あなたに、お願いがあります。
年老いた私が、ある日、
昨日までの私と違っていたとしても、
驚かないで、
そのままの私を受け入れてほしいのです。
私が食事をしているとき、
服や床に食べ物をこぼしても、
出かけるときに
左右バラバラの靴を履いても、
あなたが、歩けるようになったころ、
私が色々なことを教え、
いつも見守っていたことを
思い出してほしいのです。
あなたと話すとき、
同じ話を、何度も、何度も繰り返しても、
どうか、うんざりせずに
うなずいてほしいのです。
幼いあなたを寝かせるために
その小さな瞳が閉じるまで、私が同じ絵本を
何度も、何度も、繰り返して読んであげたように。
物語の終末は、
いつも、いつも、同じでしたが、
あなたの笑顔を見るたびに、
私の心は、
いつも、いつも、幸せで満たされました。
たった今話していたことを忘れてしまっても、
辛抱強く、思い出すのを見守ってほしいのです。
たぶん、そのとき、私にいちばん大切なことは。
話の内容ではなく、
ただあなたがそばにいてくれること
かもしれません。
楽しいひと時に、
私がうっかり下着を濡らしてしまっても、
お風呂にはいるのを
嫌がっても、
そんなときには
どうか思い出してください。
幼稚園に入ったころ、
嫌がるのあなたを追い回し、
何度も着替えさせたことを。
なだめすかして
お風呂に入れた、
あの懐かしい日々のことを。
やがて、旅立ちの日を迎える私のために、
どうか祈ってください。
ずいぶん歯も弱ってきました。
いずれ、食事を飲み込むことさえ、
できなくなるかもしれません。
足も衰えてきました。
やがて、立ち上がることすら、
できなくなるかもしれません。
そんなときには、
かよわい足でよちよち歩きをはじめた
あなたに私がしたように、
やさしく手をのばして
私を支えてほしいのです。
よろめく私に、
あなたの手を握らせてください。
あなたを抱きしめる力がないのを
知ることは、
とても、辛いことです。
でも、そんな私を受け入れ、
支えてくれる心を、
どうか持ってほしいのです。
きっとそれだけで、
たったそれだけで、
私には勇気があふれてくるのです。
あなたの人生の始まりに
私が付き添ったように、
私の人生の終わりに、
少しだけ、
付き合ってほしいのです。
あなたが生まれてくれたことで、
私が知った多くの喜びと、
あなたへの変わらぬ愛を持って、
笑顔で答えたいのです。
私の愛する子どもたちへ。
~おかのきんや【編訳】「神様が書いた4つの詩」~
=『さんばんめの詩』=
★画像は「神様が書いた4つの詩」本★
☆星加海(絵)
☆おかのきんや(編訳)
☆きこ書房
1.さいしょの詩・・・「神様の配慮」
2.にばんめの詩・・・「時間銀行」
3.さんばんめの詩・・・「手紙~愛する子どもたちへ」
4.さいごの詩・・・「虹の橋」