友人がブログで、井上井月(せいげつ)のことを書いていましたので、句集などを読み直しています。
井月は文政5年(1822年)に越後長岡藩士の子として生まれたと言われており、明治20年(1887年)に信州伊奈で往生を遂げた漂泊詩人です。
生来酒を好み奇行逸話も数多くありますが、芥川龍之介が主治医であり文人仲間であった下島勲からその存在を知らされた折に、日本文学史上与謝蕪村以来の大発見と手放しで喜んだというほどの鬼才です。
井月は生涯にわたり芭蕉を敬慕し、後には種田山頭火に影響を与えているとのこと。
芭蕉を詠んだ句は幾つもありますが、いかに慕っていたかがよく分かります。
我道の神とも拝(おが)め翁の日
旅人の我も数なり花ざかり(「旅人と我が名よばれん初しぐれ」の本歌取り)
また、山頭火は井月の供養碑にひざまずいて、次の四句を残しています。
お墓したしくお酒をそゝぐ
お墓撫でさすりつゝはるばるまゐりました
駒ケ根をまへにいつもひとりでしたね
供へるもんとては野の木瓜の二枝三枝(にしさんし)
井月の句は1800ほど確認されているとのことですが、やはり全集が欲しいですね。