松竹映画『砂の器』が公開されてから今年で50年。
この作品を最初に観たのは中学生の時、テレビで放送されていた。
社会人になりDVDプレーヤーを初めて買ったとき、最初に買ったソフトでもある。
それから、繰り返し観ている。僕が観た邦画の中では間違いなくベスト3に入る。
原作者の松本清張をして「原作を超えた」と言わしめた名作中の名作である。
蒲田の操車場で起きた殺人事件をめぐる捜査から始まるミステリー。
島根県奥出雲町の地名「亀嵩」の出雲弁なまり「カメダ」という言葉が事件の鍵となる。
ハンセン病が犯行の動機の重要な鍵を握る社会派のドラマでもある。
映画のラスト数十分は圧巻である。
事件の経緯を説明する丹波達郎演じる刑事。
コンサート会場で加藤剛演じる音楽家が演奏する美しい曲。
その音楽家がまだ幼い時に経験したハンセン病の父親との悲しくて過酷な長い旅。
この3つの場面が同時進行する。
加藤剛が演奏する劇中曲は芥川也寸志作曲である。
父子が歩く美しい日本海の風景はいっそう残酷さを際立たせる。
原作では数行のこのシーンを脚本家の橋本忍は数十分の長い名シーンへと膨らませた。
野村芳太郎の曲と場面の巧みな演出も凄い。
何度観ても目頭が熱くなるシーンである。