独身で元教師のマーサは、70歳を超えて一大決意し、長年暮らしたアパートの荷物を売り払い
シニアタウンに移り住む。病を抱えての引越しで疲弊しきった彼女は、近所づきあいを拒むが
隣家のシェリルの強引な誘いで外出し、それを機に親しくなった二人は、マーサが昔、断念した
チア・リーディングに挑むことになる。早速チア・リーディング・クラブのメンバーを募った所
集まったのは、経験がないばかりか足腰が弱って運動神経も怪しい老女8人。まわりには出来る
はずがない、と馬鹿にされるが、マーサは高校のチア・リーダーをコーチに頼み、メンバーは
友情を育みながら練習を重ねチア・リーディング大会に挑む。
74歳が跳ねる。ダイアン・キートンほど年老いても若々しい女優はいない。本作品の主人公マーサは
ゲラゲラ笑うし、ボロボロ泣くし、嫌味をたっぷり言うと思ったら、酷い目に遭っても許してしまう
それでもって主張すべきところでは言いたいことをちゃんと言う。天晴れなおばあちゃんです
ピンピンコロリという言葉もあって、死ぬ寸前までピンピンしていて、朝出かけていったら死んで
戻ってきたみたいな場合を言うらしい。確かに死ぬ前に病気で苦しんだり、認知症や植物状態になって
家族が疲弊したりするのは好ましくない。死ぬならある日突然、苦痛もなく死にたいその点、本作品の
主人公マーサは家族がいないから残すべき情報もない。全財産を売却して最期を看取ってくれる施設に移る
それがマーサの終活だ。外国では遺品の整理はあるが、死ぬ準備のために私物を生前整理することはない。
バザールみたいに並べて売っていたら、買う人は遺品整理だと思うだろう。客とマーサのやり取りは
シニカルで笑える。かなりガタがきている上に病気の身体を抱えて、しかし調子がいい時はやりたい事を
マーサは自由闊達で優しさに溢れている。歳なんか関係ない。やりたいと思った時が始めどきだ。
終活なんぞ糞食らえなのである。狂言回し役のシェリルを演じたジャッキー・ウィーバーが上手い。
序盤からダイアン・キートンのマーサに感情移入してしまったので、施設の人々がいちいちカンに障り
特にシェリルの我儘放題にはイラッとしてしまうが、マーサのおおらかさが逆にみんなを包んでしまう。
懐の広いおばあちゃんには敵はいないのだなと感じる
こんなふうに晩年を過ごせたらいいと羨望するとともに、何かをするのに遅すぎるという事は無い!と
思う。どのように死ぬかは、つまりどのように生きるか?なのか
五十肩でも坐骨神経痛でも腰椎分離すべり症でもチアダンスは出来る。幸せに泣ける佳作である。
誰もがどこかに不安や悩み、心配を抱えてる時代に是非観て欲しい。 ☆☆☆☆