「起きて見つ 寝て見つ 今日はどこまで総裁選」。盗作に合作を重ね、こうなった。
句の原型は、「起きて見つ 寝て見つ 蚊帳の広さかな」と、「とんぼつり 今日は どこまで行ったやら」だ。今でこそ、蚊帳をつる家も少なくなったが、子供の頃、蚊帳をくぐって出入りして遊んだのを思い出す。一緒に寝る人が居ないと、同じ蚊帳なのに広く感じるものだ。あとの句も、子供が生きていれば、今頃トンボ取りに出かけて、どこまで行ったかと回想している句にもとれる。
作者が詠んだシチュエーションは知らないが、今風に置き換えると、少子高齢化時代を象徴する句に思える。さらに、穿った見方だが、国民不在で総裁選を戦う候補者たちの行動が虚しくかさなる。キャラクターと正反対のハワイアン・センターで、首からレイをかけてもらいデレっと笑ったり、老齢化が進む地方へ足を運び媚びる姿が、何とも痛ましくも軽薄だ。
二つの句を詠んだのは、「朝顔や つるべとられて もらい水」で有名な、金沢の隣りにある白山市が産んだ俳人”加賀の千代女”。政治家には、平穏な日々の生活のなかで楽しみを求める大衆の心を思いやる感性を持ってもらいたい。