クリンの広場

たまっこくりんのおもいのたけ

蝉の鳴く小説・1(『蟬しぐれ』藤沢周平)

2021-09-23 | 本と雑誌

「蝉のなく小説特集」

と きいて、

10人中・3人は 思い浮かべるのが、

 ふじさわしゅうへい(藤沢周平)の

『蟬しぐれ』では ないでしょうか

 組しき(織)のしがらみや 忍たい(耐)を描き

サラリーマンから「絶大なる支持」を えてきた

時代小説家の、

代表作にして

めずらしく をテーマに 持ってきた、

江戸時代小説

 

それが、『蝉しぐれ』・・

 もちろん おなじみ、うなさかはん(海坂藩)が

そのぶたい(舞台)です。

 

<あらすじ>

 主人公、牧文四郎(まきぶんしろう)は、

藩の抗争で死んだ父の

汚名をそそぐ日を 待ちながら、

剣の修行に励む

若き藩士

 

隣家の娘・ふく

淡い想いを よせあっていました。

 が そのふくに、「殿のお手」が 

ついてしまい、、

(文四郎ショック

 ・・文四郎は、思うままにならない・己が境涯を

辛く思いながらも

牧家復興」のために、

精進し続けます

 ・・苦しくとも、真っ当に生きようとする

文四郎のすがたに、

読者は 心打たれ

価値ある生き方を 見いだす。

 

それは、

「藤沢周平の十八番にして、王道楽土なる物語

ですが、、

 

この物語の「心臓部」は、そういった大筋ではなく

セミがなく、

2つの名シーンにあります。

 

 一つ目は、、切腹した父のいたい(遺体)をはこぶ

10代の文四郎のもとに、

少女ふくが現れ、

いっしょに「梶棒」を 押してくれるシーン

(泣けます

 もう一つは・・

40代となった文四郎とふくが

今生の別れをする、

夏の宿での シーンです。


「お福さま」となった・ふくは、

との(殿)亡き後、

かみを下ろして 尼になる直前に、

文四郎に「会いたい」と 手紙を書きます。

 

自家の再こう(興)を果たし

身分と妻子をえて

安定期に入っていた・文四郎ですが、

ふくにあいます。

 20年ぶりの かいこう(邂逅)を果たした、ふくと文四郎

 

二人が

せみしぐれの中で どんな言葉をかわし、

かわさなかった時を どんな風にすごしたか、、

 

淡々と書かれていますが、

クライマックスです

 

「藩主の側室」だった女性が、

主の死後とはいえ

自分に情をもつ男性と 密会する・・

 

それが

どれほどのかくご(覚悟)をもっての行動であったか

 

ふくと同年配以上の

女性になら

わかるでしょうが・・

 

 けっきょく、再会のこの日が

今生の別れに

なってしまった二人が、

のち、

せみしぐれを きくたびに

どんな想いを めぐらせたか・・?

 

一生分のよいん(余韻)

を もって、

物語は まくを 閉じます・・

 

 

 

【おすすめ度:まあまあ。 

こんだけ・盛り上げておいて、かの名作を「まあまあ」なんてよく言える・・ってお叱りはごもっともですが

小説よりも、NHKドラマが良かったんですよねめずらしく原作を超えていた、内野聖陽×水野真紀のドラマは、ドキドキの逢瀬が映像化されていました

 市川染五郎×木村佳乃の映画版もありますが、「こっちはちょっと・エロさが足りない」って、うちのチットが言ってました~👩

 

次回は、葉室麟の『蜩ノ記』を、レビューします

 

 

 

 

コメント (24)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする