
写真1 ホーレンソウ畑に蒲鉾型ビニールトンネルがあり、その脇に細い棒が立ち、男性が作業中

写真2 ホーレンソウを6条ほど植えた畝の上、化学製品の細い棒を半円状に曲げて地に刺し、ビニールを被せる。

写真3 被せ終えたビニールが強風にパタパタ音をたて、はためいている。

写真4 被せたビニールの外に化学製品の細い棒を立てる。

写真5 ビニールの外に立てた化学製品の細い棒を半円状に曲げて地に刺し、ビニールを外から押さえる。

写真6 ビニールは内と外の2本の化学製品の細い棒で押さえられ、寒風にも吹き飛ばず、ホーレンソウを守る。

定路を歩いていると、約100m先のホーレンソウ畑で作業中の男性(写真1)。
猛禽類の写真を撮り終え、作業中の畑へ行き、なに、なさってんですか、と声をかける。
作業中のNさんは、忙しいのに手を休め、次のように教えてくださる。多謝。
1.寒波襲来でホーレンソウの伸びが悪く、ビニールを被せてる
ここ数日、日本海側は大雪、当地も急に寒くなり、ホーレンソウの伸びが悪く、あわてて被せている。
以前は、被せたビニールを紐で押さえて、紐が切れていた。
しかし、今、支柱(化学製品の細い棒)で押さえるので心配ない。
この時季、風は強い方が良い。
風で雲が飛び去り、日照時間は長くなり、紫外線も強くなり、ホーレンソウには良い。
また、風が吹くと畑の土も乾く。
土が乾き気味にならないとホーレンソウの育ちは悪い。
2.寒波襲来の今、値が良い。しかし、作り過ぎると値崩れ
急に寒くなり、ホーレンソウは品物が少なく、近年になく値が良い。
ふだんは、農家止めようかと思うくらい安い。
ホーレンソウは、今高値だからたくさん播く。
しかし、伸びて出荷する頃安くなる。
育ち過ぎても良し悪し。
大量に出荷されると価格が安くなる。
安いときは1袋5円、平均70円。
出荷経費は30%。段ボール、JA手数料、市場手数料など。
3.露地野菜が主、ビニールハウスでは作らない
筆者は団塊世代。
Nさんは10歳ほど若い。
農業専従で、働き手は母親と2人。
アルバイトを雇うほど儲からない。
露地野菜を3haの畑に作る。
夏、空ける畑もある。
「細かいもの」、すなわち手のかかる野菜なので面積をこなせない。
メインは秋や冬の野菜。
ホーレンソウ、ニンジン、ショウガ、ネギ、ダイコン、ブロッコリーなど。
野菜は天候不順などで作付けの10%は売り物にならない。
今は昔の人にくらべて手間をかけない。
こんな寒いとき、外に出て来てやるのは大変なので、今の若い人は施設、ビニールハウスをやる。
しかし、イチゴ農家は大変。
単価は下がるのに、油、ビニール代など何でも上がっている。
そのため、規模拡大し、パートさんを雇っている。
4.販売先は複数、JAだけではない、スーパーにも出す
ホーレンソウなど野菜の出荷はJAとスーパー。
数ヵ所のスーパーに、地場産コーナーを設けてもらい、自分で持って行く。
はける量は少ないが、安定している。
日銭を稼げる。
値が高いときはJAに出すのが多い。
スーパー以外の直売所には出荷してない。
スーパーはライバルの成功を見て、農家に声をかけて来る。
逆に、スーパーへ売り込みに行く農家もある。
5.TPP以前の問題、農家がいなくなる
あと3年で、ここらは変わる。
農業する人がいなくなる。
今、70歳代後半の人が農業やっている。
今のように動けなくなる。
若い人は勤めに出て、農業をやらない。
Nさんがビニールを被せている畑は親戚から借りている。
親戚が作らないので。
この周りの畑は、所有者が作っているのでなく、Nさんのように借りて作っている方が多い。
TPP以前の問題。
TPPに参加しても、しなくても、その前に農家がいなくなる。
執筆・撮影者:有馬洋太郎 撮影年月日:2012年12月09日 撮影地:栃木県下野市