何度も来日し、いくつかの大学で教鞭も執った社会学者の著者。50年近くにわたって日本を見つめてきたその視力には説得力がある。北朝鮮のミサイルの脅威、韓国・中国との歴史認識、領有権やロシアとの北方四島をめぐる対立など周辺諸国との関係。そして昨日もヘリからの落下事故が起きた沖縄の米軍基地についての日本政府と沖縄の対立。そうした<解決の糸口すら見あたらない>諸問題の根本原因は、<まず米国への従属という事実>であり、<近隣諸国との間で高まる緊張はその帰結>と明快に指摘する。その上に、安倍政権が進める安保関連法や集団的自衛権などの安全保障政策の危険性、それを容認する日本国民に対して別の選択肢として代替案を示す。各テーマとも読み手にとって異論が噴出するところだろうが、熟考すべき問題提起が多い。未だに占領下にある沖縄や日本からの米軍撤退はリスク高まらないとしつつ、専守防衛のための武力保持は必要と説く。北方四島はじめ尖閣諸島・竹島の領土問題も発想転換が必要としているが、共同所有・管理の解決策は歴史的経緯を棚上げできるか。今、一番厄介な北朝鮮との関係は懸案の拉致問題も含め経済制裁の強化一辺倒では出口は見えて来ない。著者の<北朝鮮が核を持つ5つの理由>を読むとき、米国の「核の傘」の下で核兵器禁止条約に反対する日本がどう向き合えるのか。<対米従属からの決別>はじめ、安眠枕化しているという9条について<反戦憲法にとどまらず、積極的平和の構築を明確に打ち出す真の平和憲法を>など、タイトルどおり私たちに向けられた一冊は相当重い。
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