帰りの電車の中で「ルパンの消息」を読み終えたものですから、駅前の本屋に寄って、次に読む本を買ってきました。
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久生十蘭短篇選 (岩波文庫) 価格:¥ 903(税込) 発売日:2009-05-15 |
です。
岩波文庫の「今月の新刊」の一冊が久生十蘭(ひさお・じゅうらん)だなんて、さすがに岩波文庫です(意味不明かも…)。
久生十蘭(1902-1952)の本を読むのはかなり久しぶりです。
最初に読んだのは、「魔都」(現代教養文庫版)でした。1934(昭和9)年の大晦日の夜から1月2日早朝にかけて起こった奇想天外かつ荒唐無稽なできごとが描かれます。文体がまた独特で、講談でも聴いている気がしてきます(久生十蘭は口述筆記だったらしい)。書き出しはこんな具合。
甲戌(きのえいぬ)の歳も押詰まって、今日は一年のドンじりという極月の丗一日、電飾眩ゆい東京会館の大玄関から、一種慨然たる面持で立ち現れて来た一人の人物。鷲掴みにしたキャラコの手巾(ハンカチ)でやけに鼻面を引っこすり引っこすり、大幅に車寄の石段を踏み降りると、野暮な足音を舗道に響かせながらお濠端の方へ歩いて行く。見上ぐれば、大内山の翆松の上には歯切れの悪い晦日の月。柳眉悲泣といった具合に引っ掛っている。
たった二晩のできごと、それもほとんど日比谷~銀座界隈のできごとだけでこんな長編小説を書いてしまうなんて、なんと乱暴なんでしょうか。
私が買った「現代教養文庫」版は、版元の社会思想社の廃業に伴って絶版のようですけれど、朝日文芸文庫から刊行されていますので、ご興味が沸きましたら是非お読みくださいませ。
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魔都―久生十蘭コレクション (朝日文芸文庫) 価格:¥ 1,020(税込) 発売日:1995-02 |
と書いたものの、朝日文芸文庫版も品切れ…。おいおい、です。
【追記】記憶違いが判明しましたので修正しました。(09/05/23 06:14)