昨日誕生した安倍新内閣の顔ぶれを見て失望した。「老・壮・青」のバランス重視を力説していたが、完成図は旧派閥のバランス重視に終わった。よく言えば、堅実で安定した内閣ということなのだろう。
中央紙に「論功行賞」「仲良し」「学園祭」などと冠記した論評が並ぶように、総裁選を通じて汗を流した量が多い議員が入閣した。汗をかいた人が報われる「再チャレンジ制度」を導入したいとする首相の言葉を体現した形だ。丹羽・古賀派が「ゼロ⇒4人」、「谷垣派2⇒0」などは露骨だ。お仕着せの材料に、自分の好みの具も混ぜ合わせた「お好み焼き」内閣の印象だ。焼き上がりがどうなるか?
いっぽう、信条が共通する5人の補佐官(5レンジャー?)を配置し、官邸主導型政治の形を構築した。意気込みとして評価するが、彼らが組織横断的に調整力やリーダーシップを発揮出来るかどうか。官邸スタッフの公募制に関し、「公募に乗じてスパイを送り込んでも見分けられる筈が無い」と嘯く官僚がいるかぎり、今後の動きから目が離せない。
歓迎したいのは、麻生外相が留任したこと。ご本人は、お得意のジョークで「留年」と口を滑らせたが、日本外交が最重要局面にあるだけに、氏の卓越した識見と安定性に希望をつなぐ。
小泉前首相が発したメッセージは、結果的には嘘だらけだったが迫力があった。「自民党をぶっ壊す」「改革無くして成長無し」「聖域無き改革」「米百俵の精神」等々、何かをやりそうだとの期待感を持たせた。しかし、「美しい日本」などと、抽象的なコンセプトを掲げられては、攻撃しようがなく狡猾だ。所信表明演説で、その目指す具体的な姿と政策を明らかにして貰いたい。