おにぎり2個の里みち歩き 農山漁村の今昔物語

おにぎりを2個持って農村・山村・漁村を歩き、撮り、聞き、調べて紹介。身辺事象もとりあげます。写真・文章等の無断転載禁止

なに、なさってんですか76  ホーレンソウに被せてる

2012年12月14日 00時00分00秒 | 農業

写真1 ホーレンソウ畑に蒲鉾型ビニールトンネルがあり、その脇に細い棒が立ち、男性が作業中


写真2 ホーレンソウを6条ほど植えた畝の上、化学製品の細い棒を半円状に曲げて地に刺し、ビニールを被せる。


写真3 被せ終えたビニールが強風にパタパタ音をたて、はためいている。


写真4 被せたビニールの外に化学製品の細い棒を立てる。


写真5 ビニールの外に立てた化学製品の細い棒を半円状に曲げて地に刺し、ビニールを外から押さえる。


写真6 ビニールは内と外の2本の化学製品の細い棒で押さえられ、寒風にも吹き飛ばず、ホーレンソウを守る。


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 定路を歩いていると、約100m先のホーレンソウ畑で作業中の男性(写真1)。
 猛禽類の写真を撮り終え、作業中の畑へ行き、なに、なさってんですか、と声をかける。
 作業中のNさんは、忙しいのに手を休め、次のように教えてくださる。多謝。

1.寒波襲来でホーレンソウの伸びが悪く、ビニールを被せてる
  ここ数日、日本海側は大雪、当地も急に寒くなり、ホーレンソウの伸びが悪く、あわてて被せている。
  以前は、被せたビニールを紐で押さえて、紐が切れていた。
  しかし、今、支柱(化学製品の細い棒)で押さえるので心配ない。
  この時季、風は強い方が良い。
  風で雲が飛び去り、日照時間は長くなり、紫外線も強くなり、ホーレンソウには良い。
  また、風が吹くと畑の土も乾く。
  土が乾き気味にならないとホーレンソウの育ちは悪い。

2.寒波襲来の今、値が良い。しかし、作り過ぎると値崩れ
  急に寒くなり、ホーレンソウは品物が少なく、近年になく値が良い。
  ふだんは、農家止めようかと思うくらい安い。
  ホーレンソウは、今高値だからたくさん播く。
  しかし、伸びて出荷する頃安くなる。
  育ち過ぎても良し悪し。
  大量に出荷されると価格が安くなる。
  安いときは1袋5円、平均70円。
  出荷経費は30%。段ボール、JA手数料、市場手数料など。

3.露地野菜が主、ビニールハウスでは作らない
  筆者は団塊世代。
  Nさんは10歳ほど若い。
  農業専従で、働き手は母親と2人。
  アルバイトを雇うほど儲からない。
  露地野菜を3haの畑に作る。
  夏、空ける畑もある。
  「細かいもの」、すなわち手のかかる野菜なので面積をこなせない。
  メインは秋や冬の野菜。
  ホーレンソウ、ニンジン、ショウガ、ネギ、ダイコン、ブロッコリーなど。
  野菜は天候不順などで作付けの10%は売り物にならない。

  今は昔の人にくらべて手間をかけない。
  こんな寒いとき、外に出て来てやるのは大変なので、今の若い人は施設、ビニールハウスをやる。
  しかし、イチゴ農家は大変。
  単価は下がるのに、油、ビニール代など何でも上がっている。
  そのため、規模拡大し、パートさんを雇っている。

4.販売先は複数、JAだけではない、スーパーにも出す
  ホーレンソウなど野菜の出荷はJAとスーパー。
  数ヵ所のスーパーに、地場産コーナーを設けてもらい、自分で持って行く。
  はける量は少ないが、安定している。
  日銭を稼げる。
  値が高いときはJAに出すのが多い。
  スーパー以外の直売所には出荷してない。
  スーパーはライバルの成功を見て、農家に声をかけて来る。
  逆に、スーパーへ売り込みに行く農家もある。

5.TPP以前の問題、農家がいなくなる
  あと3年で、ここらは変わる。
  農業する人がいなくなる。
  今、70歳代後半の人が農業やっている。
  今のように動けなくなる。
  若い人は勤めに出て、農業をやらない。
  Nさんがビニールを被せている畑は親戚から借りている。
  親戚が作らないので。
  この周りの畑は、所有者が作っているのでなく、Nさんのように借りて作っている方が多い。
  TPP以前の問題。
  TPPに参加しても、しなくても、その前に農家がいなくなる。

 執筆・撮影者:有馬洋太郎 撮影年月日:2012年12月09日 撮影地:栃木県下野市
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