さて、月曜日の読売新聞の記事で・・
流石に「これはまずいだろう」と思ったのはこちら。
法医解剖「1人で年284件」
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=29423
異状死究明、大学頼みに限界
死因究明のために警察当局などの委託で行う法医解剖を、2009年に100件以上担った大学が21校に上ることが、読売新聞の調査でわかった。
スタッフは減少傾向だが、件数は年々増加。解剖医1人が100件以上を担当した大学も10校あり、秋田大(秋田市)では1人で284件を解剖していた。犯罪の見逃しを防ぎ、正確な死因究明が求められる中、教育・研究が使命の大学に依存する制度は限界に近い。
法医学教室・講座がある79校を対象にアンケートを実施し、60校の回答を得た。09年の解剖数を回答したのは50校で、計5593件。100件以上を担った21校のうち、杏林、秋田、東北、大阪、岡山など7校は200件以上だった。
今年は4月末現在で計2243件と、09年を上回るペースだ。
04年以降の推移を答えた44校に限っても、09年は5235件で04年の4343件から892件増。この間、解剖医の数は1人減の74人となり、解剖の補助や薬物検査、書類作成などを担う常勤スタッフも203人から192人に減った。
秋田大では、04年に3人いた解剖医が09年は1人となったが、件数は126件から284件と倍以上に。東京・多摩地区の拠点となる杏林大(三鷹市)は、解剖医が1人増の3人となったが、82件から320件と約4倍になった。
法医解剖
明らかな病死や老衰を除く「異状死」が対象。犯罪捜査が目的の司法解剖、公衆衛生などのための行政・承諾解剖がある。監察医制度がある東京23区と横浜、名古屋、大阪、神戸の4市を除き、大学が担う。警察庁によると、2009年の総数は1万6184件で1999年の1・6倍。それでも、09年の異状死解剖率は10%と先進国では最低。
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法医解剖、大学に重荷
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=29422
教育にシワ寄せ、公費求める声も
「今のままでは、法医解剖システムは10年後に崩壊する」――。
大学の法医学教室を対象に行った読売新聞のアンケート調査から、大学が「社会貢献」として担う制度の危機的な状況が浮かび上がった。
関係省庁は死因究明制度の改革に向けて動き出しているが、解決すべき課題も多い。(中部社会部 小川翼、地方部 早川悦朗)
2007年に愛知県で起きた力士暴行死事件で注目された死因究明問題。この1年でも埼玉、鳥取の不審死を巡る捜査などで、関心が高まっている。
東京都は、パロマ工業製湯沸かし器による一酸化炭素中毒死が、各地で「病死」などとして見逃されていたことが発覚した06年、死因究明の重要性を再認識した。
東京・多摩地区の異状死解剖率は、06年まで23区の5分の1程度だった。23区は専従の法医学者らによる監察医制度があるが、多摩地区は大学に解剖を頼るために生じた格差。都は、厳密な死因究明のために大学に一層の協力を要請。06年に281件だった多摩地区の解剖数は、08年に840件に増えた。ただ、複数の大学があり、解剖医も多い東京はまだ恵まれている。
現場の悲鳴
青森県の法医解剖を一手に担ってきた弘前大(弘前市)の教授が体調不良などを訴え、受け入れを休止したのは昨年11月。「1人で担うのは心身の負担が重く、正確性を維持する自信がない」との理由からだ。県警は必要が生じるたびに岩手医大(盛岡市)と秋田大(秋田市)に遺体を運ぶ。弘前大は解剖医の補充を検討中だが、解決のめどは立っていない。
佐藤敬・弘前大大学院医学研究科長は「地域貢献は大事だが、本来は行政の仕事ではないか」と本音を漏らす。
代行する他大学も深刻だ。
「社会のために頑張らねばと思うが、僕は超人ではない」。
岩手医大の出羽厚二教授はため息をつく。ここも岩手県唯一の拠点。昨年は解剖医2人で187件だが、今年は6月末で104件。4割近くが青森分だ。今春、もう1人の解剖医が海外留学した。「臓器の組織検査などを担う職員らも限界」と心配する。 佐賀県や広島県でも07年以降の一時期、解剖医が不在だった。国内の解剖医は130人程度で、昨年の解剖実績を答えた50校中28校では解剖医は1人。他の大学でも2~3人でやりくりしている。
人材確保の壁
司法解剖の場合、薬物や組織検査、鑑定書の作成などを含め1件で2~3か月かかることもある。大学の本来の使命である教育や研究の時間が奪われている。
大半の大学が現状に危機感を抱いているが、一方で国公立大の法人化などで大学には「採算性」が求められている。法医解剖は、委託した警察や都道府県が大学に実費を払うが、「教育・研究という大学の本務ではない。人件費や機器購入費も国や自治体などが負担すべきだ」(岡山大)などの声が根強い。調査では、全大学が公費負担の強化を求めた。スタッフ増員計画は60校中49校が「ない」、2校は「削減予定」と回答。人材の確保・育成策を国などに求める声が相次ぎ、「なし崩し的に大学任せにしてきた」との指摘もあった。
法医は開業の道もなく、圧倒的にポストが少ない。琉球大法医学教室には大学院生2人がいるが、教員ポスト(教授、准教授、助教各1)は埋まっている。佐藤良也・医学部長は、「やる気も資質もある学生は、隣県に応援を頼めない沖縄には貴重だが、どうにもできない」と嘆く。打開策として、「国による解剖・検査の専門機関を設ければ、ポストができ、人材育成も行える」(名古屋大)という提案もある。
異状死解剖日本10%どまり…遺族・社会への国の説明重要
異状死の解剖率は、フィンランドやスウェーデンの100%、英米豪の50~60%に対し、日本は先進国最低の10%(09年)にとどまる。日本法医学会理事の岩瀬博太郎・千葉大教授は「他の先進国では、死因究明が国民の安全や健康の維持、遺族の権利を守る公共サービスとの考え方が浸透している」と説明。「『解剖好き』の国民などどこにもいない。死者や遺族、社会のために重要だと国が国民に説明し、信頼を得たかどうかの差だ」と話す。
米国などでも80年代までは、検死官や監察医に対する偏見や死因究明を軽んじる風潮があった。しかし、殺人事件の見逃しや医療技術の進展を契機に、解剖や各種検査体制の充実、法改正が図られた。
日本でも対策を模索し始めている。文部科学省は今年度、長崎大や山口大、東北大の協力を得て、解剖医や薬物検査の専門家を育成するプログラムを開始。厚生労働省も、コンピューター断層撮影法(CT)などによる遺体の画像診断を活用する検討会を設置した。関係省庁や法医学者、刑法学者らを招いた研究会を設置した警察庁が7月に公表した中間報告では、「5年後をめどに解剖率を現在の2倍の20%(将来的には50%)に引き上げる」とした。解剖医の増員や施設拡充、公費負担強化に向けた予算確保を検討するという。
しかし、ある厚労省幹部は「法医よりも臨床医不足の解決が先という空気が省内にある」と明かす。警察庁幹部も「各省間で温度差がある」と語る。省庁間の連携が成否のカギを握る。 (2010年8月16日 読売新聞)
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臨床も法医学も基礎も・・・基本的に限界に達しつつあります。
何を優先し、どこまで区分けをし、何を共同して行うのか。考えることはいろいろあると思います。
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しかし、本当に余裕のない国だと思います。
それでは、また後ほど