けさの通勤の電車の中で松井今朝子さんの「吉原手引草」を読み終わりました。
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吉原手引草 (幻冬舎文庫) 価格:¥ 630(税込) 発売日:2009-04 |
いやぁ~、面白かった…。この小説の内容について何の予備知識もなく読んで、ホント良かったと思いました。
これからこの本を読んでみようという方もいることでしょうし、あまり内容を書けませんな。
あらすじ代わりに、幻冬舎文庫版のカバーから抜き書きしますか。
廓遊びを知り尽くしたお大尽を相手に一歩も引かず、本気にさせた若き花魁葛城。十年に一度、五丁町一を謳われ全盛を誇ったそのとき、葛城の姿が忽然と消えた。一体何が起こったのか? 失踪事件の謎を追いながら、吉原そのものを鮮やかに描き出した時代ミステリーの傑作。選考委員絶賛の第一三七回直木賞受賞作、待望の文庫化。
必要十分で過不足無しの、見事な紹介です。
話の筋・展開としては、さんざっぱら引っ張ったあげく、〆が急展開であっさり過ぎる気がしないでもありませんけれど、それでも、吉原に関わる様々な人たちの暮らしや思い、彼ら彼女らに語られる葛城という花魁がよく書き込まれていて、見事に引き込まれました。
作品最後の一行、まさに私も同感です。
いや、吉原で葛城と呼ばれた花魁を、ハハハ、拙者はひと目見たいと願うばかりだ。
作品の中で何度も出てくる格言(?)、「遊女の誠と四角い卵はない」と言われたように、嘘と手練手管と金ばかりがものを言う世界とばかり思われがちな「吉原」という小宇宙を、内側から垣間見る格好の手引書でもあります。
この小説で仕入れたネタをふところに忍ばせて、落語「明烏」「品川心中」「お直し」を聴き直したり、映画「幕末太陽傳」を観直したら、また新しい発見や感慨が沸くかもしれませんな。
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幕末太陽傳 [DVD] 価格:¥ 3,990(税込) 発売日:2002-11-22 |
話を幻冬舎文庫版「吉原手引草」に戻しまして、巻末の「解説」の文末にぎくりとしました。正直、電車から降りるのを忘れそうになりましたよ。
文芸評論家の縄田一男さんによる解説がの2フレーズで締められていたもので…。
かのサン=テグジュペリも言っているではないか-「ものごとはね。心で見なくてはよく見えない。いちばんたいせつなことは、目には見えない」(河野真理子訳)と。
その決して目には見えないもの、すなわち、人の心を追い求めて、松井今朝子は、これからも作品を紡いでいくことであろう。私は、そう確信している。
ぜんぜん意図していなかったけれど、話題がMISIAにつながってしまいました。
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MARS&ROSES (CCCD) 価格:¥ 3,059(税込) 発売日:2004-02-11 |
MISIA好きならご存じの通り、MARS and ROSESに収められている「Little Rose」は、サン=テグジュペリの「星の王子様」にインスパイアされてできた曲で、上記のフレーズも(微妙にことばは違うけれど)引用されています。
もう一度「幕末太陽傳」:09/11/21 キネ旬:オールタイム ベスト10