おはようございます
昨日に続きまして、患者さん用に症状と疾患についてです。
このblogで患者さんから相談が多い疾患として「悪性リンパ腫」があります。
悪性リンパ腫かそうでないのか・・・というご相談も多くいただきます。
はっきり書くと「調べなければわからない」というのは実際ですが、リンパ節が腫れました・・・というところから、どのような病気を考えていくのかを書いていきたいと思います。
リンパ節腫脹・・・専門用語ですが、要するにリンパ節が腫れました・・・ということです。
患者さんの多く、そして非専門医の半分くらい(紹介されてくる印象)は「リンパ節が目立つ」ようになったら、リンパ節腫脹として対応している印象はあります。
さて、悪性リンパ腫の診断にはリンパ節生検が必須ですが、一般にどういったリンパ節に対してリンパ節生検を行うかというのは、論文などで示されています。
そう行ったこともこの本には書いております(笑。
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一般には
1、リンパ節の大きさが1.5 cm × 1.5cm以上
2、鎖骨上リンパ節(肩の内側あたりです。反応性の可能性が低い)
3、弾性硬(スーパーボールくらいの硬さ)で丸い(一般のリンパ節は楕円形、リンパ腫は丸くなっていく)
4、圧痛なし(炎症によるものならば痛みがある)
5、年齢が40歳以上(リンパ腫の頻度が上昇、ちなみに20歳前後だとホジキンリンパ腫が多いのですが、ホジキンリンパ腫は頸部+鎖骨上リンパ節が多い)
6、全身性(1.5cm以上があって、全身性ならば反応性の可能性は低く、リンパ腫の可能性が高い)
7、B症状(発熱、盗汗:ひどい寝汗、体重減少)があるかないか
をまず考えます。
このblogでも患者さんの経過や大きさなどを聞いて、リンパ腫の可能性などを考えています。
あとは、年齢により好発部位が異なっていたり、色々あるのですが、それは専門家の判断になります。
他に良性疾患でリンパ節がよく腫れるものはなんでしょうか?
一番多いのは「感染症」です。
例えば「虫歯」や「歯周病」を放置しすぎて、感染し・・・その炎症が顎の下や頸部のリンパ節に広がる・・・。よくある話です。僕もたまに起こしたりしました(僕のは虫歯ではなくて、口内炎からなんですけど・・・最近はないです)。
他に足の切り傷から細菌が入って、足の付け根(鼠径リンパ節)が腫れるなどですね。
他にはウイルス感染だと小さなリンパ節が痛くなったりします。腫れてはいないのですが、痛いので心配になって受診される方が結構います(ちなみに、大学病院に直接来た方は・・・ほとんど紹介状なしで、自身で心配が強くなって受診されています)。
有名なウイルス感染として「伝染性単核球症」があります。有名なEBウイルスの初感染で起きます。kissing diseaseという通称もありますが、唾液などを介した経口感染です。そのため、思春期や若い方が多いのですが、結婚されている30代とか40代でもいましたので、若い人だけとは限りません。
一般に発熱は95%の方に5〜21日の間生じ、リンパ節腫脹は80%の方に21日ほど生じています。
ちなみにこの病気には思い出がありまして、僕が医学生時代にネット小説を読み歩いていた時期がありまして、その作者の方がこれになりました。更新されないので、掲示板を見てみると発熱、リンパ節腫脹、肝機能障害で近くのクリニックにかかっているけど、改善しないと。
で、症状から「伝染性単核球症だと思いますよ」と書いたら、調べたところそうだったということで、「医者ですか?」と聞かれて、「医大生です」と答えたようなことがありました。
この方とはその後に実際にお会いするようにもなり、結婚式の二次会に招待していただきました。医療従事者になられていて、働いている施設の代表の方に「年2000万でうちに来ませんか?」と言われましたが、お断りしました。当時は年収900万くらいでしたけど、医師という仕事が面白かったので・・・暇そうな仕事には行きたいと思わなかったです。やりがいの問題ですね。
他、若年女性で有名な病気として「菊池病(壊死性リンパ節炎)」があります。77%が女性で、発症年齢中央値は30歳、頸部リンパ節腫脹が90%で有痛性のリンパ節が数珠繋ぎになっていることが多いです。3ヶ月くらいで改善しますが、なかなか改善しなければリンパ節生検をすることになります。
良性疾患で他に有名なものはCastleman病やIgG4関連疾患、サルコイドーシスなどもリンパ節が腫れます。この3疾患は診断に政権が必要ですし、概ねリンパ腫の鑑別の中に含まれてしまいます。
悪性疾患ですが、他の悪性腫瘍の転移という可能性もあります。そういう患者さんも何人もいました。この場合は診察すればわかるのですが、先に細胞診などを出す場合が多いです。悪性腫瘍と思ったらリンパ節結核だったこともありますが・・・。
一般の患者さんが「リンパ節が腫れてリンパ腫じゃないかと気になる」場合のポイントは次の点だと思います。
1、大きさが1.5cm以上なのかどうか、形と硬さは
リンパ節の正常範囲は1cmまでとされています。僕も1cmほどの大きさのまま変わっていないリンパ節が1つありますが、1.5cm以上の大きさならば、まず受診するべきです。加えて形が丸い印象であれば(丸いのが2つ、3つ繋がっている場合もあります)、やはり生検を検討します
2、痛みがあるのか
痛みがある場合は基本的には悪性腫瘍の可能性は低いと考えます。あまりに急速に大きくなってきているとリンパ腫でも痛みが出ることはありますが、その場合は次の項目に書きますが、大きくなる速度や大きさで引っかかると思います
3、大きくなる速度はどの程度か
一般には週単位で大きくなる「高悪性度」や月単位で大きくなる「中等度」の2つをaggressive lymphomaとして積極的な治療の対象とします。年単位でしか変わらない場合、悪性だとしても低悪制度リンパ腫の可能性が高いです。その場合、治療介入するかどうかも検討の範囲に入りますので、多少の診断の遅れがあったとしても、その後に影響はほとんどないです。高悪性度や中等度悪性度のリンパ腫の場合、初発部位がどんどん大きくなるので、おそらく1ヶ月もすると1.5cmを超えてきているのではないかと思います(高悪性度の場合、1ヶ月後には命に関わるので、すでに症状が出ていて受診しているはずですが)。ぐんぐんお大きくなるようなものは病院に早めに受診した方が良いと思います。
逆にあまり変わらない・・・というのはリンパ腫かどうか迷うところです。
多分、この3つを念頭におくのが一番良いのではないかと思います。多くの方の参考になれば幸いです。
いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。