さよなら三角 また来て四角...日本編☆第二章☆

オーストラリアから10年ぶりに帰国。特別支援教育に携わりながら
市民農園・家庭菜園に励んでいます。

Purple Bra Day - Donate Now

2013年06月21日 14時15分21秒 | Web log
こちらは冬ですが、日本の冬とは大違い。

庭にはみかんがたわわに実っていますし、あちらこちらのお家の庭に
植えられたバラが咲いています。

ちょっと肌寒いですが、気持ちいい季節です。

今日も、午前中走りに行きましたがとても気持ちよかったです。

さて、今日は Purple Bra Day です。乳がん患者の支援および乳がんに関する
啓蒙等を行っている Breast Cancer Care WA の 活動支援募金をアピールする日
のようです。

乳がん撲滅運動では、ピンクリボンをシンボルにしたものが国際的に有名ですが、
Purple Bra Day はどうやら西オーストラリア独自の活動のようです。

で、買い物帰りに車を走らせていたら

道路設置された電光掲示板に 「 Purple Bra Day.... Donate Now 」という
メッセージが出ていました。

Donate Now って、今は車に乗ってるし、募金なんてできないと思うんだけれどねぇ..

と思って更に車を走らせて、交差点の信号待ちにさしかかったところで
数人の道路工事作業員が作業服の上に、紫のブラジャーとパンティを身に着けて、
うろうろしているのを発見しました。手には募金用のバケツを持って。

もう、これを見たら募金するしかありません。

真っ黒に日焼けして、無精ひげを生やしたいい年のおじさんたちが、紫のブラと
パンティとは...

..... あぁ、いいなぁ

こういうユーモアのセンスいいですね。

恥じることなく(いやぁ、内心恥ずかしく思っているかもしれませんが)、道路に立って
募金を集めている姿、最高ですね。

車の中で思わず笑ってしまいました。

そしてすかさず募金....とてもいい気分になりました。

ちょっとひとやすみ 心底欲する

2013年06月20日 14時58分28秒 | Web log
ちょっと硬い話が続いたのでひとやすみ。

学校も昨日で終わって(私は子供の調子が悪くて行けなくて、代わりに
今日実習ノートを届けに行ってきましたけど)ゆっくりしています。

天気もいいので、今日も走ってきました。スッキリ

さて、実習中は36km離れた病院にいくために、毎日5時前に起きて
子供たちの弁当やら、自分の弁当やらを準備して6時には家をでていた
ので、非常にストレスフルな毎日を過ごしておりました。

慣れない生活は、体にきますね。

それでも最初の週は早めに帰らせてもらったり、続く週は友人が子供を
学校に迎えに行ってくれたり、私が帰ってくるまで面倒みてくれたので
ずいぶん助かりましたが、それでも早く帰らなくちゃ~と高速をぶっ飛ばす
のも結構気を使いますからね。

木曜日くらいになると口の中が荒れてきて、土日に休んで回復しても
また翌週末が近づいてくると口の中が荒れてくるというのを3週間
繰り返してました。

体は正直です。

そして今回は妙なものを食べたくなりました。嫌いじゃないけれど、
それほど欲しない食べもの。

ペパーミントティー

タスカンアンティパスト(アーティチョーク、オリーブの実(黒&グリーン)
ドライトマト、パプリカのオリーブオイル漬け)

梅干

キムチ

インドの辛いカレー

これらが食べたくなりましたね。

ジャスミンティーは時々飲みたくなって買いますが、ペパーミントティーは
嫌いじゃないけどあまり飲みません。が、今回は無性に飲みたくなって、毎日
病院でも家でも飲みまくっていました。

タスカン アンティパストだって、キロ当たり$26で決して安くないのに
一キロ以上は買いましたね。

キムチやカレーは好きですが、それほど頻繁には食べません。
でも、時々無性に食べたくなります。今回は、実習のときに食べたくなりました。

あと、体を動かしたくなりましたね。忙しくて週末くらいしか時間はありません
でしたが、患者さんと接していると結構頭を使う割に、あまり体を動かすチャンスが
ないので、毎日ストレスが溜まっていたんだと思います。

病棟は基本的に3度の食事と午前中と午後のティータイム、タバコと新聞(雑誌)と本、
テレビくらいしかない状況です。午前中と午後に作業療法士のアクティビティが
組まれていますが、面白いものは面白いですが、結構退屈だったりして。
夜はテレビ以外何もない。

そんな中で早くここを出たいという人は数人くらいで、それ以外はみなさん
まったりと過ごしていらっしゃいました。

わたしなら一日でだめだなと思いましたけれど。

特に閉鎖病棟担当の一週間は散歩にも行けず、ジムにも行けず、
Cさんのために、散歩にいけるかどうか聞きましたが、規則なのでダメ
ということで無理でした。

精神と肉体のバランスをとるって大事なのにと思いましたが、
でも、あまりに選択肢を与えすぎて、病棟が快適になりすぎて患者さんに
長居されても困るという理由が大きいかもしれませんね。

できるだけ刺激を減らすことで「外に出たい、何かしたい」という患者さんの
モチベーションをあげさせるのも治療の一環かと思いました。

森田療法って確かそんな感じだったような.....

実習中に思ったこと ナンセンスか否か 

2013年06月19日 09時23分10秒 | Web log
Cさんの幻想についてですが、誰かが幻想を口にした場合
精神医学的にそれは統合失調症の症状とみなされます。

Cさんの幻想は精霊に関するものですが、果たしてそれを
ナンセンスなもの、統合失調症によるものと簡単にラベリングして
いいものか... と思うのです。

そうかもしれない、そうじゃないかもしれない...科学的に証明
できませんから、結果的にそれは誰にも分からないということに
なるんじゃないか?と私は思うんですけれど。

ま、それはさておき

彼女はアボリジニー(オーストラリア原住民)の精霊を「殺した」と言い、
その罪悪感に苦しめられているわけですが、でもよくよく聞いてみると彼女に
その精霊は見えないらしく、ただ存在を感じるだけなんだそうです。

で、わたしは単純に「見えないのに、殺せるの?」「殺したというなら、
どのように殺したの?」という疑問が湧き上がってきますが、遭えて
追求しませんでした。

彼女が話したがらないものを、無理やり聞き出すことは返って逆効果になるのでは
ないかと危惧したことと、実習の終了が近かったので深入りすることは返って
無責任のような気がしたからです。

統合失調症に見られる症状(霊の存在を感じる幻想、あるいは救世主妄想、あるいは
過去世を語るなど)について、他の看護師さんたちと話したときに

それはまったくナンセンスと切り捨てる看護師Sさんがいました。

(日本は文化的にそういった話に対して非常に寛容かなぁと思います。
Sさんが夏に日本にきて稲川淳二さんのテレビを見たら「この人統合失調症」
と判断するんでしょうかね?それを喜んで聞いている日本人も変!ということに
なるのか...... 興味深いです。)

彼は、カルビン派のクリスチャンなんですが、他の看護師さんに「あなた神を
信じているっていうけど、神の存在を科学的に証明できないのに信じている
ってことは、あなたの論理(霊、過去世、救世主妄想を否定する)に
反するんじゃないの?」ってつっこまれていましたけれど。

わたしは彼女の語る(精霊を殺した)ことが嘘か、本当か、宗教的にあるいは
科学的に正しいか、正しくないかについて論じることに興味がありませんし、
私の立場から言えば、どうでもいいことだと思っています。

ただその妄想が彼女の精神構造の中でどんな意味をもつのか?あるいは
どのように関係しているのか?ということに興味があります。

どうして私がそういう風に考えるのかというと、遡って20数年前....
大学で文化人類学を専攻したのですが、そのときによく言われた構造主義
というのがそんな考え方だったなぁと思います。簡単に言えば、現象をそれだけで
理解するのでなく、正否の判定を避け、文化的コンテキスト(文脈)の中で
読み取るということを学んだのですが、精神看護の中でそれが生かされるなんて
思ってもいませんでしたよ。

(続く)

実習中に思ったこと 罪悪感

2013年06月18日 11時32分57秒 | Web log
薬の副作用などでほとんどの患者さんは朝起きるのが遅かったりします。
ある朝、Cさんは朝一番に起きてきました。
ナースステーションの窓越しに「タバコを吸いたい」というサインを
出したので、彼女のロッカーから取り出して、ライターと一緒に
手渡しました。閉鎖病棟ですので、火をつけたことを確認したら、
看護師がライターだけ返してもらわないといけません。

で、火をつけているほんの少しの間、たわいもない会話をしました。

夜、良く眠れましたか?とか
今朝はいつになく寒いですねぇとか

するとCさんが、突然
「 人を殺すのはよくないことだ.... 」と言います。

で、わたしが投げかけた会話とあまりにもかけ離れている言葉だったので
「 えっ? 」と聞き返すと「 なんでもない 」と言い、
私から顔を背けました。

精霊を殺したという幻想に関係しているのでしょうが、彼女はその話題に
触れたくないし、つっこまれたくないというのはすぐ分かりました。

彼女が意識して口にだしているのか、それとも無意識に言葉が出てくるのか
それは分かりません。

でも、私の前で幻想に関することを言い始めました。

しばらくして、彼女が何かをしたいというので、アクティビティールームで
クラフトとか、ゲームとかをしているときにも突然

「 ごめんなさい 」と私に言いました。

「 Cさんは、私に何も悪いことをしていないんだから、あやまる必要は
まったくないよ 」と言うと

「 私は悪いことをした 」と言います。

「 そうかもしれないけれど、私はCさんがしたことを知らないし、
少なくとも私には何もしていないから、謝らなくてもいいよ。あなたは
とても礼儀ただしく、薬もきちんと飲むし、模範的な患者さんだって
みんな言ってますよ 」と言うと

Cさん「 私がしたことはみんな知ってる。」

私「 でも、私は知りませんよ 」

Cさん「 わたしは 特別な人を殺したんだ 」

私「 特別な人って ? 」

Cさん「 崇高な精霊 」

Cさん「 ...... もう、いい 」

やっと、Cさんの口から彼女の幻想について聞くことができました。

その後、その話には触れず、彼女の今までについて聞いてみることに
しました。

仕事、以前住んでいたところ、家族構成、趣味などなど

彼女は父子家庭で育っています。両親が離婚したあと
母親との連絡は途絶え、今母親がどこに住んでいるのかなど
まったく分からないと言っていました。

接しているとCさんは、とても思いやりが深く、やさしい女性であることが
分かります。

そしてご主人が彼女と娘さんの元を去ってから、ずっと女でひとつで知的障害の
ある娘さんを育ててきました。

娘さんのことをとても大切に思っています。けど、何らかの事情で娘さんを育て
きれなくなり、施設に入居させることを決断しました。

彼女はできればずっと娘さんと一緒に過ごしたかっただろうと思いますが、
「 彼女にとって、そのほうが(施設にいるほうが)幸せだから 」と
つぶやいたことが忘れられません。

どうも彼女の精神に異常を来たした背景として、彼女が辺鄙なところに娘さんと
引っ越したこと、娘さんの面倒が見切れなくなって施設に入居したことなどなどが
関係しているような気がしました。そして彼女が口にする「罪悪感」は
Cさんの母親が彼女を見捨てて出て行ってしまったこと、そしてCさん自身が
理由は違うにせよ、施設に入れてしまった=見捨ててしまったと彼女が思っている
ことに関係しているのではないか?と、私は勝手に思いました。

(続く)

実習中に思ったこと Cさんの話

2013年06月17日 12時52分24秒 | Web log
金曜日に実習が終わって普通の生活に戻りました。
土日は色んな思いが頭の中を駆け巡って、ちょっとしんどかったですが
やっと通常に戻った気がします。

ジョギングも昨日から再開。今日もひとっ走りしてきました。

さて、書き忘れましたCさんのお話。

Cさんは私よりちょっと年上ですが、わたしと同様40代。
シングルマザーで、知的障害のある25歳の娘さんをずっと一人で
育ててきました。

今回の入院は2度目。

重度のうつと、統合失調症の疑いがあります。
彼女は友人に連れられて入院してきました。
ブッシュの中をさまよっているところを発見されたのですが
アボリジナルの精霊を殺してしまったという幻想を持っています。
そして、アボリジナルの精霊を殺してしまったことへの罪悪感のため
自分は処罰されなければいけないと信じています。

初めて接したときは、どうして自分がここにいるのか分からない。
早くここを出たい、と言いました。私は引継ぎのときに、彼女の
もっている幻想について既に聞いていたので、病識がないんだなぁ
と思っていました。

が、接していく中でふとしたときに漏らす言動に精霊を殺したことに
結びつくような発言をしたので、何か心に秘めているの違いないと
思いました。

それ以外は、ごく普通でまったく問題ない患者さんで、UNOが
好きです。

一緒に遊んだりする中で、色々質問したのですが、やっぱり重度の
うつ病だけあって、ゲーム以外に関しては無気力だなぁという印象を
受けました。でも、ゲームをしたいと思うだけいいかなぁと思います。

色々質問しても分からないとか、昔は○○だったとか、くらいで
あまり話したがりません。ので、私もあれこれ質問するのも気がひける
なぁと思ったので、一緒にしているゲームやアクティビティに関する話題
だけ振ることにしました。

続く








実習中に思ったこと 一体何が本当なのか?

2013年06月16日 08時15分29秒 | Web log
木曜日に19歳の双極性障害を持つ女性(19歳)が入院してきました。

2度目の入院。どうも薬の服用に問題があり、悪化して再入院となりました。

救急に運ばれたときに、ベンゾジアゼピンという薬が処方されました。
ベンゾジアゼピンの鎮静効果は高いのですが、中毒性が高いこと、ときに
奇異反応が発生するなど危険な副作用があり、通常第一選択にはならない
のですが、効果が高いことから緊急時に選択肢になる場合があるらしいです。

が、オーストラリアの他州ではほとんど使われていないという事実も
あって、他州から来た看護師はベンゾジアゼピンの使用に疑問を呈する
発言をしていました。

さて、彼女が閉鎖病棟に連れてこられたときの状態は、かわいそうなくらい
ひどかったです。詳細は避けますが...攻撃性も強く、わたしが他の
患者さんとアクティビティールームで作業していたところに進入してきた
ときに、一緒にいた患者さんを守らなければいけないけれど、自分の身も
危ないかもと感じました。

他の看護師さんがすぐ介入してくれたので、結果、無事でしたが。

鎮静効果の強いベンゾジアゼピンを使って数時間経っているのに、何故
こんな状態になったのでしょう?

理由として考えられるのはベンゾジアゼピンのパラドクシカル(逆説)エフェクト(効果)

鎮静を目的に処方したのだけれど、結果、極度の躁症状なることが稀に発生するのです。
彼女の攻撃性、多動性はパラドキシカルエフェクトに起因するものだった可能性があります
が、良く分かりません。

実習最終日の金曜日、彼女はやや落ち着いていましたが....

ま、薬の副作用ならしかたがないのかなぁとも思いますが。

私が不思議に思ったのは、病気の症状で攻撃的になっている彼女に
本気で怒っているスタッフの態度でした。

私は内心、病気の症状あるいは薬の副作用によるものなんだから、本人がコントロール
できることじゃないんじゃないの?と思ったからです。

そして看護師いわく
「G先生(精神科医)が診察にきたときは、模範の患者だったわ」

G先生はそれはそれは穏やかで、声がとても小さく、ぜんぜん威張ってなくて
精神医療に情熱を持ち、常に患者さんの回復と健康のために頑張っている先生です。

で、私は思いました。

Jさんは、G先生の彼女に対する優しい態度を感じたんじゃないのかな?
だから落ち着いたんじゃないのかな?

もし、彼女の態度がベンゾの副作用だったとしたら、誰が接しても
攻撃的な態度は同じだったはず。でも、彼女は人によって態度を変えたのです。

薬の副作用時にどれだけ通常の意識が残っているのかは定かではありませんが
100%常軌を逸するというよりも数パーセントは正常の意識が残っている
のかなぁとも思います。

そこで思い出したのが太陽にほえろ....

殺すだの、死ぬだのとわめいている犯人に、山さんとか長さんとかのベテラン刑事が
やさしく語りかけて、犯人を説得するシーン。

犯人、うつむいて...凶器を落とし、号泣。

ま、それはさておき。

お互い興奮すると、エスカレートする可能性が高いと私は思うんですね。
だから、コントロール可能な方が落ち着いた態度をとらないとだめなんじゃないの?
と思ったしだいですが......

私は素人なのでよく分かりません。

文化による考え方の違いもあるかなぁと。

帰って、マイクに聞いたら「 たとえ理由がどうあれ、患者の態度は、通常の人の
態度と同様に判断される。正常な人がやって反社会的と判断される行為なら、
精神病患者であっても同様に「反社会的」とみなされてしかるべき 」
と言ってました。

どこまでも対等なんですね。
どこか、子供の躾に対する考え方と似ています。

子供だからといって、甘やかしてはいけない。子供でも、だめなものはだめ。
小さいころから、礼儀とか、言葉使い、公共の場での態度、親、大人を尊重する
などが徹底的にしつけられます。

「 まだ子供なんだから... 」ということにはなりません。

いやぁ、患者だからといってスタッフに暴力をふってはいけないのは、分かります。
もちろんスタッフも人間だから、叩かれたり、不遜な態度を取られたらカッときちゃうのも
分かるし....

精神に関する病は本当に複雑です。

疾患からくるものなのか
薬の作用からくるものなのか
育った環境からくるものなのか
心理的なものなのか

何が本当なのか、なかなか分かりにくいなと思いました。
そして、問題がどこにあるのかを見極めるには、偏見はできるだけ排除して
長い時間をかけて判断しないといけないんじゃないかなぁと思いました。

あっ、そういえば別の看護師さんが「ミラーリング」という言葉を使っていた
ことを思い出しました。

心理学の中で「 相手は、こちらがしていることを模倣する 」ということを
あらわした用語のようです。

何が本当のかは分かりませんが、一考する必要はあるかと思いました。

それにしても、あれこれ考えたら頭が痛くなってきました。

考えるのやめよっと。

実習 14日目 笑った

2013年06月15日 15時37分24秒 | Web log
Kさんネタ、最後です。

時間は逆のぼりますが、Kさんが私に色々と心の内を話してくれた後、
彼女の態度が激変しました。

相変わらず彼女からスタッフや他の患者さんに話しかけたりすることは
ありませんが、私が声をかけるとある程度「普通に」話してくれるように
なりました。

以前の彼女とは大違いです。

もう一人の患者CさんがUNOというカードゲームをしたいから、
一緒に遊んで欲しいというので、ためしにKさんを誘ってみました。

そしたら、参加したいと。

内心びっくりしましたが、とてもうれしかったです。
そして3人でゲーム開始。

ゲームの間、初めて彼女が笑うのを見ました。

そして、私の戦略を先読みしているということも分かりました。

わたしの手持ちのカードが1枚になり、あがるかどうかの瀬戸際で、他のプレーヤーが
予想するだろう色のカードを持っていなかったんですね.... 私の戦略ミスです。

そのとき「 最後の2枚でブルーを出したから、最後の一枚はブルーのカードかと思った! 」
と言ったことを通して、私の戦略を予想していたことが分かりました。
そこでKさんに知的な問題はないことを確認しました。

後で、病院に勤務しているサイコロジストにKさんのことを話す機会があって、
いろいろ説明したら、「 ある程度の知的障害があるんじゃないかと思っていたけれど、
そうじゃなかったんですね 」と言って、びっくりしていました。

UNOをしたいと言ったCさんが通常ルールしか知らなかったので、
わたしが学生のころ遊んだ別バージョンを紹介しようと思っていると
彼女が同様のルールを提示してくれたのも驚きでした。

他の看護師さんたちは煩雑な業務に追われて忙しく、わたしは実習の身でこれといった
責任もなく比較的自由に動き回れる身分にあったので、積極的にいろんな活動に顔をだして、
患者さんと一緒の時間を過ごすことを最優先しました。

そしてその時間に患者さんを一生懸命観察し、患者さんの心の問題に近づいていくための
材料をかき集めていました。

そんなことを繰り返し、信頼を築き上げて、そして患者さんがふとした瞬間に
あらゆる思いから解き放たれ、笑うことができた。

ささいな日常の一こまだったけれど、感情の「命」が蘇った瞬間をみることが
できたことに心から感動しました。

尊い経験をさせていただきました。

実習 13日目 だから言ったのに

2013年06月14日 18時31分52秒 | Web log
Kさんネタ、更に続きます。

新しい急性期の患者さんが入院したため、Kさんは開放病棟へ
移動しなければならなくなりました。

「 行きたくない。まだ開放病棟へ行ける状態じゃない 」と言っていた
Kさん。

どうしたもんかと思って、看護師さんにKさんの思いを伝えましたが
ベット数が限られているからどうしようもできないとのこと。

永遠に閉鎖病棟にいることは不可能なわけで、ある時点でやっぱり
彼女の心の準備ができていないとしても、退院する方向に進んで
いかなければならない。

普通の人なら理性である程度納得しますが、彼女の場合はそうはいきません。

「 わたしは絶対に戻ってくる 」

と言い張ります。

自傷の危険性がある彼女。閉鎖病棟に戻ってくるためには、何でもするん
じゃないかと思いました。

彼女と話しているとその端々に彼女の意思の強さを感じるのです。

わたし以外の人にはほとんど反応しない彼女。言われた通りに薬も飲むし
模範患者のように見えますし、実際そうです。

きっと誰も彼女が何かをしでかすなんて、思ってもいないんじゃないかと
思いました。

閉鎖病棟のチームリーダーに 「 彼女は絶対に戻ってくると心に決めて
います。何かしでかす可能性が高いと私は思います。」と伝えました。
僕のほうから開放病棟の看護師に伝えるよと言ってくれました。
実際、メッセージを残したと言っていましたが.....

翌日、病棟に行ったら....

Kさんが開放病棟に移動した日の夜、やっぱり事件があったそうです。

食事のときに出されたナイフを持ち出し自分の部屋に隠して、自傷行為に
及んだそうで。

だから、言ったのに.....

実習 12日目 希望

2013年06月13日 17時02分13秒 | Web log
Kさんネタ、続きます。

閉鎖病棟のダイニングエリアで、一生懸命何かを書いていたKさん。
何しているのかなぁと思って、覗き込んだら、塗り絵をしていました。
「 色使いが素敵ですねぇ 」と褒めたら、持っていた彼女個人のスケッチ
ブックを見せてくれました。

どれも見事な作品です。

すると、前日のアートセッションで彼女が描いた顔と似た絵がありました。

「 この顔は誰ですか? あなた自身?それとも他の誰か? 」と私が
たずねると、小さい声で「 自分の顔じゃない 」と言います。

「 昨日のアートセッションであなたが描いた絵を覚えているけど、
あれは、誰の顔なの? Kさん自身? それとも他の誰か? 」

すると 「 あの顔は 私の顔 」と答えてくれました。

今がチャンスかもしれないと思って「 じゃ、あの大きな涙に何か特別な
意味があるの? 」 と聞くと 「 Sadness ... 悲しみ 」と言いました。

「 答えたくなかったら答えなくてもいいけれど、その悲しみは何についての
悲しみなの? 自分自身? それとも家族? それとも友達? それ以外の何か? 」
と聞くと 「 妊娠中に赤ちゃんを流産した 」と言いポロポロと涙を流し
それから川が堰を切って流れだすように、彼女が今まで体験してきた色んなことを
話てくれました。

.... 凄まじい過去でした

話を聞くだけでくたくたになったくらいですから、本人の受け続けた傷はいかほど
だったかと思います。

不信、失望、痛み、怒り

でも、彼女は絵で気持ちを表現したように、誰かに分かって欲しいと心の底で
思っていたのではないかと思います。

同時に、服用していた抗うつ剤が効き始めたのとタイミングが合ったのかとも思います。

不可能かも...と思っていましたが、彼女が心の内を表現できた。
奥にしまいこんだ感情を意識の上に汲み上げて、第三者にそれを託すことができた。

私はそこに希望を見出しました。

遠い道のりかもしれませんが、はるか遠くに出口を見出した気がしました。

わたしはその出口まで一緒に行ってあげることはできないけれど...

長い道のりの中で、彼女が自信を取り戻すことができたら、出口へと一人で
しっかりと歩いていくことができるかもしれない。

もし仮に自信を取り戻すことに時間がかかったとしても、彼女が人を信じ続けることが
できる限り、必ず誰かが彼女を少しづつ、少しづつ出口へと導いていってくれると、
わたしは信じたいです。

実習 10日目 隔絶された感情

2013年06月10日 17時26分21秒 | Web log
実習も残り一週間となりました。

6時には家を出ないと7時に始まる引継ぎに間に合わないので
4時半~5時には起きてお弁当をつくり、準備をして
出勤します。

6時間ちょいの睡眠時間は体にきますね~

先週の後半は、口内炎が出かかってひりひり痛かったのですが
週末たくさん寝たので、痛みも引けて快適です。

閉鎖病棟にKさんというかなり重度のうつ病の人がいます。
(アートセラピーで力強い絵を描いた患者さんです)

今朝病棟に行きましたが、どうもあまり状態がよくない感じ。

自傷の思いに取り憑かれていると言います。

先週の金曜日もそうでしたが.... 目が違うんですね。
目はしっかり開いていて、うつむいているわけでもないのですが
とにかく視線が合いません。こんな表現は大変失礼かと思いますが
死んだ魚の目という表現がしっくりきます。
目は開いている、けど視線が合わない。意思の動きのようなものが
まったく感じられないのです。

声は小さく、笑うことも、泣くことも、怒ることもない....

何を感じますか?何を考えていますか?
表現することはできますか?

と聞いても、答えることができません。

ただ、色んな思いが頭の中をぐるぐる回っているということ
そして、自傷の思いがあるということ。

それだけしか答えることができません。

感情や思考、思いが言語活動、表現活動からまったく切り離されています。

意識のレベルから葬られた思いや感情は、無意識の世界なのか
どうなのか良く分かりませんが、奥深くへと押し込められてしまい。
重く固い石で蓋をされ表面に出てくることができない、そんな感じです。

その重い蓋を取り除くことができるのは、一体誰なのでしょう。

その重い蓋を取り除きたいと果たして本人は思うのでしょうか?
奥深くへと押し込めたら感情や思いを表面化し、認識したいのでしょうか?

何よりも闇へと葬ったものを掘り出すことが彼女にとって果たして
いいことなのでしょうか?

向き合う以外に回復の方法はないと、第三者は簡単に思うかもしれない。
わたしも何とか彼女が思いや感情を表現してくれれば...と願いつつも
それは不可能かもしれない...とふと思うのです。

向き合うには辛すぎる。

だからこそ闇に葬ったのではないか....

彼女は今日もアートセラピーに参加しました。

大きな紙に大きく目を描き、そしてその目からは
一粒の大きな涙がこぼれていました。

それ以外、彼女は一体何を伝えることができるのでしょう。

そして彼女は.... 休むことなく自分の親指の皮をもう片方の手の爪で
ひっかき続けます。

痛くても、止めることができないのです。

署名

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