三島にある『三島スカイウォーク』
全長400メートルのこの吊り橋は日本一の長さを誇る。高さは最大70メートル。道幅は1.6メートルで、車椅子がすれ違うことができるように設計されているそうである。
往復20分から30分くらいかかる。係員の話では揺れは震度1.5だそうである。1でも2でもなく1.5である。風が吹けば、もう少し揺れるかもしれない。
足元は細かな鉄格子になっており、下界が見えるところが適度に恐怖感がある。
富士山が一望でき、これほどの絶景を楽しめる吊り橋は他にないのではないかと思う。
長さも日本一なら景色も日本一でる。
橋の近くには土産店とホットドッグなどの軽食は売っているが、食事ができないところが今一つだと感じた。
彼女が亡くなった。
1週間前までは比較的元気だったのに、進行の早いがんだった。
とても悲しかった。彼女の死に顔はまるで生きているようだ。心から生き返ってほしいと願った。
彼女をあたかも生きているようにバーチャル化することはできないだろうか。ふとそんな考えが頭をよぎった。
最初はその考えを否定したが、出来ないことはでないと考え始めた。幸い職業柄ITの知識はある。
まずは彼女のビジュアルをデータ化することだ。
交際中に撮影した写真は何枚もあるが、足りない体の部分を撮影する必要がある。
通夜のあと、葬祭場の霊安室で寝ている彼女の遺体の周りに誰もいなくなるのを見計らい、こっそりと体の写真を撮影する。あとで3D化する必要があるために角度を変えて何枚も撮影した。
彼女の葬儀が終わってからすぐに、彼は彼女をバーチャル化して蘇らせる作業に入った。
撮影した2Dデータを合成して3D化していく。
パソコンの中で、まるで生きているような本物そっくりの彼女のCGが出来上がった。様々な表情を彼女はする。静止画だけではなく、動くことも可能だ。
彼女のCGは彼のスマホと同期するように設定した。スマホの動画に彼女が映し出され、背景と合成された彼女の姿を見ることができる。
自撮り画像と合成して、彼女と一緒に映っている写真を撮ることも可能だ。
観光地でスマホをかざせば、合成された彼女が振り返って手を振ってくれる映像を見ることもできた。
週末は、バーチャルな彼女を連れて出かけるのが楽しみになった。
映像だけでなく、彼女との会話をしたいと思うようになった。
彼が考えたのは、メールでのやり取りである。
彼女の生前の様々な情報、OLであることや、趣味や食べ物や洋服の好みなど、膨大なデータを入力し、それを元にメールを発信したり、彼のメールに対し、きちんと返信してくれるソフトを作り上げた。
SNSのアカウントも作成した。彼女の元同僚がアップした画像に彼女の画像を合成して書き込みをしたり、彼とのデートの写真をアップしたり、知らない人が見れば、彼女は生きてそこに存在すると思う内容である。
実際に体に触れることはできなかったが、それ以外は彼女が生きているときと同じ状況をバーチャル上で作りだすことに成功したのだ。
しばらくは3D彼女との楽しい生活が続いた。バーチャルな彼女はリアルの時のようなケンカもないしわがままも言わない。考えてみれば理想的だった。
それからしばらくして、彼に新しい彼女ができた。
『ごめん、今日仕事で遅くなる』3D彼女にメールすると『仕事頑張ってね』優しいメールが返信されてくる。
だが、新しいリアル彼女は違う。3D彼女とのやりとりを浮気していると疑いだしたのだ。
ある日、彼のスマホをこっそり見てしまう。
リアルなやりとりと寸分違わぬ亡くなった彼女とのやりとりを見れば、現実の女と浮気していると判断しても仕方がない。
嫉妬に狂った彼女と言い争いになり、面倒だなと感じるようになった。
考えてみればこの彼女も3Dにしてしまえば嫉妬もしないし、面倒なことに悩まされないで済む。
彼はリアル彼女を殺害して、同じように3D化してしまう。
今、彼は二人のバーチャルな3D彼女と楽しく暮らしている。
もう、あと何人か3D彼女を増やしてもいいかとな考えている。
電波はみんなのものであり、テレビ局やラジオ局、携帯電話会社のものではない。
自分のものではない以上、電波を使用するには相応の対価を払うべきであり、払われた対価は国民に還元されるべきである。
多くの国では周波数はオークションにて販売されている。
テレビ局や携帯電話会社などの電波通信事業者は一定の年数ごとにオークションで周波数を落札しなければならず、落札できなかった事業者は周波数を使用できないという事態になる。
電波という公共のものを使用するためには公平でなければならない。
例えば米国ではオークションによる累計収益は8兆円を超えており、それが国庫に入っている。
オークション方式を設計したのはスタンフォード大学のポール・ミルグロム教授らで、彼らの専門知識に基づく設計があったために高額な収益を得ることができたのである。
そして、日本は先進国では事実上、唯一の周波数オークションを採用していない国である。OECD参加国ではほぼすべてがオークション制を採用している。
自民党が長く周波数オークションの導入に反対しており、総務省は一部の電波通信事業者に周波数を格安で与えている。
マスコミは既得権に対し、ときに厳しい意見を投げかけるが、実は最も既得権を得ているのはテレビ局などの電波通信事業者である。新聞もこのことは批判しない。テレビ局やラジオ局は新聞社の系列会社である場合がほとんどだからである。
2009年に衆院選で勝利した民主党はマニュフェストで周波数のオークション導入を主張していた。だが2012年同党の野田政権が倒れた時、そのための電波法改正案が同時に廃案となった。そして2013年に安倍政権は周波数オークションを実施しない方針を発表した。
日本では既得権化した周波数免許を民主化する目途は全く立っていないのだ。