ヒゲジイのアル中よもやま話

断酒を始めて早7年目。このブログは回復プロセスの記録と脳のリハビリを兼ねて綴っています。やはり、まだチョット変ですかネ?

アル症の心理的減感作療法:“ゴミ拾い” の意外な効能?

2016-09-09 08:26:45 | 病状
 藪から棒ですが、減感作療法というものをご存じでしょうか? 小児のアレルギー性鼻炎や気管支喘息、食物アレルギーなどの内、原因物質(アレルゲン)が同定され、アレルギー反応によると確定診断された患者に特化した原因療法のことです。

 微量のアレルゲンエキスを定期的に繰り返し皮下注射か舌下投与することで身体に馴染ませ、体質改善を図るというのがそのあらましです。もちろん、アレルゲンエキスはアレルギー反応を起させないぐらいのごく微量から始めるのは言うまでもありません。

 アルコール依存症は免疫・アレルギー系の病気ではありません。アルコールという依存性薬物で脳がイカレてしまった病気です。専門の医療従事者なら誰でも、アルコール依存症に減感作療法を試みるのは愚の骨頂で、有害以外の何ものでもないことを知っています。たった一口酒を飲んだだけで連続飲酒状態の元の木阿弥となった患者を山ほど見ているからです。再飲酒した経験のあるアルコール依存症者も “最初の一杯” がどんなに危険か身に染みて分っています。たった一口の酒で嫌というほどヒドイ目に遭ってきたからです。

 “飲酒欲求” がテーマのミーティングで、私は面白いことに気づきました。ゴミ拾いをしていると、酒類のゴミにも出くわします。それらの始末のつけ方で酒に未練があるのか試されているのだと気づいたのです。

 酒類のアルミ缶やビンは、飲みかけの場合ほど道端の低い塀の上や公園のベンチにちょこんと放置されているのが普通です。しかも容器の1 / 3以上残っている場合が結構あります。ほとんど空の状態であれば、地面に転がっているだけなので直ぐに察しがつきます。飲み残しがあると確認するや、私は即座に残りを排水溝か地面に捨ててしまいます。一時辺りにアルコールの臭いが充満しますが、止むを得ません。排水溝か地面に捨てさえすれば、酒も単なる液体でしかありません。このやり方に至ったのに実は伏線がありました。

 夏の初めのことです。駅からの帰り道、国道脇の歩道を歩いていて思いがけないモノを見つけました。この国道には騒音対策のため、車道と歩道の間に遮音塀を備えた緑地帯が設けられ、緑地帯と歩道は低い煉瓦塀で仕切られています。その低い煉瓦塀の上にワインボトルが1本置いてあったのです。瓶には七分ほど赤ワインが残っていて、ご丁寧に紙コップも添えられていました。こんなことは初めてでした。一瞬、「もったいない」が頭を過ぎりました。が、キャップを外し瓶を逆さにすると、中味を地面に撒くように捨てました。キャップを外そうとしたとき、以前聞いた話を思い出したのです。

 それはアルミ缶の廃品回収業をしていた人から聞いた話のことです。仲間にアル中の人がいて、アルミ缶に残っていた僅かなビールを「もったいない」と口にしたのが災いし、再発してしまったと言うのです。酒に意地汚いアル中の性です。酒乱タイプの人だっただけに周りの仲間が大変迷惑したそうです。酒が入って暴れ出したら手が付けられなくなり、木刀を持って警察に押し掛けた武勇伝の持ち主だそうなので、いかほどの迷惑だったのか察しがつきます。かつて朝から発泡酒をしていた頃、話題の人物とは公園の東屋で一緒だったこともあり、話を聞いて肝を冷やしたものでした。

 この出来事があって以来、酒類のアルミ缶やビンの置かれ方から飲み残しがあると察しがつくと、容赦なく中味を捨てることにしました。私の場合、今ではそれが条件反射的な反応になっています。

 炭酸系飲料のアルミ缶のプルトップを開けるとプシュッという音がしますが、その音を聞くと身体が反応してしまうという話を体験談でよく聞きます。それだけ条件反射的に身体に染みついているのです。私は断酒開始以来ほぼ毎日ノンカロリー・コーラを飲んでいるので、アルミ缶を開ける音を聞いてもそんなストレス反応はありません。

 このことから・・・
「同じ行動の繰り返しで身体が馴染みさえすれば、条件反射的に余計なストレスを受けるのが少なくて済むのではないか、酒を繰り返し捨てる行為にもそれが当てはまるのではないか?」と考えるに至りました。ある意味、アルコール依存症の “心理的減感作療法” になり得ると考えたのです。それで専門クリニックの主治医に尋ねてみました。

「ゴミ拾いをしていると、酒の飲み残しがよく見つかります。片っ端から中味を捨てて始末しているのですが、これってアル中の減感作療法に繋がりませんか?」   
「減感作療法ねぇ、AAの創始者の一人、ボブが試にやってみて無効であると結論付けた。これでアルコール依存症の減感作療法はとっくに片が付いているんですよ。」

 「話の切り出し方次第で医者がどう反応するかが決まる」、臨床開発をやっていた現役時代、散々苦い思いをして身に染みて分っていたはずです。にもかかわらず “心理的” の一言がうっかり抜け落ちて舌足らずになってしまいました。話の切り出し方を完璧に間違えたのです。主治医は、さすがに医者だけあって、減感作療法という言葉の方に反応してしまいました。シマッタと思っても後の祭です。もう取り付く島もありませんでした。

 お天道様の見ている下で嗅ぐアルコールの臭いは決していいものではありません。酒の飲み残しを捨てるにしても、影に隠れてコソコソやっては危険かもしれません。明るい戸外でやるからこそ変なストレスにならずに済んでいるのだと思います。酒類ゴミの始末は、私にとって断酒環境へのほど良い刺激となり、不要なストレスを軽減する有効な “心理的減感作療法” となっているようです。

 私が推奨するゴミ拾いの効能を掲げておきます。

 ◎ ゴミを単なる不要なモノと見る認知機能の改善
 ● 糖尿病(高血糖)の改善
 ● 社会奉仕とその成果が見える満足感
 ● 運動不足の解消
 ● 無聊(“空白の時間”)の解消(いつでもどこでも実行可能)

 第一に挙げるべき効能は、モノの見方に変化が期待できることと考えています。ゴミ拾いを始めた頃は、ゴミをポイ捨てした人物に対する怒りを抑えることができませんでした。公共心の欠けた無神経さ、始末を人任せにする身勝手さ、甘ったれた根性、人目に付かないよう隠せばよしとする性悪さ、怒りの矛先はゴミに向けたものではなく明らかに捨てた人物に向かっていました。

 それが慣れるにしたがって怒りが嘆きに変わってきました。そして今では、嘆きも大分薄まってきています。何に慣れたのでしょうか? ゴミを単に不要なモノと見ることに慣れたからだと考えています。

 今回ご紹介した飲みかけの酒類ゴミの件についても、単に不要なゴミと見做せるようになった好例だと考えています。
 “ありのままの事実を ありのままに受け止め入れる”



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コメント (2)
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