新・徒然煙草の咄嗟日記

つれづれなるまゝに日くらしPCにむかひて心に移りゆくよしなし事をそこはかとなく紫煙に託せばあやしうこそものぐるほしけれ

葛城花魁に会いたい!~「吉原手引草」読了~

2009-05-19 21:30:19 | MISIA

けさの通勤の電車の中で松井今朝子さんの「吉原手引草」を読み終わりました。


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いやぁ~、面白かった…。この小説の内容について何の予備知識もなく読んで、ホント良かったと思いました。
これからこの本を読んでみようという方もいることでしょうし、あまり内容を書けませんな。
あらすじ代わりに、幻冬舎文庫版のカバーから抜き書きしますか。


廓遊びを知り尽くしたお大尽を相手に一歩も引かず、本気にさせた若き花魁葛城。十年に一度、五丁町一を謳われ全盛を誇ったそのとき、葛城の姿が忽然と消えた。一体何が起こったのか? 失踪事件の謎を追いながら、吉原そのものを鮮やかに描き出した時代ミステリーの傑作。選考委員絶賛の第一三七回直木賞受賞作、待望の文庫化。


必要十分で過不足無しの、見事な紹介です。

   

話の筋・展開としては、さんざっぱら引っ張ったあげく、〆が急展開であっさり過ぎる気がしないでもありませんけれど、それでも、吉原に関わる様々な人たちの暮らしや思い、彼ら彼女らに語られる葛城という花魁がよく書き込まれていて、見事に引き込まれました。
作品最後の一行、まさに私も同感です。


いや、吉原で葛城と呼ばれた花魁を、ハハハ、拙者はひと目見たいと願うばかりだ。


作品の中で何度も出てくる格言(?)、「遊女の誠と四角い卵はない」と言われたように、嘘と手練手管と金ばかりがものを言う世界とばかり思われがちな「吉原」という小宇宙を、内側から垣間見る格好の手引書でもあります。

この小説で仕入れたネタをふところに忍ばせて、落語「明烏」「品川心中」「お直し」を聴き直したり、映画「幕末太陽傳」を観直したら、また新しい発見や感慨が沸くかもしれませんな。

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そうそう、「幕末太陽傳」、すごいです。大好きです。お薦めです。とりわけ落語好きの人間にはたまりません!

   

話を幻冬舎文庫版「吉原手引草」に戻しまして、巻末の「解説」の文末にぎくりとしました。正直、電車から降りるのを忘れそうになりましたよ。
文芸評論家の縄田一男さんによる解説がの2フレーズで締められていたもので…。


かのサン=テグジュペリも言っているではないか-「ものごとはね。心で見なくてはよく見えない。いちばんたいせつなことは、目には見えない」(河野真理子訳)と。
その決して目には見えないもの、すなわち、人の心を追い求めて、松井今朝子は、これからも作品を紡いでいくことであろう。私は、そう確信している。


ぜんぜん意図していなかったけれど、話題がMISIAにつながってしまいました。

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MISIA好きならご存じの通り、MARS and ROSESに収められている「Little Rose」は、サン=テグジュペリの「星の王子様」にインスパイアされてできた曲で、上記のフレーズも(微妙にことばは違うけれど)引用されています。


もう一度「幕末太陽傳」:09/11/21 キネ旬:オールタイム ベスト10

コメント
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