11月12日(木曜)快晴 BC~ティリチョレイク~シリカルカ
今朝の支払い1690Rs(1988円)
チーズピザ+紅茶4杯+紅茶をポットで+パンケーキ+ヌードルスープ
5時起床 6時30分朝食 7時15分出発
標高が高く東に開けているので日の出は比較的早かった。
いや、谷間の川沿いの宿では周りの高い山に阻まれ中々陽が当たらないのだ。
ほぼ毎日、朝の出発が8時と、トレッキングのスタートとしてはのんびりなのはこの時間にならないと寒くて歩く気がしないからなのだ。
しかし本日は登りが累積で1000mを超える上に、ティリチョレイクを見たらまたベースキャンプに戻り昼食を食べ、シリカルカまで行かなくてはならない。
先の事を考えると少しでも多く時間が欲しい一日なのだ。
自分らの宿から出たのは1番だったが他の宿のトレッカーは既に歩き出している人達も居て遠くまで見通せる道には点々と人の粒が見えた。
そして、後発の元気な若者にも随分と抜かれ気が焦る。
別に競争をしている訳ではないのだが、普段はあまり人に抜かれる事が無いので今日は調子が悪いのかと思ってしまうのだ。
今日の行程はスタート地点が4150mで水面が4920mのティリチョレイクまで登る。
水面は4920mだが、地図で読むと手前の最高点は5000mを僅かに超えるとなっている。
約5キロで1000mを登る、殆ど登り一方のきつい道が予想された。
実際の道は急登にならないようにジグを切って(スイッチバックのような方式?)登っていたのだが、何分にも標高が高いので息は切れ、辛い。
トレッキングと言うよりも日本人的には完全に登山の領域なのだが、他所の国のカテゴリーではこれはトレッキングなのだ。
手を使わずに足だけで登れるのはどんなに標高が高い山道でもトレッキングであり、岩場などで手を使うようなスタイルはスクランブルと分けるらしい。
そしてロープと道具を使うとクライミングとなるので日本の登山の大半はトレッキングであり、北アルプスの大キレットや西穂辺りがスクランブルなのかと思う。
ガレ場のジクザグ道が終わったら雪道になった
手持ちの高度計で標高5050m 石の道標が親切
丘を越えたらティリチョレークがドデーンと現れた
7123mのティリチョピークに連なる氷河が落ち込んでいる
ティリチョピークに連なる6559mの無名峰
ティリチョBCからの帰り道 下りの方が凄く怖い!!!
まず大丈夫、だが、落ちる可能性はゼロでは無い
素晴らしいトレッキングロードだが、歩く人は皆無口だ
ガレ場のジクザク道を喘ぎながら登り切るとやや平坦な丘場の地形に出た。
宿を出てからほとんど休まず歩き続け、朝方抜かれた若い人達のグループと、前方に蟻のように見えていたトレッカーの大半を抜き返していた。
しかし、一度抜き返した人にまた抜かれるのは沽券に関わるのでその後のポジションが苦しくなる・・・まっ、競争している訳でもないのに馬鹿臭い感覚なのだけれども、どーも拘ってしまう。
標高が上がり荒涼とした岩場の道を行くとルートは次第に雪になり、最後の詰めでは完全な雪と氷の道になった。
ヨーロッパの人達の中には簡易アイゼンを付けている人も居たがそれほどの傾斜ではないので難なく歩ける。
小高い丘の先が何も無くて遠くにダウラギリに続くものと思われる山並みが見えた。
よぉ~し、あそこで終わりかと思うと不思議と頑張る気力が湧く。
と、その時、このトレッキングでは殆どお呼びの掛からなかったアレが来てしまった。
比較的平坦で雪に覆われ隠れるような岩も無い・・・高い所まで登って行くしか無いかと思った時に前方下に石積みの小屋が見えた。
雪とも氷とも言えない中をザクザクと踏んで小屋に辿り着くと、それは茶店かなにかを作ろうしている小屋だった。
まさか小屋の中で用足しをする訳にも行かず、仕方が無いので小屋の影の一番見えなそうな所で尻を出す事にした。
しかし、雪原にぽつんとある小屋は、誰でも一度は目をやる場所でもあり隠れたつもりが角度によっては殆ど丸見え・・・だが事態は風雲級を告げ躊躇している余裕は無かった。
ふう~っ・・・今年も高所での野糞をする羽目になったか、と、少し感慨深い思いが過った。
10時10分 湖着。
ティリチョレイクは美しかった・・・が、氷河を抱く山に囲まれもっと荘厳な雰囲気かと思っていたのだがそれほどの物でもなかった。
地図に「Highest&Bigest Lake」と書かれているのだが、どれと比べて最高で最大なのかが疑問だった。
エベレストベースキャンプ近くやチベットには5000mを楽に超える湖が存在するので4920mでは世界一の高所で無い事は確実。
そして高所の湖で世界一大きいと言うのもチベットにはもっと高い所で大きな湖があるので違うのは分り切っている・・・この地図の範囲では最高所で最大の湖と言う事なのか?
湖の見える丘には茶店が有った。
ネパールでは標高5000m以上でも人さえ集まる場所なら普通に茶店が在り、お茶や食事を提供する。
自分が息を切らして喘ぎながら登ってきた道をポーターが毎日石油や食料を運び上げて来るのだ。
その事を思うと、高所のトレッキングにかなり悲壮な面持ちで挑んでいる自分が情けなくなる。
自前のポットを持っていたので茶店では飲まなかった。
チャメの先で買ったリンゴを1個、半分に割ってRajuと二人で齧った。
日差しが強く寒さは感じないが温度計は氷点下4度を指し、冷えたリンゴがうまかった。
周囲の人達は溜息混じりに風景を賞賛しているのだが、何処を見ても何処かで見たような感じがして、確かに美しく壮観なのだが、息をのむ風景と言うほどのものでは無かった。
自分としては湖よりもティリチョピークの連山から落ちている氷河が間近に見える事に感激した。
ヒマラヤの高地では随所で氷河が見られるのだがトレッキングで行ける高さから見える氷河は大概白く無く下手をすると全面的に土埃を被って地面と判別つかない物も多い。
そんな中でティリチョの氷河は真っ白でトレッキングで間近に見られる中では一番美しいと思った。
大したものでは無いと言いながら気がつけば45分も眺めていて、11時下山開始。
日が高くなり雪道がまぶしかった。
黄色人種はこの程度の短時間では雪目の心配は無いが、しかし、目を細めないと辛い。
膝の調子が良かったのでガレ場を小走りで駆け下りた。
高所からは下るほどに力が湧いてきて酸素が濃くなる事が実感できる。
とは言っても登りで使った体力が回復する訳では無く、呼吸が楽になる事での錯覚なのかもしれないが。
下りの途中で後が詰まっても抜かせてくれないフランス人の一行を少し強引に追い抜いた。
するとフランス語らしき言葉で何やら怒鳴ったので、自分はひと言「ばぁーか」と日本語で言って微笑んでやった。
またフランス人だった・・・自分との相性の悪さは決定的だと確信した。
12時30分ティリチョBC到着。
昼飯にヌードルスープを食べ、ポットの紅茶を貰いテルモスに補給した。
13時15分 BC出発。
目的地はシリカルカ。
地図で見た距離は5キロ程度で標高差も殆ど無いと読めるのだが、ランドスライド地帯は危険箇所や岩場を避ける為にアップダウンが多く体力的にも精神的にもきつい道だった。
15時30分、シリカルカに到着するとRajuが疲れたと言った。
宿は昨日昼食を食べたロッジだった。
宿の前の広場にテントを張ったパーティーが居た。
テントの人が食堂でお茶を飲んでいたのでどこへ行くのか尋ねるとティリチョレークからジョムソンに抜けるのだと言う。
このルートだと一泊だけテントが必要になるのだが、全行程をテント泊で過ごし、既に12泊目だと言う。
たった3人のトレッカーに5人のポーターとガイドとキッチンスタッフがついていて、キッチンテントとダイニングテントが在る大名行列であった。
ティリチョBCとシリカルカは殆ど同じ標高なのにシリカルカは暖かかった。
BCでは水が凍って出なくなっていたがここでは外の水道も凍らなかった。
7時半就寝。
動悸は少し収まったが横になると感じる。
5000mから下ってきたのだから順応としては理想的なのだが・・・歳か?