今日のことあれこれと・・・

記念日や行事・歴史・人物など気の向くままに書いているだけですので、内容についての批難、中傷だけはご容赦ください。

塩の日

2005-01-11 | 記念日
今日(1月11日)は「塩の日」
武田信玄と交戦中の上杉謙信が、武田方の領民が今川氏によって塩を絶たれていることを知り、塩を送ったとされている日。この話が、有名な「敵に塩を送る」という言葉のもととなったことはよくご存知でしょう。この言葉は、敵対する相手が困っている時に助けの手をさしのべたり、また、敵の窮地を救うといったときに使われる。
武田信玄は13年間にも及ぶ駿河国の今川氏との同盟を破棄して、東海方面への進出を企てる。それに対して、今川氏真は、縁戚関係にあった相模国の北条氏康の協力を仰ぎ、武田領内への「塩留め」を行う。武田領は甲斐(今の山梨)・信濃(今の長野)の山中にあり、海に面していないため「塩」を採ることが出来ず領民が苦しんでいた。越後(新潟県)の上杉謙信は、この宿敵の武田信玄を攻める最大のチャンスであったにもかかわらず、武田の領民の苦しみを見過ごすことが出来ないとして、敢えて戦わず、越後から信濃へ塩を送った。この越後から送られた塩が信濃の松本に到着したのが、1568年(永禄11年)1月11日のことなのである。このことに感謝の意をこめ毎年1月11日に「塩市」が開かれるようになり、この塩市は現在「あめ市」として長野県松本市で開催されている。
しかし、今に伝えられている「敵に塩を送る」美談は、記録史料の上では何ら信用すべきものもなく逸話のようである。上杉謙信が武田信玄へ塩を送ったとされる松本街道は「塩の道」と呼ばれ、今脚光をあびている。糸魚川を起点に松本市までを結ぶ古道で、信州街道、千国(ちくに)街道とも呼ばれており、昔から地域の生活を支える重要な路線として糸魚川からは塩や海産物、信州側からは大豆・生薬・綿などが運ばれ、これらを歩荷(ぼっか)や牛方(うしかた)といった輸送職人が、運んだとされている。そして、塩の道(松本街道)の一部が平成14年には国史跡にも指定されたそうである。
ただし、この「塩の道」というのはもともと岩塩のない日本では海でとれた塩を内陸に運ぶための道のことを言い、海岸から内陸にむかって無数の「塩の道」があったそうだ。信州では、太平洋側から入る塩のことを「上塩」とか「南塩」と言い、富士川、吉田、名古屋、江戸などから運ばれ、日本海側から入る塩のことは「下塩」とか「北塩」と呼ばれ、富山、糸魚川、直江津、新潟などから運ばれたそうだ。そして、その上塩と下塩との移入路のターミナルに「塩尻」という地名がつけられたと言われている。だから、甲州からの塩の流通を断たれても実際には他からも入ってくるので大した影響は受けなかったようである。
それにしても、室町時代末、戦国時代の頃から糸魚川通りの北塩が多くはいってきたことは事実であり、江戸時代になって、初市にいわれをつけたのだろう。私も、仕事の都合で、松本にはよく行ったが、本町と伊勢町の角に「牛つなぎ石」があり、塩荷を運んできた牛をつないだところだと聞いている。
人間にとって生存のためには欠かせない塩。しかし、日本は、岩塩や塩湖などの塩資源に恵まれておらず、その上、四方を海に囲まれているのに、気候が高湿多雨なので、天日製塩にも適しない。このため、日本では、昔から、海水から「かん水(鹹水=濃い塩水)」を採る「採かん(採鹹)」と、かん水を煮つめて塩の結晶をつくる「せんごう(煎熬)」という、二つの工程から成る製塩法が行われてきた。
因みに、万葉集の頃の私の地元・神戸の須磨は海人部が住みついた荒涼とした海浜地で、塩を焼く地として知られていた。その名残であろう「塩屋」の地名も残されている。万葉の頃の製塩法について定説はないが、一般にはすのこの上に積んだ海草に海水をかけて塩分を含ませ、それを焼いて水に溶かし上澄みを釜で煮詰めて塩を作ったと考えられている。その頃の「藻塩の歌」を1首紹介しておこう。
●須磨の海人の 塩焼き衣のならなばか 一日(ひとひ)も君を 忘れて思はむ(6・947)
山部赤人が駿馬(みぬめ=神戸市灘区岩屋)で作った歌の反歌。
(画像は、信州松本の牛つなぎ石)
参考:
たばこと塩の博物館 (JTのHP)
http://www.jti.co.jp/Culture/museum/WelcomeJ.html
「塩の道・千国街道」
http://www.geocities.co.jp/SilkRoad/8352/shionomichi/
塩 の 道  千 国 街 道
http://www.asahi-net.or.jp/~pb3i-itkr/sionomiti/sionomiti.htm
松本・あめ市
http://www.localinfo.nagano-idc.com/kita/kanko/dento/ameiti/