閑猫堂

hima-neko-dou ときどきのお知らせと猫の話など

珍客

2016-11-04 23:21:25 | 日々

夜の7時すこし前のこと。
階下で「ばたん、がたん」と音がする。
ウラシマがひとりで遊んでいるんだろうと、気にとめずにいたが、
ふとその音にかすかな違和感をおぼえ、のぞいてみたところ、
猫ドアのすぐ内側に、どう見ても猫じゃないものがいた。

ベージュっぽい毛皮の、ふわふわした丸っこい奴。
お久しぶりのアナグマ君。

小さめのアナグマは猫と同じくらいなので、
猫が通れるところならだいたい通れる。
以前にも猫穴から入ってきたことは何度かあった。
ごみ箱が倒れて、お菓子の包み紙が散らばっている。
家に入ってくるアナグマは、まず例外なくごみ箱をあさり、
(視力は弱く、嗅覚が頼りで、食べ物の匂いにすごく敏感らしい)
次に猫のゴハン皿のところへ行くのがお決まりのコース。
しかし、ドアがついてもやっぱり入れるのか。
うーん、困ったね。

とりあえず退出願いましょうと、降りていったら、
ちょうど横からウラシマもしゃしゃり出てきた。
すると、アナグマ君、出口とは逆の方向にするすると…
(足が短くてほとんど見えないので、歩くというより
毛皮がうねって移動していくような不思議な歩き方)
「あー、そっちじゃなーいっ!」と言う間もあらばこそ、
奥へ奥へと進み、突き当りの押し入れに入ってしまった。

こんなふうに。

ここの押し入れは湿気がたまりやすいので、いつも開けっ放しで、
よく猫も入っている。
アナグマは猫と違って、上の段に飛び上ることはできない。
そのへんのものをがさがさと落としながら、奥へ奥へと。

 

(露出調整で明るく写っていますが、ほんとはもっと暗く、
しかも片手シャッターのため、ほとんどブレてしまっています)

「こらこら、出なさ~い」
虫捕り網の柄でつついても、びくともしない。
将棋に「穴熊」という戦法があって、「守備が堅牢」という意味だそうで、
もうほんとにその通り。堅牢。ぜんぜん動かない。
ときおり「くつくつくつくつ」と小声で言っている。
警戒音だろうか。抗議というか、言い訳のようにも聞こえる。

見た感じ、毛皮がきれいだし、顔つきもなんとなく幼いようで、
今年生まれてひとり立ちしたばかりの子かもしれない。
ふかふかの毛並みは、ちょっとさわってみたい!と思うけれど、
アナグマの歯は鋭く、人の指くらい噛みちぎるとか聞いたし、
可愛く見えても生粋の野生動物だから、うかつに手は出せない。
さて、どうしたもんでしょうか。
 

少しずつ手前の物をどけていったので、こっちの隅に移動した。

 

拡大。爪がすごいでしょう。

ウラシマは興味しんしんで、ずーっと周囲をうろうろしており、
(ひょっとして、きなちゃんと間違えてないかい?)
怖れる様子もなくどんどん近づいていくので、邪魔でもあるし、
万一噛まれたら大変なので、つかまえて台所に閉じこめた。 
 

また左に移動。そして、落ち着く。
あー、落ち着くな! そこで寝るんじゃない!

このあと、みかんなどを投げて釣ってみるも、反応せず、
20分くらいこのまんま。
どうやったらここから出せるだろうかと考えていたら、
ふいに目が覚めたように、するすると動き出した。
いまだ!と思って、開けてある窓のほうへ誘導しようとしたが、
また何を勘違いしたのか、途中で直角に左折して、階段のほうへ。
あっと驚く素早さで、するするすると2階へ上がっていくじゃないの。

なるほど、高いところには上がれないけど、階段は得意か。
なんて感心してる場合じゃなく、あわてて追っかけると、
アナグマは、躊躇することなく2階の部屋にまっすぐ入っていく。
わたしの椅子のあたりで寝ていたきなこと真鈴が、ビックリ仰天、
そろってねずみ花火みたいに飛び上り、入れ違いに逃げてきた。

そして、アナグマ君は、

わたしの机の下です。
おーい、その箱はパソコンのコンセントだから、かじらないでよね~。 

 

 

そしてまたここに居座って動かない。
どうしてもどうしても動かない。 
猫のように強引に首ねっこつかんでひっぱり出すわけにもいかず。

アナグマはタヌキと同じく、捕まったりしてパニックになると
仮死状態のようになる「タヌキ寝入り」の習性があるそうで、
なんかすごく眠そうに見えるのは、それではないと思うけど、
もしかして、この子、冬眠場所を探して迷いこんできたのかも。
いやいやいや、ここで冬眠されたら困るから!
きみのいるべき場所はここではな~い。
おうち帰んなさい。ね? おうち。ホーム。わかる?
E.T. オウチ、カエル! 

などと、こっちも座り込んで、いろいろ言ってみたりするのだけど、
あいにくMも留守だし、これ以上どうしたらいいかわからない。
そのうち、やっと思いついて、猫用のキャリーケースに
ドライフードを10粒ばかり放り込み、そろそろと近づけてみると、
1分もしないうちにそわそわしだし、顔を突っ込んで食べ始めた。

野生動物にしては、こういうところ、警戒心がなさすぎる。
きなちゃんのほうがよほど慎重だ。
アナグマ君、自分の置かれている状況がよくわかってないらしい。
カリカリと食べながら、だんだん奥に入っていく。
シッポだけ見えるくらいになったとき、 意を決して近づき、
えいっと戸を閉めた。
閉めたとたんに猛然と暴れるか…と身構えたら、そうでもなく、
どうやら捕まったこともよくわかってないようで、

はい、すんなり捕獲成功。

 

 


キャリーを持った感じが、さんちゃんやウラシマとあまり違わなかったから、
体重5~6キロというところ。やっぱり子どもかな。
そのまま庭まで持ってって、放してやる。
さほど泡食ってでもなく、のこのこと丸い背中を見せて、
川のほうへ石段を降りて行った。

片付け終わって、台所で鳴いていたウラシマを出してやり、
裏庭に自主避難していたきななを回収し、時計をみたら8時すぎでした。 
つかれた~。 

 

コメント
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