クリニックからの帰り、踏切を渡る道は少し大回りになるので、近道のために鉄道の操車場地下を抜ける長い歩行者用のトンネルを歩いていた。自転車がやっとすれ違うことができるほどの狭いトンネルの中はうす暗く、所々に古びた蛍光灯が灯り、足元がやっと見えるほどだ。停車場は広く、その下を通るトンネルを抜けるまでは歩いて数分はかかる。
その日は時間がとても長く感じられた。時間の感じ方は時と場合によって変わるとよく言われるがその通りだなと感じながら少し足を速めた。
しかし、歩けど歩けど出口はちっとも近づいてこない。まるで歩く速度が急に遅くなってしまったようである。少し汗が出てくる。焦りを感じながら出口へと急ぐ。
このトンネルこんなに長かっただろうか。異次元にでも彷徨っているような感じがした。
ふと後ろを振り返ると遥か彼方にトンネルの入り口が見える。まだ先は長い。
どうしても早く目的地へ着く必要があった。
トンネルの出口から、目的地まではすぐなはずだった。
だが、焦れば焦るほど時間は長くなるようだ。汗は額を伝わり、地面に点々と跡をつけていく。ハンカチを取り出す時間も惜しんで黙々と歩を重ねた。
目的地であるコンビニのトイレへと急ぐのであった。