新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

勤務体制と過労状態:安全な医療はどこにある?

2010-08-08 18:29:22 | 医療

さて、続けます。

 

うちは血液内科の臨床チームとしては極端に人数が少ない(少数精鋭と言えば聞こえがいいですけど、数が多いに越したことはありません)医局です。

 

今朝、当直交代の時に今日の当直の先生と話をして

 

「今、血液内科と神経内科だけになってしまいましたが、この二つの診療科で合わせて10名弱しかいない。この人数だと普通の大学の神経内科や血液内科、どちらか片方だけの人数と同じです。

病院側は死ぬ気で限界まで働けといっているんですかね? 研修医もなぜかうちに配属された人数もとられてしまって・・・」

 

「ごもっとも。せめて研修医だけでも増やしてくれれば、若干楽になるのだけど。」

 

「良くやりますよね、先生も。いくら患者さんに不利益がかかるっていっても、僕だったら自分のことを優先してますよ

 

「そんなこと言ったって、もしこれで俺が辞めたら病棟も外来も崩壊するぞ?入院診療ができるからこそ、外来も継続できるのだから。

ここの患者さん、俺だけでも150~200人近くの患者さんを診ていて、全体では数百人になろうかという患者さんが診療できなくなって、他の病院に送ることになったらどうする。地域全体が崩壊するぞ?

 

「いや、だからそういうことまで良く考えますよね?」

「そういうものか?」

 

こんな感じの会話をしていました。

 

「血液内科を30床にするという噂は本当ですか?」から始まったのですけどね。

 

今、病棟の看護師さんも数が少なくなり、さらに新人さんが増えてきたため守備力が非常に低いです。それは本当に大きな問題ですが、そこにさらに患者数を増やされると大変なことになります。

 

うちの入院患者さんの主体は「骨髄移植を念頭に置いている人」「急性白血病」「悪性リンパ腫のサルベージ→自家移植」などで構成され、そこに外来でなんとか粘っている患者さん達の悪化に対して対応している感じです。

 

本当は関連病院とかがあればよいのでしょうけどね。

 

ともかく、疲労が格段にたまりやすい状況にあるわけです。

 

有名な話ですが「Nature」の1997年の論文では24時間ずっと起きていることは「アルコールの血中濃度0.1%と同レベル」まで行動機能レベルを下げるといわれています。

 

これは長時間の勤務を続けた場合だけではなく、長期にわたって睡眠時間を奪われていることが「Sleep debt」と呼ばれる状態になり健康を損ね、疲労状態に陥る

 

研究では1週間に5時間睡眠で活動していた時と24時間眠らなかったときは、同レベルの行動機能レベルを引き起こすとされています

 

僕は学生時代から「3~4時間睡眠」で良い人間でした。しかし、それは良質の睡眠を取れるからであって…

 

今のように夜中にも電話が鳴り、浅い半覚醒状態が継続する状態では「3~4時間」では体がもちませんでした

 

というより、寝れるときは寝たいと思います・・・(汗

 

 

アメリカでは2003年にレジデントの週勤務時間を最大80時間、連続勤務の上限を30時間(汗)、週に1回は休日とするようにと定めた。当然ながら根拠があるわけではないのですけど、それでも勤務体制の問題は患者や社会の安全に支障を生じるという判断なのでしょう。

 

それを考えると「我が大学病院」の勤務体制は常軌を逸しているの一言に尽きるとは思う。

日本全体もそうなのですけどね

 

 

それは「さかのぼり」続ければ、どこが問題かは自明なのですが・・・しかたありますまい。

 

同様に看護師も過労状態が続いているわけで・・・。

 

うちの教授は「看護師の超過勤務体制を改善するために、少しでも協力しなくてはならない」といっていますが、協力できるところはするけど…急変が多いから限界があるだろう・・・と思うところもあって(汗

 

 

最近7対1看護…というのがはやっていますが、恐らくペンシルヴァニア大学のAiken教授による(JAMA 288 1987-93)

1、1人の看護師が7人以上の患者を担当すると死亡率が31%上昇する

2、看護師の担当患者数が1人増えるごとに患者の死亡率は7%ずつ増加する

3、患者の数が一人増えるごとに看護師の不満は23%、Burn outは15%増加する

 

という文献によるのでしょう。

 

 

先程、コメントにも書きましたが「日勤」の勤務者が0時過ぎにまだ病棟にいて、そして彼女はこの後、21時から勤務です。

看護師さんは「患者さんを直接看ている」状況ですので、彼女(彼)らの力は病状が悪化するのを防ぐために非常に重要な立場にいます。

そのことを認識していない人間は、現場には必要ないのかもしれません。

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その一方、医師の「担当患者数が一人増えるごとに・・・」という調査はみたことがないです。しかし、日本という国の医師が実際にみている患者さんの数は非常に多い。

 

僕らみたいな「血液内科」の医師は、どちらかというと「重症患者」「全身管理が必要な患者」を担当しているため、本来は医師数がかなり必要なわけです。

 

そう言ったことも含め、「これからどうなるのやら」という話を二人でしていました。

 

今の日本では「これら」のことを達成することは不可能なのでしょうけど、達成すべく頑張るしかないのでは…と思ったりします。

 

それでは、少し休憩に入ります。

 

では、また。

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ど~でもいい話:僕と点滴の刺し方

2010-08-08 17:37:40 | Blogを書く理由

こんにちは

 

当直から帰って、また病棟行って、そして帰ってきました。

 

今週は火曜日土曜日と2回の当直がありましたが、大きな問題もなく無事に終わりました。良かった、良かった。

 

 

先程、研修医の先生にルートの取り方を教えていました。

 

僕が話したのは単純なことですけど、3つ。

 

1、刺す前に失敗しなさそうなところを、良く探しなさい

2、点滴の針の根元で持つのではなくて、もっと離れた場所を持ちなさい

3、角度をもう少し浅くしなさい

 

 

1は当たり前ですが、末梢の点滴でも、中心静脈穿刺であっても穿刺部位が重要です。

 

僕は何となく「この辺でしょ」とばかりにやりますが・・・、一応患者さんごとに鎖骨の厚さ、皮下の厚さなどを考慮して、刺す位置を決め・・・だいたい穿刺針の根元付近で鎖骨下静脈に当たるようにしています。

 

点滴でも同様で、僕みたいに「駆血帯は不要では?」という人間でも、刺す場所は考えないと失敗する人もいます。

 

実際、20Gで貫かれたし・・・・(汗

 

 

2は本当のギリギリの部位(外筒の根元付近)を持っていたので…ちょっと待てと・・・。一回目は僕の手に刺させましたけど、やはり失敗しますね(汗

 

3は角度が浅いほうが、当然血管を貫く可能性は低くなります

 

そう言った話をしながら、2回だけ練習をさせてあげました。2回目は入りました。

 

点滴の針を刺されたおかげで、眠気が吹き飛びました(w

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当直室は眠れないんですよね

 

 

昨日も0時付近に患者さんきましたし、2時~3時にも病棟のほうで起こされましたし・・・。

 

 

話は変わりますが、普通の点滴は研修医のころが一番うまいと思います(通常は)。

 

研修医のころは点滴の針をさすのに自信があって

「どんな患者さんにも20Gで点滴入れてみせます」

などといっていた時期もありましたが、最近はそれほど点滴をとる機会も多くないので、昔ほどの自信はないですね

 

僕の点滴の刺し方は「長い針」のほうが有効なので、20Gのほうが望ましいのですけど、最近は自信のなさも相まって22Gで針を刺しますね。だから、良くないのかもしれませんが(w)

 

 

ですから難しい感じの方だと「中心静脈穿刺(鎖骨下静脈)」のほうが早いです。

 

早ければ準備含めて20分くらいで終わりますし・・・。 もっとも、100%とは当たり前ですが言えませんけどね。

 

今年度は数十件刺していると思いますが、それは完勝です(v^^)

 

それでは、今から今日の記事の内容を考えてみたいと思います。

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年功序列と能力制度:織田信長は天才ですね

2010-08-01 20:09:58 | Weblog

こんばんは

今日も一日が終わりました。

 

皮膚科の先生に日曜日ですが皮膚生検を依頼し、やってもらったのですが、その時に

「血液内科は休むチャンスはないね」

といってくださいました。日曜日にお願いしたわけですが、事情を知って心よくやってくださいました。

 

ありがたい話です。

 

さて、この記事を読んだときに「織田信長は天才だね」と思いました。

 

<公務員制度改革>官邸、官僚人事崩せず 今夏も年功序列、改革は後退

8月1日15時0分配信 毎日新聞

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100801-00000002-maiall-pol  

 

民主党政権となって初めての本格的な府省幹部人事がほぼまとまった。幹部人事を「内閣人事局」で一元管理する国家公務員法改正案が通常国会で廃案となったが、現行制度でも可能な民間人起用や府省間交流など「政治主導」人事を一部で試みた。ただ、7人の新事務次官はほとんどが「霞が関」の慣行に従った年功序列の順当人事根絶するはずだった天下りも「現役出向」の形で事実上容認するなど、公務員制度改革が後退している感は否めない。【編集委員・中川佳昭、三沢耕平、葛西大博】  

 

国家公務員法改正案が成立していれば、内閣人事局で府省の部長級以上約600ポストの幹部候補者名簿を作成し、次官から部長級への降格も含む府省の垣根を越えた人事を首相ができるようになるはずだった。  

 

菅内閣はこれに代わり府省間の交流人事を拡大。01年の省庁再編後初めて局長級以上で実施し、文化庁長官に外務省から駐デンマーク大使の近藤誠一氏が就任した。近藤氏はユネスコ(国連教育科学文化機関)日本政府代表部の大使時代、石見銀山(島根県)の世界遺産登録を実現させた手腕が評価された。外務省との交流人事の形をとったが、川端達夫文部科学相の「一本釣り」に近い。財務省関税局長と経済産業省貿易経済協力局長の交流人事も行われた。  

 

事務次官人事では、財務省の事務次官に「本命中の本命」とされてきた勝栄二郎主計局長が就任。菅直人首相は財務相だった今年4月、「財務省が変わるための提言」として「年次にとらわれない抜てき人事」を掲げたが、政務三役の一人は「人事を覆そうと思っても、幹部一人一人の能力や適性を把握できていないので難しい」と官の秩序に切り込めなかったことを認めた。  

 

経産、外務、厚生労働、農水各省の事務次官人事も順当。文科省では旧文部省と旧科学技術庁の出身者が交互に次官を務める「たすき掛け人事」が今回も継続。天下りあっせん禁止で幹部職員の退職が進まなくなった余波もみられ、国土交通省では72年入省組の次官が4代続く異例の事態となる。  

 

政治主導の「乱用」と批判されているのが、子ども手当の制度設計を担当した厚労省雇用均等・児童家庭局長を独立行政法人の研究員に出向させた人事。従来は部課長級に用意されてきたポストで、子ども手当の外国人への支給問題で長妻昭厚労相の不興を買った「左遷」と省内では受け止められている。  

 

◇「まるで高齢職員の失業対策だ」 

 

元審議官、天下り存続を批判  「この夏、霞が関で起きていることは壮大な高齢公務員の失業対策だ。何としても公務員制度改革を逆行させてはならない」。7月27日夕。経産省大臣官房付の古賀茂明氏は首相官邸近くのレストランで開かれた知人のパーティーでこう訴えた。  

古賀氏は1980年に旧通産省入省。08年7月~09年12月まで、国家公務員制度改革推進本部事務局の審議官を務め公務員制度改革の急進派とされていた。政府は6月22日、退職管理の基本方針をまとめたが、天下り禁止により滞留する公務員を処遇するため、専門スタッフ職の設置や独立行政法人・公益法人への出向拡大が盛り込まれた。古賀氏の「高齢公務員の失業対策」との発言は、基本方針への痛烈な批判だった。  

 

民主党は衆院選マニフェストで天下りの受け皿となっている独立行政法人や公益法人を原則廃止し、「肩たたきを禁止して定年まで働ける環境を整備する」と公約。一方、総人件費の2割カットも掲げたため、天下りできずに滞留する高齢公務員の処遇に頭を悩ませていた。  

基本方針は「公務で培った知識・経験を他分野で活用する」として、独法、公益法人などへ「出向」させるとするが実質的な天下りだ。天下りの最大の弊害は官民癒着や無駄な事業の温床になることで、事業仕分けでは現役官僚の出向を廃止する判定が相次いでいた。基本方針は、こうした判定にも逆行する。  古賀氏に6月末、民主党が禁止を公約していた「肩たたき」(早期退職勧奨)が望月晴文事務次官から行われた。「君、民間(企業)に出向してくれないか。給与水準も下がらないから」。官僚の天下りを痛烈に批判してきた古賀氏にとって「現役の民間出向は形を変えた天下り」にほかならない。7月5日の話し合いで古賀氏は残留を求めたが、望月氏は「今の民主党政権では君の居場所はないんだ」とつれなかった。結局、古賀氏は「民間出向は受けられない。自分で再就職活動します」と返答。望月氏は「もう私も君をかばいきれない。路頭に迷うなよ」と語るだけだった。  

 

政府は7月6日、審議官の出向を容認する人事院規則の改正案を全府省に配布した。2人の話し合いが決裂した翌日だった。「私を追い出すのを念頭に置いた改正だったのでは」。古賀氏はそうつぶやいた。

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織田信長は尾張の一大名から全国統一を目指せる位置に勢力を拡大させたわけですが、見事に能力制と年功序列を組み合わせましたよね。

 

戦国時代も「年功序列」というよりも家系が重視されていたわけですが、信長は「木下藤吉郎」「滝川一益」などを重用していますし、途中参加の「明智光秀」も含め、能力の高い人間には「権力」を与えて、自由な裁量を与えています

 

一方で古くからいた「家老」達にはほどほどに年功序列で「給料」「立場」を与えています。

しかし、自由な裁量は与えていません

 

 

そしてよく思うことがあります。

それは・・・時代によっては必要とされる人材は異なるということです。

 

 

もちろん、三国志で有名な曹操などは「治世の能吏、乱世の奸雄」と言われる人間ですが、そのような英雄がそんなにいるわけもなく・・・

 

今は「能吏」ではなく、新しい何かを作り出す能力を持った人間が必要とされているわけですが・・・それができるかどうか。

 

 

僕が過去に知った人間であれば「勉強」はできない…どころか「まったくしない」、俗にいう不良のボスだったやつですけど、「こいつは天才肌だ」と思った人間がいます。

同級生にも「勉強はあまりしないけど、天才だなこいつは・・・」という人もいます。

 

おそらく、そう言った人間を見つけ出し「抜擢」する能力を持った人間が上に立つかどうかが…日本が変わっていくのに必要なのでしょうね

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なかのひと 

 

では、また。

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