き取りを可能な限り行ったのだろうか。震災直後の混乱期ならまだしも10年以上たっても正確な死亡者やその数を知らない、調べを尽くそうとしない国や自治体。この本で取り上げられたのは、その中の数人。それでも、それぞれに多くの物語があった。海を越えて長く続く遺族との交流、母が亡くなった息子の滞在許可を支援する仕事仲間などの話もあるが、各章にわたる「涙にも国籍はあるのでしょうか」と問うテーマに考えざるを得ない。筆者は<この国の行政が潜在的に内包している、日本で暮らす外国人への「冷たさ」>、(今後、多民族国家に進んで行かざるを得ない日本において)<あまりにも不平等であり、何より不正義>と提起する。震災に限らず、目をこらして見渡していきたい。

        



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