新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

「抗がん剤のやめどき」を読んだ感想

2015-03-05 11:31:15 | Weblog
こんにちは。

現在、造血幹細胞移植学会に参加するため、新幹線で神戸に向かい移動中です。

神戸に行くからではありませんが、途中の読み物として、長尾和宏先生の「抗がん剤 10のやめどき」という本を読みながら移動中です。

近藤医師の本と異なり、購入して読む価値があると思いました。なかなか参考になると感じました。

僕は年は若いのですが、何故か緩和ケア的な事をする機会も多く、似たような経験もいろいろしております。

ただ、血液内科という分野ではここの記載と異なる考えで動いています。

例えば悪性リンパ腫に対するCHOP±Rという治療は標準治療です。これより強い治療はありますが、この治療で治る人がそれなりに多いため、再発時に行う治療法と差がつきません。

ですので、悪性リンパ腫の再発であればより強い治療を行い、自家末梢血幹細胞移植を行い治癒を狙います。

まあ、そういうことでどういった患者さんに標準治療より強い治療を最初から実施した方が良いかというのも研究されています。

そういえば解析して気がつきましたが、うちの大学、年間100人近くリンパ腫来るのに再発少ないから、自家移植の件数少ない気がする。あと高齢者が多いからか。

話を戻しますと、本の中でファーストラインよりもセカンド以降の方が根拠が少なく、抗がん剤を止めるのを検討するというのは、少なくとも70歳以下の血液疾患の患者さんには当てはまらないかもしれません。

もちろん、個人個人によりますが。

あと、治療スケジュールを多少広げても構わないという内容があります。
これに関しては継続可能でなくてはいけませんが、完治を目指す治療ではスケジュール通りがよいです。

リンパ腫でもスケジュール通りに行えなかった場合の治癒率の低下は論文にもされています。

確かに緩和的に行う場合、個人個人によって治療の仕方を変えます。

昨日も、リンパ腫に対して内服治療を行っている再発した高齢のリンパ腫の(まあ、すごく良い感じに改善して、自宅に帰って更に元気になられたようですが)方に、
「これ以上は増やせないかな。もしかすると内服が続けられるように、1日か2日、抗がん剤の内服期間を減らして、休薬期間を延ばす方がよいかも」
と、言ったりしています。

ここら辺の微調整は結構得意かもしれません(^^;;

長尾先生の本は非常に参考になると思いますが、やはり全てに適応できるわけではないと思います。

ただ、抗がん剤のやめ時は非常に重要です。血液疾患でもあてはまると思います。

カンファレンスで
「医者の自己満で抗がん剤を適当に続けるな!引き際考えろ!」
と、後輩を怒鳴ったこともあります
(続けたわけではなく、サードラインも全く効かず、SDにもならなかった時に更に何か治療をしたいと言った時の話です。患者さんの治したいという気持ちに寄り添ってはいるのかもしれませんが、逆に専門家はメリットとデメリットをきちんとしめさないといけませんので)

あー、ある先輩ドクターから「言い方考えろ」と言われそうだ。声が聞こえてきそうだ>_<

携帯からの更新のため、これで終わります。

もうすぐ京都です。さあ、学会頑張ろう
コメント (6)
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