ヨシキ君は小学校の三年生、お父さんと二人暮しです。
一年前までは妹とお母さんの四人暮しでした。
お母さんはお父さんと喧嘩をして、妹のサキを連れて家を出て行ってしまいました。
この家は二人で住むには広すぎます。
お父さんの帰りはいつも遅く、ヨシキ君はいつも一人ぼっちでした。
夜はいつもお父さんが朝用意してくれている食事をレンジで温めて一人で食べます。
寂しいので、こっそり妹に電車に乗って会いに行ったことがあります。
小さなアパートでサキちゃんも一人で留守番をしていました。お母さんはお父さんよりは帰りは早いようですが、一年生になったばかりのサキちゃんは毎日泣きながら帰りを待っているのでした。
どうしてお父さんとお母さんが別れてしまったのかはヨシキ君にはわかりません。仲直りしてほしいねと二人は話しました。
クリスマスイブの夜、お父さんが仕事から帰って来ると、ヨシキ君は一通の手紙をお父さんに手渡しました。
「さっさ届いたの」
お父さんは封筒を空けて手紙を読み始めます。
「お母さんからだ」
「何て書いてあるの?」
「明日、サキを連れて家に来るって」
その年のクリスマスは休日です。
その夜のヨシキ君は幸せでした。
たとえ一日でも、また四人で楽しい時間を過ごせます。
次の日、お父さんは手紙に書いてある通り、四人分のご馳走を作って待っていました。
夕方、ケーキをもってサキちゃんとお母さんが家に帰って来ました。
四人は久しぶりに楽しい夜を過ごしました。遅くなったのでお母さんとサキちゃんはその日は泊まることになりました。
次の朝、ヨシキ君とサキちゃんが目を覚ますと、お父さんとお母さんがニコニコ笑いながら二人に話しました。
「きのう、夜遅くまでお母さんと話してたんだけど、また四人で暮らすことにしたんだ」
二人とも声をあげて喜びました。
「でも、不思議なことがあるの」
お母さんがいいました。
「お母さんはお父さんから家においでって手紙をもらったのだけどお父さんは出したおぼえがないって」
「お父さんも母さんからの手紙でご馳走を作って待ってたんだけど、母さんも出したおぼえがないって」
ヨシキ君は答えました。
「あの手紙はサンタさんがお父さんに渡すんだよって僕にくれたんだよ」
するとサキちゃんも言いました。
「わたしもサンタさんから手紙をもらった」
サンタさんは二人にとって一番大切なものをプレゼントしてくれたのでした。