肉食中心の糖質制限ダイエットは死亡率を最大で約3割も押し上げる。
数々のベストセラーがある慶應大学病院の近藤誠医師がそう警鐘を鳴らす記事が2月11日発行のサンデー毎日に掲載された。
米国ハーバード大学などの研究チームが行った男女17万人を対象に行った大規模調査の結果を見ると、特に肉食中心のロカボ(ローカーボハイドレート=低炭水化物)をハードに実施した男性グループの全死亡率が、最もソフトに実施した男性グループに比べ最大で31パーセントも高くなっている。同様に癌による死亡率は最大で53パーセント、心血管疾患による死亡率も最大で36パーセントも高くなっているのだ。赤肉やハム、ソーセージなどの摂取量が増えると大腸癌やすい臓癌が増えるとの数多くの調査結果が出ている。
この大規模調査からは男女とも野菜中心のグループの寿命が延びているという傾向が見て取れる。具体的な栄養構成は、男性1日総摂取カロリーが2034キロ。このうち糖質の占める割合が40パーセント、動物性たんぱく質が13パーセント、植物性たんぱく質が6パーセント、動物性脂肪17パーセント、植物性脂肪が21パーセントだ。糖質をある程度摂取した上で野菜中心のバランスのよい食事が理想だと言える。ロカボを推奨する一部の学者が口にする「肉はいくら食べてもいい」というのは乱暴な意見と言える。
また、近藤医師はBMI値(肥満指数)にも言及している。
BMI値は 体重(キロ)÷身長(メートル)÷身長(メートル) で求めることができる。
日本肥満学会は男女とも25以上を肥満とした上で18.5以上25未満(中央値22)を適正体重としているが、これは科学的根拠のない全くのデタラメ。BMI値と死亡率の関係については、日本で行われた大規模住民調査が決定的だ。この調査は男性が16万人、女性19万人を対象に、平均12年間にわたって生死を追跡した結果、より正しい長寿ゾーンが判明した。
本当の長寿ゾーンは男性が25以上27未満(中央値26)、女性が23以上25未満(中央値24)で、日本肥満学会が推奨する適正体重は痩せすぎであってむしろ死亡率は上昇してしまう。
つまり、最も長生きできるのは女性なら『少し太め』、男性なら『もう少し太め』の人たちで、最長寿ゾーンより痩せていても太っていても、それだけ死にやすくなっていくことがわかったのである。この調査結果によれば危険なのは『太りすぎ』よりも『痩せすぎ』で、BMIが14以上19未満の劇痩せの日本人男性の死亡率はBMIが最長寿ゾーンにある人たちの2倍近くにも達してしまう。
世の医者たちは体重やBMIに加え、血圧や悪玉コレステロール、中性脂肪や血糖値などを次々と持ち出しては、各関連学会が定めるデタラメの基準値に合わせるよう執拗に迫る。しかし人体には自然の調節機能が備わっており、BMIが適正であれば、生活習慣病の原因とされるその他の数値もその人に合った最適の値に調整されていくメカニズムになっているのだ。例えば血圧だと、治療の必要がある高血圧(頭痛や吐き気、意識障害などの症状がある)を除き、BMIが適正水準にある人の本態性高血圧(老化に伴う動脈硬化によって血管が狭くなると体の隅々に血液を送るために血圧が高くなり、基本的に治療の必要はない)は年齢相応に自然調節された結果だ。これを薬で下げてしまうと、脳の血流が滞って認知症や脳卒中になったり、薬の副作用で寿命を縮めたりする。
生活習慣病はかつて成人病と呼ばれていた。根本原因が老化にあるためだが、名称変更で医薬業界に巨大利権が誕生したと言われている。
すべての生活習慣病に共通して言えることは、食べ過ぎを戒め、体を動かしてBMIを正常化し、それを維持することなのだ。