消失したブログのリメイクです。
ママチャリで“谷根千”に通い始めた頃、一冊の画集に出逢いました。
そこにはほぼ毎週通っている街がモノクロの世界に再現されている事に感動して迷わず買い求めました。
しかも作家の杉山八郎先生(以下先生)は、根津に生まれて根津に住んでいるらしい・・・。
一気に親近感が湧きました。
以来地図と一緒にママチャリの買物カゴに入れて、ペン画の現場を探すのが週末の日課になりました。
しかし、現場に行っても多くの家が見つかりません。
123ページに及ぶ画集の1/3程度しか行き当りません。
数十年来、下町の変遷は著しく、一般の民家はもう取り壊されてしまっています。
建物の古さが集客の手段に成り得る、商家が比較的多く残っている。
やっと見つけた現場に到着すると、画集と見比べて「このアングルから描いたんだな」と確認し、「季節は冬で、日差しは夕方だろう」と推察し、「このアングルの方が良いんじゃないか」と幼稚な対抗心から思い上がった批評家になってます。
そして、先生と同じ世界を共有できた満足感に浸ります。
概して画家は眼前の対象をデフォルメし、対象物の配置を変えて、自分好みの作品に仕上げるのだが、先生は確かなデッサン力で驚くほど忠実に描いています。
実直な人柄を連想します。
やっぱり先生に会いたくなりました。
根津の裏町を探してみます。
すぐに見つけました(現在この家は取り壊されてマンションになっており、杉山家は1本隣の路地に引っ越しています)!
これ程分かりやすい家もありません。
以来、毎年カレンダーを買いに訪問するようになりました。
先生は町内会の会長を務めていて、よく公用で根津の路地を歩いています。
先生を見つけると必ず先回りして、偶然出逢った風を装い「あ、先生こんにちは」と挨拶します。
こうして強引に“数年来の知人”にしてしまいました。
先日は大きな梨を貰って恐縮し、一方で友人に自慢しました。
先生は人柄がにじみ出たいい顔をしています。
こんな年寄になりたいと思います(先生はもう故人におなりです)。
先生は町内会会長なので、「根津千駄木・下町祭り」と「根津神社の祭り」には必ず寄付をされます。
先生は商売熱心で、お祭りには必ず露天を出してカレンダー・絵葉書等を販売します。
先生は・・・、そろそろ画集の現場を紹介しないと、いつもの様に冗長な駄文になってしまいます。
それでは画集の1ページ目から。
≪神田須田町≫
・あんこう鍋屋「いせ源」
あんこうが苦手なので店に入ったことはありません。
・隣にある鳥すき屋「ぼたん」
いい感じの古さです。
・向いの甘味処「竹むら」
負けていません。
・「神田やぶそば」
年越しそばの報道に必ず登場します(この店舗は火災で焼失しました。今は新しい店舗で復活しています)。
・蕎麦屋の「まつや」
神田祭の日に小粋なうちわを貰いました。
≪佃島≫
・「超高層マンションと舟溜まり」
古い町並みと近代的な高層マンションの共存が好い場所です。
・「佃3丁目の雑貨屋」
高層マンションの向いで今日も老夫婦が店を守っています。「がんばれ!」
(この店舗はご主人がなくなられた後、取り壊されました。)
・佃島から見る「聖路加タワー」
こういった近代ビルは先生の作品には珍しいです。
・佃煮屋「田中屋」
この一角に3軒の老舗佃煮屋があります。
先生はここが好みのようです(この店を主体にした絵が多い)。
私も影響を受けて、よくこの店で買います。
次回に続きます。